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Cinema 月明かりの映画館

エミリー、パリへ行く

Emily in Paris

2020–2025ドラマ・シリーズアメリカ、フランス

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

観光としてのロマンス。何も賭けられていない“恋愛番組”の対照サンプルとして有用。

シカゴのマーケター、エミリー・クーパーは、妊娠した上司の代わりにパリの老舗マーケティング会社サヴォワールへ赴任し、アメリカ流のソーシャルメディア戦略を持ち込む。フランス語は話せない。上司シルヴィー・グラトーや同僚には煙たがられるが、名前を変えたインスタグラムが顧客を呼び込み始める。部屋を間違えて、階下に住む料理人ガブリエルと出会う。上海の実家と距離を置いて歌手をめざすミンディー・チェン、シャンパン醸造家の娘カミーユとも友だちになるが、カミーユはガブリエルの恋人だった。シーズン1は、パリ最後の夜だと思ったガブリエルとエミリーが結ばれ、シルヴィーの既婚の恋人アントワーヌが彼の店に出資するところで終わる。

シーズン2で、エミリーとカミーユはガブリエルを追わないと約束し、彼はカミーユのもとへ戻る。エミリーはフランス語教室で出会った英国人の銀行家アルフィーと付き合う。シルヴィーはサヴォワールを辞めて自分の会社を興し、シーズン3でエミリーは両社をかけもちしたすえ、シルヴィーとパリを選ぶ。ひそかにギリシャ人画家ソフィアとも関係を持つカミーユは、ガブリエルとの結婚を決めるが、誓いの言葉の途中で式を止め、彼が愛しているのはエミリーだと告げる。二番目でいることを拒んだアルフィーは去り、ガブリエルはカミーユの妊娠を打ち明ける。

シーズン4、父親になる準備を始めたガブリエルとエミリーは恋人になる。カミーユは妊娠していなかったと知りながら黙っている。クリスマスのスキー旅行でガブリエルはカミーユに付き添い、転んだエミリーを助けたのは、カシミヤの家業を持つイタリア人マルチェロだった。エミリーはガブリエルと別れ、カミーユはようやく真実を告げて去っていく。ガブリエルの店はミシュランの星を得て、シルヴィーはムラトーリ社のためにローマ支社を開き、エミリーを責任者にする。

シーズン5、エミリーはマルチェロの母に契約を切られ、彼ともぶつかり、ローマ支社は閉じられる。パリでは、ひそかにアルフィーと関係を持っていたミンディーが元恋人ニコラスのもとへ戻り、ガブリエルは店を辞めてヨットの料理人になる。追ってきたマルチェロは家業と決別して自分の名で服をつくり、ヴェネツィアのショーは高潮を乗り越え、母は訴えを取り下げて彼を後継者に指名する。ゴンドラで彼が指輪を取り出すと、エミリーは言葉を待たずに断る。指輪はニコラスがミンディーに贈るもので、彼女は求婚を受け入れる。けれどエミリーの答えは本心だった。パリを離れる気はなく、彼の居場所はイタリアにある。ふたりは別れる。夫の負債を背負わされたシルヴィーは新たな共同経営者を迎えて会社を守り、ガブリエルはギリシャで会おうという絵はがきをエミリーに送る。

主な出演

  • リリー・コリンズエミリー・クーパー役

    シカゴからパリのマーケティング会社に派遣された29歳。自信と発信力と恋愛が、パリの流儀と何度もぶつかる。

    エミリー・クーパーの物語

    エミリーは、帰ってこいという恋人より、パリの街を選ぶ。カミーユの恋人と知らずにガブリエルと口づけし、彼のパリ最後の夜と思われた晩に結ばれて、カミーユの信頼を失う。アルフィーと付き合い、シルヴィーが自分の会社を興すと、シカゴの会社を辞めて彼女のもとに残る。結婚式でカミーユが、ガブリエルが愛しているのはエミリーだと告げると、アルフィーは去っていく。ガブリエルと恋人になるが、スキー旅行でカミーユに付き添う彼に置いていかれ、別れを告げる。ローマ支社を任されてマルチェロと恋に落ちるが、契約を失い、ヴェネツィアでは、自分の暮らしはパリにあると、求婚を待たずに断る。物語は、ギリシャで会おうというガブリエルの絵はがきを彼女に届けて終わる。

  • フィリピーヌ・ルロワ=ボリューシルヴィー・グラトー役

    エミリーの手ごわい上司。サヴォワールを離れて自分の会社を興し、夫と既婚の恋人の間で生きている。

    シルヴィー・グラトーの物語

    シルヴィーはサヴォワールのパリの事務所を率い、送り込まれたアメリカ人を初めは相手にしない。既婚の恋人でもある顧客アントワーヌとエミリーが話しただけで、厄介な仕事を押しつける。それでも少しずつ、エミリーの発想を使いこなしていく。シカゴの親会社に帳簿を探られると、部下を連れて辞め、夫の資金で自分の会社を興して、エミリーを手放さない。かつての上司が部下の女性たちにしてきた性的嫌がらせを暴き、そのために夫の事業を危うくする。ローマでの恋より夫を選ぶが、夫がナイトクラブを二つつぶし、彼女の母の土地を担保に借金していたと知って、離婚を切り出す。新たな共同経営者を迎えて会社を守り、エミリーはもう自由だとガブリエルに知らせる。

  • アシュリー・パークミンディー・チェン役

    エミリーのパリで最初の友人。上海の富豪の実家と距離を置き、乳母をしながら歌手をめざす。

  • リュカ・ブラヴォーガブリエル役

    エミリーの一つ下の階に住む料理人。カミーユの恋人であり、エミリーが何度も心を寄せる相手。

    ガブリエルの物語

    ガブリエルは自分の店を持つことを夢見る料理人だ。パリ最後の夜だと思った晩にエミリーと結ばれるが、アントワーヌの出資でパリにとどまり、店を開く。カミーユのもとへ戻って求婚するものの、式の誓いの途中で、カミーユは彼が愛しているのはエミリーだと告げ、そのあとで妊娠を打ち明ける。エミリーと恋人になっても、スキー場ではカミーユに付き添うことを選び、別れを告げられる。カミーユは妊娠していなかったと明かし、店はミシュランの星を得る。ローマまでエミリーを追ってマルチェロとの口づけを目にするが、何か月もそれを口にしない。やがて店を辞めて顧客のヨットの料理人となり、洋上から、ギリシャで会おうという絵はがきをエミリーに送る。

  • カミーユ・ラザカミーユ役

    シャンパン醸造家の娘でギャラリー勤め。エミリーの友人であり、ガブリエルをめぐる恋敵でもある。

  • ルシアン・ラヴィスカウントアルフィー役

    フランス語教室でエミリーと出会ったロンドン出身の銀行家。彼女を愛しながら、二番目でいることを拒む。

この作品が問いかけるもの

『エミリー、パリへ行く』は「たどり着くこと」のファンタジーだ。言葉の通じない街にやって来た女性に、街のほうが合わせていく。作品は半ば意図せず、そこに問題を差し出す。フランスの批評家たちは、怠け者で浮気性で朝は遅刻するというパリジャン像に反発し、米誌アトランティックのミーガン・ガーバーは、変わるのはエミリーではなく周りの人々だと指摘した。恋の物語も同じ調子で、美しい部屋で魅力的な男たちのあいだを選んでいく。それでもこれは仕事の物語でもある。野心だけが揺るがない若い女性が、手放さない仕事と街に恋を合わせていく。2024年、フランス国立映画映像センターの調査では、観光客の38%がパリを訪れた理由にこの作品を挙げた。見た目の美しさの上に築かれた恋愛に、作品は問いを残す。この暮らしで本当に賭けられているものは何か。