スプリング・フィーバー
Spring Fever
ストーリー
結末まで書いています。
監督の活動禁止中に秘密裏に撮影。夫を尾行させた男が、夫の恋人に惹かれる。
現代の南京。教師のリン・シュエは夫ワン・ピンの浮気を疑い、カメラを持つ青年ルオ・ハイタオに尾行を頼む。夫の相手は男だった。ジャン・チョンという青年だ。会いやすくしようと、ワンはジャンを同級生だと妻に紹介するが、妻はすでにすべてを知っている。リンはジャンの職場に乗り込んで騒ぎを起こし、職場で自分の生き方を隠してきたジャンは、ワンからの連絡に応じなくなる。
寂しさを紛らわすように、ジャンは夜ごとゲイバーで女装して歌う。彼を見張るために雇われたルオは、目を離せなくなる。ふたりは友人になり、やがて恋人になる。ルオには、偽ブランド服を作る隠れた縫製工場で働く恋人リー・ジンがいるのに。ジャンに去られ、結婚生活も続けられなくなったワンは、自ら命を絶つ。その知らせを運んできたのはリンだった。自分が雇われて彼らを暴いたことを打ち明けられないルオは、泣き崩れるジャンをただ抱きしめる。リーの工場には警察の手入れが入り、愛人でもあった工場長が捕まる。釈放された彼を迎えに行ったリーは、結局彼を置き去りにする。
仕事を辞めて旅に出るジャンに、ルオはリーを連れて同行する。ホテル、カラオケ、プール。三人の奇妙な旅のなかで、リーは男たちの口づけを目にするが、見なかったふりをする。やがて道端で車を止めたすきに、リーは姿を消す。パンクしたタイヤを替えながら、ジャンはルオと言い争い、彼を突き放す。ふたりとも泣いている。
南京に戻ったジャンは、通りでリンに襲われる。リンは逃げ、人々は立ち止まらずに通り過ぎていく。一命をとりとめたジャンは、襲われた跡を覆うように、首に花の刺青を入れる。いまは服を売る仕事をしていて、家に帰ると新しい誰かが待っている。映画の原題の由来となった郁達夫の小説『春風沈酔の夜』の一節が、始まり近くと終わりに朗読される。
主な出演
チン・ハオジャン・チョン役
職場では同性愛者であることを隠している青年。既婚の恋人と引き離され、自分を尾行していた男に惹かれていく。
ジャン・チョンの物語
ジャンは勤め先の旅行会社では同性愛者であることを隠し、既婚の恋人ワン・ピンとひそかに会っている。ワンの妻が職場に乗り込んで騒ぎを起こすと、ワンからの連絡に応じなくなり、夜ごとゲイバーで女装して歌う。そこで、自分を尾行するために雇われていたとは知らないまま、ルオと友人になり、やがて恋人になる。ワンが自ら命を絶ったと知らされると、楽屋でルオの腕に抱かれて泣きじゃくる。仕事を辞め、ルオとその恋人リーと旅に出るが、パンクしたタイヤを替えながらルオと激しく言い争い、彼を突き放す。ふたりとも泣いている。南京に戻ると、通りでリンに襲われる。一命をとりとめた彼は、襲われた跡を花の刺青で覆い、服を売って暮らし、家に帰ると新しい誰かが待っている。
チェン・スーチェンルオ・ハイタオ役
妻に頼まれてその夫を尾行するうちに、夫の恋人に惹かれていく青年。出会いの理由を最後まで明かさない。
ルオ・ハイタオの物語
ルオはリンに雇われてその夫を尾行し、ジャンと会うワンの姿をカメラでとらえる。仕事が終わってもゲイバーで女装して歌うジャンを見つめ続け、客ともめた彼を助けて親しくなる。恋人リー・ジンがいながら、やがてジャンと関係を持つが、ふたりの仲を暴いたのが自分だとは明かさない。ワンの死を知って泣き崩れるジャンを、ただ抱きしめることしかできない。旅に出るジャンにリーも連れて同行し、三人でホテルの部屋を分け合い、カラオケやプールで数日を過ごす。道端に車を止めたすきにリーが姿を消し、パンクしたタイヤの前でジャンに突き放されると、ルオは泣きながら去っていく。
タン・チュオリー・ジン役
ルオの恋人。偽ブランド服の工場で働き、ルオへの想いから男たちの旅に加わる。
リー・ジンの物語
リー・ジンは偽ブランド服を作る隠れた工場で働き、ルオの恋人でありながら工場長の愛人でもある。警察の手入れで工場長が捕まると、釈放された彼を迎えに行くが、食事の席に彼を置き去りにして出ていく。あなたが恋しいとルオに電話をかけ、ジャンとの旅に連れていってもらう。ホテルの部屋に戻ると、ふたりの男が口づけを交わしている。彼女はそっとその場を離れ、何も見なかったふりをする。カラオケでもプールでも、ルオにしがみついて離れない。やがて男たちが車を降りたすきに、彼女は姿を消す。ふたりがいくら探しても見つからない。
ウー・ウェイワン・ピン役
リンの夫。ジャンを諦めることも、結婚から抜け出すこともできない。
ジャン・ジャーチーリン・シュエ役
夫を尾行させる教師。夫が愛した男を許すことができない。
この作品が問いかけるもの
『スプリング・フィーバー』は、監督が映画製作を禁じられているあいだに作られた。『天安門、恋人たち』のあと、中国の映画当局はロウ・イエに5年間の製作禁止を命じた。彼はそれでも南京で撮影し、香港とフランスの合作として登録し、政府の許可のないままカンヌで上映した。メイ・フォンはそこで脚本賞を受けている。その条件は、画面に映るものにも表れている。これは、現代中国で隙間を生きる同性愛の男たちの映画だ。選べない既婚の男、職場で自分を隠す恋人、見張るはずの相手に恋をする雇われの男。カメラ自体も、探偵のように物陰からのぞき込む。映画が開いたまま残す問いは、単純で、重い。借りた部屋と旅の途中でしか生きられない愛は、歩道で男が襲われても誰も足を止めない、ありふれた街で生き延びられるのか。