マリッジ・ストーリー
Marriage Story
Moonlightの読みもの
Cinema『マリッジ・ストーリー』と、引き受けてしまう仕組みこの一篇を読むストーリー
結末まで書いています。
演出家と女優の、東西の海岸をまたぐ離婚。あの口論の場面は、のちにネットのミームとして広まった。
ニューヨークで劇団を主宰するチャーリー・バーバーの舞台には、結婚して10年になる妻ニコールが主演している。十代で映画に出ていた元女優だ。ふたりの結婚は壊れかけている。相手の好きなところを書き出すよう調停人に勧められても、ニコールは自分の書いたものを読もうとせず、ふたりは調停をやめる。
テレビドラマの試作版で主役を得たニコールは、息子ヘンリーを連れてロサンゼルスの母の家へ移る。舞台がブロードウェイに進出するチャーリーは、別居は一時的だと思っている。弁護士抜きで別れるはずだったが、プロデューサーに勧められたニコールは敏腕弁護士ノラ・ファンショーを雇い、見えない存在にされてきた年月を堰を切ったように語る。チャーリーは彼女の考えも望みも退けてきた。舞台監督の女性との浮気も疑っている。マッカーサー奨励金の受賞に浮かれて訪ねてきたチャーリーに、彼女は離婚の書類を送達させる。
親権を失いかねないと警告されたチャーリーは、歩み寄りを説く温厚な老弁護士バート・スピッツを雇い、その助言でロサンゼルスに部屋を借りる。だが、息子がカリフォルニアで暮らすのを受け入れるよう言われると彼を解任し、奨励金をつぎこんで冷徹な訴訟弁護士ジェイ・マロッタを雇う。法廷で弁護士たちは結婚生活を武器に変える。彼の冷たさと浮気、彼女の飲酒と盗み見たメール。両親のあいだを行き来させられるヘンリーは、うんざりしていく。ふたりきりで話をつけようとして、チャーリーとニコールは互いを激しく傷つけあう。彼はきみが死ねばいいと口にして泣き崩れ、ニコールが彼を慰める。ふたりは合意に達するが、ノラはニコールに黙って、わずかに有利な条件を勝ちとる。
1年後のハロウィン。ニコールには新しい恋人がいて、自分のドラマの一話を演出してエミー賞の候補になっている。チャーリーはロサンゼルスの大学での仕事を得て、しばらくこの街で暮らすことになった。調停のときにニコールが書いたリストをヘンリーが読んでいるのを見つけ、チャーリーは胸を詰まらせながら読んで聞かせる。ニコールは戸口から、気づかれないまま見つめている。仮装して家々をまわったあと、自分の番の夜なのに、彼女は息子をチャーリーに託す。息子を抱いて手のふさがった彼の靴ひもを、彼女が結んでやる。
主な出演
スカーレット・ヨハンソンニコール役
夫の劇団で10年を過ごした女優。自分の人生を取り戻すため、ロサンゼルスへ移る。
ニコールの物語
調停の場で、ニコールはチャーリーの好きなところを書いた紙を読みあげられず、ふたりは調停をやめる。テレビドラマの主役を得ると、息子ヘンリーを連れてロサンゼルスの母の家へ移り、弁護士抜きで別れる約束に反してノラ・ファンショーを雇い、見えない存在にされてきた10年を語り尽くす。夫には離婚の書類を送達させ、電話の口論では、メールを盗み見て浮気の証拠を見つけたと告げる。ふたりきりの話しあいでは激しく傷つけあうが、泣き崩れる夫を慰める。1年後、彼女には新しい恋人がいて、演出でエミー賞の候補になっている。昔のリストをチャーリーが息子に読み聞かせるのを戸口から見つめ、自分の番の夜なのに息子を託して、彼の靴ひもを結んでやる。
アダム・ドライヴァーチャーリー役
成功の絶頂にあるニューヨークの舞台演出家。結婚がすでに終わっていることに、なかなか気づけない。
チャーリーの物語
チャーリーの舞台はブロードウェイ進出が決まり、息子を連れてロサンゼルスへ移った妻との別居を、一時的なものだと思っている。マッカーサー奨励金の受賞に浮かれて訪ねた先で、離婚の書類を送達される。親権を失いかねないと警告されて温厚な弁護士バート・スピッツを雇い、現地に部屋を借りるが、息子がカリフォルニアで暮らすのを受け入れるよう言われると解任し、奨励金をつぎこんで冷徹なジェイ・マロッタを雇う。法廷では、彼の冷たさも浮気も証拠になる。ふたりきりの話しあいで、きみが死ねばいいと口にして泣き崩れる。1年後、大学の仕事でロサンゼルスに暮らす彼は、ニコールのリストを息子に読み聞かせ、彼女に靴ひもを結んでもらい、息子を抱いて帰っていく。
ローラ・ダーンノラ・ファンショー役
ニコールの弁護士。温かく話を聞き、勝つために容赦なく闘う。
アラン・アルダバート・スピッツ役
チャーリーの最初の弁護士。歩み寄りを勧める温厚な老練家で、そのために解任される。
レイ・リオッタジェイ・マロッタ役
チャーリーが闘うと決めて雇う、高額で攻撃的な弁護士。
この作品が問いかけるもの
『マリッジ・ストーリー』が描くのは、結婚の終わりが法の手に渡ったとき、家族に何が起きるのかだ。ふたりは穏やかに別れようと約束して始める。だが勝つために雇われた弁護士たちは、やさしい思い出のひとつひとつを証拠に変え、子どもの暮らしは、どちらの海岸で目を覚ますかという問題になる。ノア・バームバック監督は自身と両親の離婚を下敷きに、双方に言い分を与える。夫の野心を中心に回る結婚のなかで、少しずつ小さくされてきたというニコールの思い。途方に暮れるチャーリーと、息子への愛。ニコールの弁護士を演じたローラ・ダーンはアカデミー助演女優賞を受けた。中心となる口論の場面は、のちに壁を殴る姿がネットの冗談として出回った。最後の場面の問いは、もっと静かだ。結婚が終わり、子どもが残ったとき、ふたりはまだ互いに何を負っているのか。