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Cinema 月明かりの映画館

別れる決心

Decision to Leave

2022映画韓国

465作品の星図のなかで見る

Moonlightの読みもの

Cinema『別れる決心』と、距離がつくる執着の美しさと危うさこの一篇を読む

ストーリー

結末まで書いています。

刑事が容疑者の未亡人に惹かれる。その年いちばん官能的な映画に、性描写はほとんどない。

釜山の刑事チャン・ヘジュンは几帳面で眠れない男だ。原子力発電所で働く妻チョンアンとは、週末にしか会わない。元出入国管理官キ・ドスが、よく登っていた岩山のふもとで遺体となって見つかり、疑いは年の離れた妻ソン・ソレに向かう。中国から来て介護の仕事をする彼女は、夫の死にほとんど悲しみを見せない。ヘジュンは取り調べを重ね、夜ごと彼女の部屋を張り込むうちに惹かれていく。ソレもそのまなざしに気づいている。アリバイは崩れず、夫の手紙の一通は遺書のようにも読め、ヘジュンは後輩の疑いを押しきって事件を自殺として閉じる。

ふたりは距離を縮める。だが、ソレの代わりに認知症の高齢女性の家を訪ねたヘジュンは、家から出られないはずのその女性がソレと同じ機種の電話を持ち、事件の日に138階分の階段を上った記録が残っていることに気づく。ソレは電話を入れ替え、裏窓から抜け出して山に登り、夫を突き落としていた。刑事としての誇りを壊されたと告げながら、ヘジュンは同じ口で、その電話を海に捨てろと言い残す。

十三か月後。不眠と抑うつを深めたヘジュンは、妻の暮らす港町イポへ移っている。魚市場で彼は、新しい夫イム・ホシンと連れ立つソレに出くわす。翌日、ホシンは自宅のプールで死体となって見つかる。母親の貯金をだまし取られた青年が殺害を自供するが、ソレがその母親の亡くなった日に病院を訪れていたことをヘジュンは知る。夫を疑ったチョンアンは家を出る。電話越しにソレは、ホシンが、彼女には愛の告白と聞こえたヘジュンの言葉の録音を見つけていたこと、そして彼が自分を愛さなくなった瞬間に自分は愛し始めたのだと告げる。浜辺でヘジュンが見つけたのは、空の車と、自らの証拠隠しの声が残る電話だった。その先の波打ち際で、ソレは満ちてくる潮に身をゆだね、自ら命を絶っていた。ヘジュンは彼女の名を叫びながら浜を探し続ける。彼女がどれほど近くにいるのかを知らないまま。

主な出演

  • タン・ウェイソン・ソレ役

    中国から移り住んだ介護士。ヘジュンが捜査する事件の妻であり、彼が目を離せなくなる相手。

    ソン・ソレの物語

    ソレは、末期の病に苦しむ母に請われてその死を助け、中国から韓国へ渡ってきた。介護の仕事をしながら年の離れた夫キ・ドスと暮らし、体には夫が持ち物に記していた頭文字の刺青がある。家から出られない介護先の女性と電話を入れ替えてアリバイをつくり、彼女は夫を山から突き落とす。取り調べには落ち着いて答え、夜通し見張る刑事のまなざしに気づきながら、彼を近づける。ヘジュンが罪をかばったとき、ソレはその言葉を愛の告白として受けとめ、捨てろと言われた電話に残しておく。十三か月後、再婚していた彼女は、あなたが私を愛さなくなった瞬間に私は愛し始めたと告げ、満ちてくる潮に身をゆだねて自ら命を絶つ。

  • パク・ヘイルチャン・ヘジュン役

    不眠を抱える釜山の刑事。仕事への誇りを、この事件に少しずつ崩されていく。

    チャン・ヘジュンの物語

    ヘジュンは仕事の緻密さを誇りにする釜山の刑事で、眠れない夜を重ね、妻チョンアンとは週末にしか会わない。張り込みを続けるうちにソレに惹かれ、後輩の疑いを押しきって夫の死を自殺として閉じる。電話の記録から彼女の犯行を知ると、刑事としての誇りを壊されたと告げながら、同じ口で証拠を海に捨てろと言い残す。十三か月後、抑うつと不眠を深めた彼は、妻の暮らすイポに移っている。新しい夫を連れたソレが現れ、その夫が殺される。今度は事件を最後まで追うが、その間に妻は家を出ていく。最後に彼は浜辺で彼女を探し続ける。彼女がどれほど近くにいるのかを知らないまま。

  • イ・ジョンヒョンチョンアン役

    ヘジュンの妻。イポの原子力発電所で働き、夫とは週末だけをともに過ごす。

  • コ・ギョンピョスワン役

    ヘジュンの後輩の刑事。自殺という結論を最後まで疑い続ける。

  • パク・ヨンウイム・ホシン役

    ソレの二番目の夫で投資家。ヘジュンと出会った翌日、自宅のプールで遺体となって見つかる。

この作品が問いかけるもの

『別れる決心』は、殺人事件の捜査が恋の物語に変わっていく映画であり、しかも最後まで捜査であることをやめない。『オールド・ボーイ』のパク・チャヌクはここで、暴力をほとんど画面の外に置き、危うさを「見ること」そのものに宿らせた。女を観察するのが仕事の男は、監視がどこで終わり欲望がどこから始まるのかを見分けられない。映画もその答えを教えない。この作品で彼は2022年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受けた。これはまた、愛がほとんど言葉の中だけで生きうることの研究でもある。母語ではない言葉で話す女と、そこに聞きたいものを聞いてしまう男。作中でもっとも重い愛の告白は、口にした本人がそれと知らずに発した言葉なのだ。