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Cinema 月明かりの映画館

赤目四十八瀧心中未遂

Akame 48 Waterfalls

2003映画日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

尼崎でホルモンを串に刺す男が、同じアパートに住む刺青の女に惹かれる。彼女は、組ともめたヤクザの兄に売られていた。

ある冬の終わり、有名大学を中退し、東京を離れて大阪の釜ヶ崎に流れ着いていた気弱な青年・生島与一は、知人の紹介で尼崎へ移ってくる。ホルモンの串焼き屋を営む岸田勢子に雇われ、古いアパートの一室で、朝から晩まで臓物を串に刺す仕事を始める。アパートには一癖ある住人ばかりがいた。ヤクザの兄を持つ娼婦の綾、手彫りで和彫りを続ける老彫師の彫眉。春、服役を終えた綾の兄・真田から伝言を頼まれたことで、与一は初めて綾と言葉を交わす。勢子や彫眉からは、わけを聞かないほうがよさそうな頼まれごとが舞い込むようになり、与一はおびえながらもそれをこなしていく。綾は彼に言う。あなたはここでは生きていけない人よ、うちらとは違う。

8月、与一は綾に誘われて関係を持つ。やがて綾はアパートに戻らなくなり、勢子と真田から、見かけたら知らせてほしいと頼まれる。そこへ綾から手紙が届く。明日の夕方5時、天王寺駅のホームに来て。与一は誰にも告げずにアパートを出る。再会した綾は、組ともめた兄の真田に3000万円で売られたのだと打ち明ける。8月20日までに博多へ行くか、3000万円を払わなければ、兄が殺される。ふたりは数日のあいだ大阪の街をさまよい、食べ、ホテルで抱き合う。期限の日、綾は、この世の外へ私を連れて逃げて、と言い、ふたりは駅で目にしたポスターに惹かれて、三重の赤目四十八滝へ向かう。

大小の滝を過ぎて、ふたりは渓谷の奥へ奥へと進む。綾は、兄が小学生のころ赤目へ遠足に行くはずだったのに、行けなかった話をする。そしてある滝の前で立ち止まり、本当はあなたと心中するつもりだった、でも、ここまで付き合ってくれただけでもう十分、と告げる。大阪へ戻る電車が奈良のある駅に着いたとき、綾は、ごめんなさい、やっぱり博多に行く、と言ってひとりで降りてしまう。後を追おうとした与一の足がもつれるうちにドアが閉まり、彼は走り出した車内から、ホームに立つ綾を見送るしかなかった。

主な出演

  • 大西滝次郎生島与一役

    有名大学を中退し、世の中からこぼれ落ちた気弱な青年。尼崎の裏通りのアパートで臓物を串に刺して暮らす。

    生島与一の物語

    与一は東京での物書きの仕事を辞めて釜ヶ崎に流れ着いた。話し相手は古い辞書だけだ。尼崎のアパートで朝から晩まで臓物を串に刺し、勢子や彫眉の頼みごとを、おびえながらこなしていく。電話帳に挟まれた札を取ってくること、小包を預かること、箱を届けること。東京の編集者が訪ねてきて、まだ書けると説く。綾からは、あなたはここでは生きていけない人だと言われる。8月、綾に誘われて関係を持ち、彼女の手紙が届くと誰にも告げずにアパートを出て、天王寺駅で落ち合う。この世の外へ連れて逃げてと言われ、赤目の渓谷の奥へ一緒に分け入り、ここまで来てくれただけで十分だと告げられる。帰りの電車で綾はひとり降り、与一は動き出した車内から彼女を見送る。

  • 寺島しのぶ綾役

    同じアパートに住む在日朝鮮人の娼婦。背中に刺青を持ち、ヤクザの兄に売られる。

    綾の物語

    綾と与一は、同じアパートに住みながら何か月も挨拶すら交わさなかった。服役を終えた兄・真田の伝言をきっかけに言葉を交わすようになり、綾は、あなたはここでは生きていけない人、うちらとは違う、と告げる。8月、彼女は与一を誘う。やがて組ともめた真田に3000万円で売られ、8月20日までに博多へ行かなければ兄が殺されることになる。与一を天王寺駅に呼び出し、数日を大阪で一緒に過ごしたあと、この世の外へ私を連れて逃げて、と頼む。赤目の滝の前で、本当はあなたと心中するつもりだった、でもここまで付き合ってくれただけで十分、と告げる。帰りの電車が奈良の駅に着くと、ごめんなさい、やっぱり博多に行く、と言ってひとりで降りていく。

  • 大楠道代岸田勢子役

    ホルモン串焼き屋の女主人。かつて自らも娼婦だった過去を持ち、与一を雇い、住人たちに目を配る。

  • 内田裕也彫眉役

    2階の部屋で手彫りを続ける老彫師。わけを明かさぬまま、与一に小包の預かりや届け物を頼む。

この作品が問いかけるもの

『赤目四十八瀧心中未遂』は、日本の物語のもっとも古い型のひとつである心中を、滝の水際まで運び、そこから引き返させる。描かれるのは、まっとうな街が目を向けない世界だ。日雇い労働者の町、路地裏の臓物の仕事、彫師とヤクザ、そして組ともめた実の兄に売られる在日朝鮮人の女。与一は消えるためにそこへ来るが、出会う人々は、彼がここに属さない人間だとすぐに見抜く。車谷長吉の原作は直木賞を受け、映画は毎日映画コンクールで日本映画大賞に選ばれ、寺島しのぶは日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を受けた。心に残るのは、滝の前での綾の選択だ。彼女は愛のために死なない。売られていく暮らしへ戻っていき、いつでも立ち去れる男を、生きたまま電車の中に残していく。