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Cinema 月明かりの映画館

愛の流刑地

Love Never to End

2007映画日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

情事の絶頂で恋人に頼まれて首を絞める作家。渡辺淳一の極北。

夏の夜、作家の村尾菊治は、情事の最中に恋人の入江冬香の首を絞めて死なせてしまう。本当に愛しているなら殺して、と彼女に懇願されてのことだった。殺すつもりはなかった。菊治は自ら警察に通報して逮捕される。女に頼まれたという供述は、刑事にも、はじめは担当検事の織部美雪にも、言い逃れとしか受け取られない。

取り調べと裁判のなかで、ふたりの関係がたどり直されていく。菊治は10年前に処女作が当たったきり書けなくなり、大学で教えたり評論を書いたりして暮らしてきた。取材で訪れた京都で、知人から自分の愛読者だという冬香を紹介される。富山出身で3人の子を持つ人妻だった。菊治は新幹線で京都へ通い、わずか2時間ほどの逢瀬を重ねる。夫の徹の転勤で冬香が東京へ越してくると、彼女は菊治の部屋に通うようになり、菊治はふたたび書き始める。冬香は夫に触れられることを拒むようになる。ある夜、冬香は首を絞めてと求め、手を離した菊治を「意気地なし」と責めた。

裁判で検察は殺人罪を、弁護側は嘱託殺人の適用を主張する。冬香が殺してと頼む声を録ったテープが証拠として採用される。菊治の存在すら知らなかった徹は、証言台で取り乱す。自らも上司と不倫をしている織部に追及された菊治は、死にたくなるほど人を愛したことがあるのか、と叫ぶ。冬香の母は、事件の前日、娘が子どもたちのために誕生日のようなごちそうを作り、念入りに化粧をして、後悔しないからと言い残して家を出たと証言する。事件のあと、菊治が冬香との恋を書いた小説は飛ぶように売れていた。

菊治は殺人罪で懲役8年を言い渡される。独房に、冬香の母から郵便が届く。菊治が冬香に贈ったサイン入りの本と、その間に挟まれた冬香の手紙。そこには、愛のない家庭の悲しみと、菊治との禁じられた愛の絶頂で命を絶ちたいという決意が綴られていた。菊治は、自分はやはり彼女に選ばれた殺人者だったのだとつぶやく。

主な出演

  • 豊川悦司村尾菊治役

    10年前の処女作以来書けずにいた作家。人妻の恋人に頼まれて彼女を殺め、殺人罪で裁かれる。

    村尾菊治の物語

    菊治は10年前に処女作が当たったきり書けなくなり、大学で教え、評論を書いて食いつないでいる。京都で紹介された冬香にひと目で惹かれ、ふたたび書き始めるが、ふたりの恋を描いたその小説に出版のあてはない。冬香の誕生日、私のために死んでくれるかと問われて首を横に振る。殺してと初めて求められた夜はためらい、意気地なしと責められる。花火の夜、彼は求められるままに冬香を死なせてしまう。自ら警察に通報し、法廷では、死にたくなるほど人を愛したことがあるのかと検事に叫ぶ。懲役8年の判決のあと、本に挟まれた冬香の手紙を読み、自分はやはり彼女に選ばれた殺人者だったとつぶやく。

  • 寺島しのぶ入江冬香役

    菊治の小説を愛読していた3人の子の母。恋の絶頂で、彼に自分を殺してほしいと願う。

    入江冬香の物語

    冬香は夫の徹と3人の子どもと京都で暮らしている。友人の紹介で、愛読してきた小説の作者・菊治と出会い、わずかな時間を縫って逢瀬を重ねる。彼が書いたふたりの恋の小説を、私たちの子どものようなものだと抱きしめる。夫の転勤で東京に移ると菊治の部屋に通うようになり、夫に触れられることを拒む。誕生日の夜、死んでもいいくらい幸せだと言い、殺してと懇願する。ためらう菊治を、意気地なしと責める。花火の日の前日、母の家で子どもたちにごちそうを作り、念入りに化粧をして、後悔しないからと言い残して出ていく。その夜、彼女は菊治の手で死ぬ。遺された手紙には、愛のない家庭の悲しみと、恋の絶頂で命を絶ちたいという決意が綴られていた。

  • 長谷川京子織部美雪役

    事件を担当する検事。自らも上司と不倫関係にあり、しだいに冬香の気持ちに共感していく。

  • 仲村トオル入江徹役

    冬香の夫。仕事に追われ、妻が死ぬまで菊治の存在を知らなかった。

この作品が問いかけるもの

『愛の流刑地』は、恋の絶頂で死にたいと願う女と、その願いに応えて彼女を殺した男こそが本当の恋人なのだと、観る者に受け入れさせようとする。渡辺淳一の原作は日本経済新聞の朝刊に1年以上連載され、映画はその幻想を法廷へ持ち込んだ。だが法廷に並ぶ事実は美化しにくい。行為の最中に首を絞められて死んだ女性、母を失った3人の子ども、相手の男の存在すら知らなかった夫。性行為の中で首を絞めることは遊びのように語られることもあるが、この物語はその一線がどれほど危ういかを見せる。作中の裁判も、死を望む言葉を殺されることへの同意とは認めない。映画そのものは恋人たちの側に寄り添う。残る問いは、ふたりのうちひとりが手紙の中でしか語れなくなったとき、どちらの語る愛が残るのか、ということだ。