ラブホテル
Love Hotel
ストーリー
結末まで書いています。
破産した男は、死の道連れにしようと呼んだコールガールに性的暴行を加えるが、死ねずに去る。二年後、彼は彼女を探し当てる。
小さな出版社をつぶした村木哲郎は、取り立てのやくざに妻の良子を犯され、死ぬことを決める。その前に、彼はラブホテルにホテトル嬢を呼ぶ。女を辱めたうえで、道連れにするつもりだった。やって来たのは名美という女だった。村木は彼女に手錠をかけ、ナイフで脅して体を奪う。だが夜が更けるうちに死ぬ気は薄れ、何もできないままホテルを出ていく。
二年後、村木はタクシー運転手になっている。取り立てが及ばないよう良子とは離婚したが、良子はいまも仕事帰りの彼を待っている。名美を探し続けていた村木は、ようやく見つけた彼女を、偶然を装って客として乗せる。夜の海へと頼んだ名美は、浜辺で自ら命を絶とうとする。引き止めた村木は、あの夜の男は自分だと明かし、あなたは天使だったと告げる。
名美は服飾店で働き、妻子ある上司の太田と抜け出せない不倫を続けていた。店に怒鳴り込んできた太田の妻・正代に罵られたあと、名美は村木に嘘をつく。太田というやくざに脅されている、写真や書類を取り返してほしい、と。村木はそれを信じて太田のマンションに押し入り、事情の飲み込めない正代から興信所の報告書を渡される。
あの夜の続きをしてほしい、と名美はせがむ。二年前と同じホテルで、ふたりは激しく体を重ねる。けれど心はかえって離れていく。村木は名美の嘘を知り、それを許す。名美が目を覚ますと、村木はいない。訪ねたアパートも空き部屋になっていた。肩を落として去る階段で、名美は良子とすれ違う。良子もまだ、村木が姿を消したことを知らない。ふたりの女は一瞬立ち止まって顔を見合わせ、それぞれの方向へ歩き出す。
主な出演
速水典子土屋名美役
村木が死ぬつもりだった夜に呼ばれたホテトル嬢。二年後は、妻子ある上司との不倫から抜け出せずにいる。
土屋名美の物語
名美は金で呼ばれた女としてラブホテルの一室に入り、待っていた村木に手錠をかけられ、ナイフで脅されて犯される。村木は死ぬ気をなくして部屋を出ていく。二年後、服飾店で働く名美は、妻子ある上司・太田との関係から抜け出せず、店に怒鳴り込んできた太田の妻に客の前で罵られる。夜の海へと頼んだタクシーの運転手は、浜辺で自ら命を絶とうとする彼女を引き止め、あの夜の男は自分だと明かす。名美は、太田というやくざに写真で脅されていると嘘をつき、あの夜の続きをしてほしいとせがむ。同じホテルに、あの夜と同じ服で、手錠を持って現れる。目を覚ますと村木はいない。空き部屋になった彼のアパートの階段で、名美は村木の妻とすれ違い、ふたりはそれぞれの方向へ歩き出す。
寺田農村木哲郎役
出版社をつぶし、妻をやくざに犯されて死を決めた男。二年後はタクシー運転手として名美を探している。
村木哲郎の物語
村木は死ぬつもりだった。道連れにする女を金で呼び、ラブホテルで名美に手錠をかけ、ナイフで脅して犯す。だが夜が更けるうちに死ぬ気は失せ、何もできないまま部屋を出る。二年後、タクシー運転手になった彼は、取り立てが及ばないよう妻の良子と離婚しているが、良子はいまも仕事帰りの彼を待っている。名美を探し続けていた村木は、偶然を装って彼女を客として乗せ、浜辺で自ら命を絶とうとする彼女を引き止めて、あなたは天使だったと告げる。やくざに脅されているという嘘を信じて太田のマンションに押し入り、同じホテルで名美と会い、その嘘を知っても許す。そして眠る名美を残して姿を消す。アパートも空になり、名美の前からも良子の前からも、彼はいなくなる。
志水季里子村木良子役
取り立てのやくざに犯された村木の妻。守るために離婚されたあとも、仕事帰りの彼を待ち続ける。
益富信孝太田清役
名美の上司で、妻子がありながら彼女と関係を続ける男。名美の嘘の中では、脅迫するやくざにされる。
中川梨絵太田正代役
太田の妻。名美の店に怒鳴り込み、のちにわけもわからぬまま興信所の報告書を村木に渡す。
この作品が問いかけるもの
『ラブホテル』は、10分に一度の濡れ場を決まりとしたにっかつロマンポルノの枠で撮られ、冒頭はその約束どおりに始まる。金で呼ばれた女、手錠、ナイフ。だが映画の大半は、その夜のあとに残された人間たちに向けられる。借金、返済の代わりのように妻に加えられた性暴力、妻を守れなかった男の恥。そして、かつて自分を道連れにしようとした男にしか、必要とされている証を見いだせない女。相米慎二はそれを、俳優に逃げ場を与えない長回しで撮る。脚本は、名美という女と村木という男の物語を書き継いできた石井隆。ヨコハマ映画祭では作品賞の第1位に選ばれた。最後に残るのは恋人たちではなく、階段ですれ違うふたりの女だ。男たちがしたことの跡をそれぞれに負いながら、一瞬だけ互いを見つめ合う。