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Cinema 月明かりの映画館

パリ、夜は眠らない。

Paris Is Burning

1990ドキュメンタリーアメリカ

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

1980年代末ハーレムのドラァグボール。「リーディング」「シェイド」「リアルネス」の語源にして、誰が利益を得るかの倫理論争の源。

ニューヨークに移り住んだ若い写真家ジェニー・リヴィングストンは、ワシントン・スクエア公園でヴォーギングを踊る若者たちに出会い、その踊りを追ってハーレムのドラァグ・ボールへたどり着く。撮影は1980年代後半にわたり、題名はそうしたボールのひとつの名前からとられた。

映画はボールの熱気と、長く率直なインタビューを行き来する。出場者は「カテゴリー」ごとにランウェイを歩き、「リアルネス」を審査される。重役、女学生、兵士、あるいは異性愛の男として、外の世界でどこまで通用するか、ということだ。多くは「ハウス」に属している。家族に拒まれた黒人やラテン系のゲイの男性、トランス女性を受け入れる、「マザー」が率いる選び取った家族である。

二十年にわたって君臨してきたと語る、ハウス・オブ・ラベイジャのマザー、ペッパー・ラベイジャ。鏡の前で化粧をしながら「リーディング」と「シェイド」の意味を説き、かつては世界に名を残したかったが、今は生き抜くことがそのまま爪痕なのかもしれないと言う年長のドリアン・コーリー。ファッションモデルのポーズを取り込んだヴォーギングを踊ってみせる、ハウス・オブ・ニンジャのマザー、ウィリー・ニンジャ。若いトランス女性ヴィーナス・エクストラバガンザは、夫を見つけること、そして「完全になる」ための手術を夢見ていると話し、トランスだと知って襲いかかってきた男から逃れた夜のことも語る。性労働、ボールで歩くための服の万引き、エイズ、手術のための貯金も、淡々と語られていく。

1989年の映像では、ヴォーギングが大衆文化に届き、ウィリーの仕事は海外へと広がっている。だが、ヴィーナスはもういない。1988年12月、彼女はホテルの一室で殺害されているのが見つかり、犯人は今もわかっていない。映画の最後の場面は、彼女のハウスのマザー、アンジー・エクストラバガンザが知らせを受けとめ、ずっと彼女の身を案じていたと語る姿だ。

主な出演

  • ペッパー・ラベイジャ本人

    ハウス・オブ・ラベイジャのマザー。本人いわく二十年にわたってボールに君臨してきた伝説的存在。

  • ドリアン・コーリー本人

    年長のドラァグ・パフォーマーでデザイナー。「リーディング」と「シェイド」を説き、かつて夢見た栄光を振り返る。

  • ウィリー・ニンジャ本人

    ハウス・オブ・ニンジャのマザーで、ヴォーギングの名手。撮影のあいだにダンサーとしての道が開けていく。

  • ヴィーナス・エクストラバガンザ本人

    ハウス・オブ・エクストラバガンザの若いトランス女性。結婚と手術を夢見ていたが、撮影が終わる前に殺害される。

  • アンジー・エクストラバガンザ本人

    ハウス・オブ・エクストラバガンザのマザー。ヴィーナスを娘として迎え、映画の最後でその死を受けとめる。

この作品が問いかけるもの

『パリ、夜は眠らない。』が記録したのは、より大きな社会に居場所を拒まれた人々がつくり上げた世界だ。家を追われた若者も多い黒人やラテン系のゲイの男性、トランス女性たちが、ハーレムに家族と言葉と舞台を自分たちの手でつくった。「シェイド」や「ヴォーギング」は今や日常の語彙で、それもまた議論の一部だ。批評家ベル・フックスは、白人の監督がボールを白人向けの見世物にしたのではと問い、出演者の何人かは成功に見合う報酬を得ていないと感じた。2016年、アメリカ議会図書館の国立フィルム登録簿に選ばれている。議論の底には、映画がまっすぐ映したものがある。華やかさと富の夢から締め出された人々が、貧困とエイズと暴力に囲まれながら、機知と精密さでその夢を演じてみせる。登場した人々のほとんどは、もうこの世にいない。