EN
メニュー

Cinema 月明かりの映画館

シークレット・ラブ: 65年後のカミングアウト

A Secret Love

2020ドキュメンタリーアメリカ

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

60年以上、関係を隠してきた二人の女性。一人は『プリティ・リーグ』のもとになった全米女子プロ野球リーグの捕手だった。

テリー・ドナヒューとパット・ヘンシェルは、1947年、カナダ・サスカチュワン州ムースジョーのアイスホッケー場で出会って恋に落ちた。それから60年以上、ふたりは周囲の多くの人に、自分たちはいとこ同士か、家賃を分け合う友人だと思わせてきた。テリーは、映画『プリティ・リーグ』のもとになった全米女子プロ野球リーグで、ピオリア・レッドウィングスの捕手をしていた。シカゴではふたりとも同じインテリアデザイン会社に勤め、愛は親しい友人たちのあいだだけにとどめた。警察の手入れがあれば名前と勤め先が新聞に載りかねない女性同士のバーには近づかず、カナダ人として移民の立場を危うくすることも避けた。交わした恋文は、署名の部分が破り取られていた。

監督のクリス・ボランはテリーの姪の息子で、2013年に撮影を始めた。ふたりがテリーの家族に打ち明けたのは2009年になってからで、姪のダイアナは、これでふたりの物語を語れるねと答えた。映画は、若き日のホームムービーと、80代になったふたりがシカゴ郊外の家で老いに向き合う現在とを行き来する。テリーはパーキンソン病を患い、ダイアナは家族のいるエドモントンの介護施設へ移ってほしいと願う。気が強く、テリーを守ろうとするパットは抵抗する。テリーを誰かと分け合ったことはなく、同性カップルを迎えたことのない施設で、自分たちがどう扱われるかも怖いのだ。痩せていくテリーを見て怯えるダイアナは、涙ながらにパットとぶつかる。別の姪は、罪深い同棲はやめて結婚しなさいと言う。やがてふたりは家を片づけ、署名を破り取ったパットの恋の詩を見つけ、エドモントンの施設へ移る。映画はふたりの結婚式も映している。ふたりは2015年、テリーの90歳の誕生日に結婚した。テリーは2019年3月、エドモントンで亡くなった。

主な出演

  • テリー・ドナヒュー本人

    女子プロ野球リーグの元捕手。穏やかで人に好かれる。彼女のパーキンソン病が、ふたりにいちばん難しい決断を迫る。

  • パット・ヘンシェル本人

    70年近く連れ添ったテリーのパートナー。気が強く守りに入りがちで、住み慣れた家と友人たちから離れることを拒む。

  • ダイアナ・ボラン本人

    エドモントンに住むテリーの姪で、監督の母。ふたりに家族の近くへ移るよう強く勧める。

この作品が問いかけるもの

恋の物語だが、その重みは老いから来ている。60年にわたって秘密を守ってきたふたりが、いま助けを必要としている。手を差しのべるのは、遅れて真実を知り、ふたりのうち一方をもう一方よりずっと愛しやすいと感じている家族だ。そこに本当の主題がある。病が決定権を親族に渡したとき、そして頼れる介護が同性カップルを迎えたことのない施設にしかないとき、同性のカップルに何が起きるのか。パットの恐れは被害妄想ではない。素性が知られれば逮捕され、名前が新聞に載る時代を生きてきたのだ。批評はほぼそろって温かかったが、異性愛の家族の目を通しすぎ、ふたりのもうひとつの家族だった同性愛の友人たちをほとんど描いていないという批判もあった。どちらの読みも画面の中にある。そして結婚式が、そのすべてを抱えて訪れる。