ANORA アノーラ
Anora
Moonlightの読みもの
Cinema『Anora アノーラ』と、取引・幻想・親密さが混ざるときに見失うものこの一篇を読むストーリー
結末まで書いています。
ブルックリンのストリッパーがロシア財閥の息子と結婚する。労働をめぐるスクリューボール喜劇がパルムドールと作品賞を獲った。
ブルックリンのロシア語圏の街ブライトン・ビーチに暮らす23歳のアニー、本名アノーラ・ミケーヴァはストリップダンサーだ。ある晩、ロシア語のできる子を、という客の席に店長から回される。客はロシアの新興財閥の21歳の息子イヴァン、通称ヴァーニャ。留学の名目でアメリカにいるが、実際は親の豪邸で遊び、酒と薬とゲームに明け暮れている。彼は金を払ってアニーと寝るようになり、やがて1週間1万5千ドルで恋人になってほしいと持ちかける。その1週間の終わりのラスベガスで、父の会社で働くため帰国させられることになっていたヴァーニャは、アメリカ人と結婚すれば帰らずにすむと、思いつきで求婚する。ためらったすえに彼を信じたアニーは、チャペルで式を挙げる。店を辞め、大きな指輪と毛皮のコートを手に、彼女は豪邸へ移り住む。
知らせを受けたロシアの母ガリーナは、ヴァーニャの名付け親であるアルメニア系のトロスに、自分たちが着くまでに結婚を無効にしろと命じる。トロスの手下ガルニクとイゴールが屋敷に現れると、ヴァーニャは逃げ出す。アニーは暴れ、縛り上げられる。トロスは指輪を取り上げ、1万ドルで無効に応じろと迫る。愛し合っていると言い張りながらも、アニーは男たちと夜通しブルックリンを探し回り、かつての店で別のダンサーと酔いつぶれているヴァーニャを見つける。ネバダ州での結婚はニューヨークの裁判所では無効にできず、両親は一同をラスベガスへ連れ戻す。
ヴァーニャは冷たく、終わりだと告げる。離婚の財産分与を求めると言うアニーを、ガリーナは家族もろとも破滅させると脅し、アニーは署名する。いちばん無口なイゴールがヴァーニャに謝らせようとするが、ガリーナが許さない。アニーはガリーナに、あなたの息子はあなたへの当てつけで結婚しただけだと言い放つ。荷物を取りに戻るニューヨークへの道をイゴールが送る。アニーは、もみ合いのとき彼に襲われたと責める。翌朝、家の前に停めた車の中で、イゴールは約束の金を渡し、取り上げられた指輪を返す。アニーは彼と体を重ねはじめるが、キスをされそうになるとやめ、彼の腕の中で泣き崩れる。
主な出演
マイキー・マディソンアノーラ“アニー”・ミケーヴァ役
ブルックリンのストリップダンサー。客だったロシアの財閥の息子と結婚し、その結婚を守ろうと闘う。
アノーラ“アニー”・ミケーヴァの物語
アニーはストリップクラブで踊る23歳のダンサーだ。ヴァーニャは金を払って彼女と寝るようになり、1週間の恋人契約を持ちかけ、その終わりのラスベガスで結婚を申し込む。アニーはためらい、彼を信じて受け入れ、店を辞めて彼の親の豪邸に移る。トロスの手下が現れてヴァーニャが逃げ出すと、縛り上げられるまで抵抗し、愛し合っているのだと言い張りながら、夜通し夫を探し回る。両親が着くと彼に冷たく終わりを告げられ、ラスベガスで家族まで脅された彼女は署名し、あなたの息子はあなたへの当てつけで結婚したのだとガリーナに言い放つ。家まで送ってきたイゴールが指輪を返すと、アニーは彼と体を重ねはじめ、キスをされそうになるとやめて、彼の腕の中で泣き崩れる。
マーク・エイデルシュテインイヴァン“ヴァーニャ”・ザハロフ役
新興財閥の21歳の息子。親の金でニューヨークに暮らし、帰国を逃れるためにアニーと結婚する。
イヴァン“ヴァーニャ”・ザハロフの物語
ヴァーニャは留学の名目でニューヨークにいながら、親の豪邸で遊び、酒と薬とゲームに明け暮れている。ロシア語のできるダンサーを指名してアニーと出会い、金を払って寝るようになり、1週間の恋人契約を持ちかける。父の会社で働くため帰国しろと言われると、ラスベガスで、アメリカ人と結婚すれば帰らずにすむと思いつきのように求婚し、指輪と毛皮のコートを買い与える。トロスの手下が屋敷に来ると、アニーを置いて逃げ出し、かつて彼女が働いていた店で酔いつぶれているところを見つかる。両親が着くとあっさり従い、結婚は終わりだとアニーに冷たく告げ、母が彼女を脅すあいだも黙っている。謝るべきだというイゴールの言葉は母に退けられ、彼は家族とともにロシアへ帰っていく。
ユーリー・ボリソフイゴール役
ヴァーニャの見張り役として雇われた無口な男。男たちの中でただひとり、アニーを気づかう。
イゴールの物語
イゴールは、トロスが屋敷に差し向けたふたりの手下のひとり。ヴァーニャが逃げ、アニーが暴れると、ガルニクとふたりがかりで彼女を押さえこみ、夜通しの捜索にも付き添う。ラスベガスで彼女が署名したあと、ヴァーニャに謝らせようとするが、ガリーナが許さない。ニューヨークへ送った夜、もみ合いのときに襲われた、ふたりきりならレイプされていたとアニーに責められると、そんなつもりはなかったと答え、アノーラという本当の名前のほうがいいと言う。翌朝、約束の金を渡し、トロスが取り上げた指輪を返す。アニーが体を重ねはじめ、彼がキスをしようとすると、彼女は動きを止めて泣き崩れる。彼はその体を抱きとめる。
カレン・カラグリアントロス役
一家に雇われてヴァーニャの面倒を見るアルメニア系の名付け親。結婚を無効にする役目を負う。
ダリヤ・エカマソワガリーナ・ザハロフ役
ヴァーニャの母。どんな手を使っても結婚を終わらせるため、ロシアから乗りこんでくる。
この作品が問いかけるもの
この映画は、セックスワークを仕事として描く。アニーは腕がよく、客が何に金を払っているのかをよくわかっている。喜劇は、愛と結婚証明書がその経済から自分を連れ出してくれたと信じた1週間から生まれる。悲しみは、お金がそれをあっけなく覆すところから生まれる。豊かな一家は、結婚を取り消し、指輪を取り上げ、彼女の同意に値段をつけることができる。そして彼女を選んだ夫は、ひと言も彼女をかばわない。2024年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受け、アカデミー賞では作品賞、監督賞、マイキー・マディソンの主演女優賞を含む5部門を受賞した。両方を獲った映画は史上4本しかない。最後の場面は、喜劇が伏せていた問いを差し出す。やさしさの多くに値札がついていると知ってしまった女にとって、やさしくされるとはどういうことなのか。