お嬢さん
The Handmaiden
Moonlightの読みもの
Cinema『お嬢さん』と、欲望・演技・支配から自分の物語を奪い返すことこの一篇を読むストーリー
結末まで書いています。
日本統治下の朝鮮を舞台に三度語られる詐欺劇。客の前で姪に好色本を朗読させてきた叔父をはじめ、男たちを二人の女が出し抜く。
1939年、日本統治下の朝鮮。盗賊の一味に育てられた孤児スッキは、藤原伯爵を名乗る詐欺師に誘われる。日本人の令嬢・秀子を口説いて結婚し、精神病院に入れて財産を奪う。そのために、侍女として秀子に仕え、彼女を伯爵のほうへ導けというのだ。秀子は、日本の華族と結婚して上月という名を得た親日派の朝鮮人、叔父の上月と広大な屋敷に暮らしている。上月は稀覯本の収集家だ。スッキは、だますはずの令嬢に惹かれていく。ある夜、妻となる者の心得を教えるという口実で、ふたりは関係を持つ。それでもスッキは秀子を伯爵へと押しやる。上月の留守に、秀子と藤原はスッキを伴って駆け落ちする。だが精神病院の扉が閉ざされたのはスッキのほうだった。ふたりにだまされ、秀子の身代わりに入れられたのだ。
第二部は、同じ物語を秀子の側から語り直す。上月は秀子が五歳のころから彼女を虐待し、蔵書の競売に集まる男たちの前で好色本を朗読するよう仕込んできた。先にその役を務めていた叔母は庭で遺体となって見つかり、上月は、逃げようとしたから自分が殺したのだと秀子に告げる。伯爵は秀子を共犯者に引き入れ、身代わりの侍女を探していた。ところが秀子はスッキを愛してしまう。言い争いのあと、秀子は自ら命を絶とうとし、スッキに救われる。ふたりはすべてを打ち明け合い、一緒に書庫を壊していく。
第三部で、女たちは男たちへのだましを逆転させる。スッキの仲間が精神病院に火を放ち、彼女を連れ出す。初夜だと言って秀子を犯そうとした藤原は、秀子が薬を入れておいた酒で眠り込み、秀子は金を持って去る。ふたりは落ち合い、秀子は男装して逃げる。秀子の手紙で企みを知った上月は藤原を捕らえ、地下室で拷問しながら姪の初夜のことを聞き出そうとする。藤原は語るのを拒み、上月を道連れにして自ら命を絶つ。上海へ向かう船の上で、秀子とスッキは自由の身となって愛し合う。
主な出演
キム・ミニ和泉秀子役
叔父のもとで閉ざされて育った日本人の令嬢。幼いころから、叔父の客たちの前で好色本を朗読させられてきた。
和泉秀子の物語
秀子は五歳のころから叔父の上月に虐待され、蔵書の競売に集まる男たちの前で好色本を朗読するよう仕込まれてきた。先にその役を務めた叔母は庭で遺体となって見つかり、逃げようとしたから殺したのだと上月は言う。だから詐欺師の藤原が結婚という逃げ道を持ちかけると、彼女はひとつ条件をつけて乗る。自分の名で精神病院に閉じ込める侍女を探してくること。ところが、やって来た侍女スッキを愛してしまう。言い争いのあと自ら命を絶とうとしてスッキに救われ、ふたりはすべてを打ち明け合い、一緒に書庫を壊す。計画どおり藤原と結婚した秀子は、彼の酒に薬を入れて金を手に去り、男装してスッキと落ち合う。上海へ向かう船の上で、ふたりは自由になる。
キム・テリナム・スッキ/珠子役
盗賊の一味に育てられたスリ。秀子をだますために侍女として屋敷に入り、彼女に恋をする。
ナム・スッキ/珠子の物語
スッキは孤児で、捨てられた赤ん坊を育てては売る盗賊の一味に育てられた。分け前で自由になれると考え、藤原の誘いに乗る。侍女の珠子として屋敷に入り、夜は秀子のそばで眠り、伯爵に引き渡すはずの令嬢を愛してしまう。妻の心得を教えるという口実で彼女と関係を持ちながら、それでも伯爵との結婚を勧める。秀子が自ら命を絶とうとしたとき救い出し、上月の真実を聞いて、ふたりで書庫を叩き壊す。ふたりの計画どおり秀子の名で精神病院に入れられ、昔の仲間が火を放って彼女を連れ出す。男装した秀子と落ち合い、ふたりで上海へ向かう船に乗る。
ハ・ジョンウ藤原伯爵役
伯爵を名乗る詐欺師。財産目当てに秀子と結婚し、ふたりの女を切り捨てるつもりでいる。
藤原伯爵の物語
藤原は、日本の伯爵を名乗る詐欺師だ。令嬢の秀子と結婚して精神病院に入れ、財産を奪うつもりで、その手助けにスッキを侍女として屋敷に送り込む。だがひそかに秀子とも手を組み、一緒に逃げて遺産を分けようと持ちかけていた。絵の教師として屋敷に通い、秀子と結婚し、スッキを彼女の身代わりに病院へ送る。そのあとのホテルで、スッキは数日のうちに死ぬだろうと秀子に告げ、その夜、薬を入れられた酒で眠り込み、金を持ち去られる。秀子の手紙で企みを知った上月に捕らえられ、地下室で拷問を受けながら、姪の初夜のことを語れと迫られる。藤原は語るのを拒み、上月を道連れにして自ら命を絶つ。
チョ・ジヌン上月教明役
秀子の叔父で後見人。親日派の朝鮮人で好色本の収集家。幼いころから姪を虐待してきた。
ムン・ソリ秀子の叔母役
上月の妻。秀子より前に客たちの前で朗読をさせられ、庭で遺体となって見つかる。
この作品が問いかけるもの
『お嬢さん』は、サラ・ウォーターズのヴィクトリア朝小説『荊の城』を日本統治下の朝鮮に移した。女たちが自分を所有する男たちから逃れる物語は、そこで対日協力と階級の物語にもなる。日本人になりすます朝鮮人たちと、他人の欲望のうえに成り立つ屋敷。中心にある罪は、子どもを男たちの快楽のための朗読者に仕立てたことで、女たちの復讐は文字どおり書庫を叩き壊すことだ。ふたりの露骨な性愛の描写は評価を分けた。スレート誌のローラ・ミラーはポルノ的な決まり文句だと批判し、原作者ウォーターズは、男のポルノの伝統を女たちが奪い取って自分たちの欲望を探るという小説の描き方に忠実だと評した。英国アカデミー賞の非英語作品賞を受賞。どんでん返しの下にあるのは、互いの犠牲者になるはずだったふたりの恋の物語だ。