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Cinema 月明かりの映画館

恋せぬふたり

Two People Who Don't Fall in Love

2022ドラマ・シリーズ日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

アロマンティック・アセクシュアルの二人が恋も性もない“家族”を作る。

兒玉咲子は、スーパーを展開する会社の本社で働いている。人当たりがよく後輩の面倒見もいいが、誰もが恋をするはずだという世の中に、静かに疲れていた。家族は彼女の結婚を待ち、かつての恋人カズは、彼女が何も感じない理由を理解できなかった。親友の千鶴が、元恋人とよりを戻したからとルームシェアの約束を反故にしたとき、咲子は自分を言い表す言葉を探し、アロマンティック・アセクシュアル、つまり誰にも恋愛感情も性的欲求も抱かない人のブログに出会う。書き手は、会社の店舗の青果売り場で働く高橋羽だった。以前、恋をしない人間もいると彼女に言った男だ。咲子は恋愛抜きで家族になろうと提案し、高橋は「お試し」としてそれを受け入れる。ふたりはこの関係を「家族(仮)」と呼び、咲子は高橋が亡き祖母と暮らした古い家に移り住む。

恋人を連れてきたと喜ぶ家族に、咲子はふたりがアロマアセクだと打ち明け、家族は戸惑う。嫉妬したカズは家の前の石段で高橋ともみ合いになり、高橋はカズをかばって転落し、大けがを負う。世話をすると言って同居を始めたカズは、誰もがする不躾な質問をぶつけながら、少しずつふたりを理解していく。恋愛も性的関係も求めないなら自分が家族になってもいいと言うカズに、咲子は、あなたに恋愛の喜びを我慢させたくないと断る。小田原で再会した千鶴は、咲子への思いが恋だと気づき、それが返されることのない暮らしに耐えられなかったのだと打ち明ける。妊娠中に夫に浮気された妹のみのりは、咲子たちの家で産気づき、家族は彼女の側に立つ。

終盤、高橋は店長代理に昇進し、好きな野菜からさらに遠ざかる。かつて高橋と結婚話のあった農業会社の社長・猪塚遥は、地方で農業を始める道を勧めるが、高橋は祖母の家を離れようとしない。咲子は答えを差し出す。自分がこの家に住んで守り、高橋は農家として野菜を育てればいい。一緒に住まなくても家族でいられるし、「仮」のままでかまわない。最後、高橋は地方で畑を耕し、咲子はその家で暮らして、ふたりは連絡を取り合っている。これからも誰かに文句を言われるだろう。それでも、自分の幸せは自分で決める。咲子のそんな独白で、物語は終わる。

主な出演

  • 岸井ゆきの兒玉咲子役

    スーパーの本社に勤める会社員。恋愛感情も性的欲求も抱かず、それが当たり前とされる世の中に疲れている。

    兒玉咲子の物語

    咲子はかつて同期のカズと付き合ったが、何も感じられなかった。親友の千鶴にルームシェアの約束を反故にされ、アロマンティック・アセクシュアルという言葉をブログで知った咲子は、書き手の高橋に、恋愛抜きで家族になろうと持ちかける。恋人を連れてきたと喜ぶ家族に本当のことを告げ、戸惑わせてしまう。自分が家族になると言うカズには、恋愛の喜びを我慢させたくないと断り、千鶴からは、自分への恋心ゆえに離れたのだと打ち明けられる。最後、咲子は高橋の祖母の家を守り、高橋は遠くで野菜を育てて、ふたりは「仮」の家族のまま暮らす。誰に何を言われても、自分の幸せは自分で決めると彼女は言う。

  • 高橋一生高橋羽役

    スーパーの青果担当。アロマンティック・アセクシュアルとして匿名のブログを書き、亡き祖母の家で暮らす。

    高橋羽の物語

    高橋は自分を捨てた両親と縁を切り、亡き祖母と暮らした古い家にひとりで住んでいる。恋愛抜きの家族にという咲子の提案を、お節介な近所への対策にもなると「お試し」で受け入れる。家の前の石段でカズともみ合い、彼をかばって転落して大けがを負う。世話をすると住み込んだカズの不躾な質問をたしなめるうちに、カズは少しずつなじんでいく。店長代理に昇進すると、好きな野菜から遠ざかる。かつて結婚話のあった遥に、地方で農業を始める道を勧められても、祖母の家を離れられないと断る。家族(仮)をやめてひとりに戻るのは嫌だという彼に、咲子が、自分がこの家を守ると言うと、高橋は涙を流して受け入れる。最後、彼は地方で野菜を育てながら、咲子と連絡を取り合っている。

  • 濱正悟松岡一役

    咲子の同期で元恋人。最初は彼女を理解できず、高橋のけがをきっかけに同居する。

    松岡一の物語

    カズは同じアイドルを推したことから咲子と付き合い、アイドルの活動休止とともに関係も休止したが、いまも続いていると思っている。咲子がアロマアセクだと知っても、受け入れられない。高橋に嫉妬して石段でもみ合い、自分をかばった高橋に大けがを負わせてしまう。住み込みで世話を始め、不躾な質問を重ねてはたしなめられながら、少しずつふたりを理解していく。恋愛も性的関係も求めないなら家族になるのは自分でもいいと咲子に申し出るが、恋愛の喜びを我慢させたくないと断られ、「解散」を受け入れる。その後も合鍵を返さず、友人として勝手に上がり込む。最終回では、迷う咲子を励まし、高橋との話し合いに向かわせる。

  • 小島藤子門脇千鶴役

    高校時代からの咲子の親友で美容師。咲子への恋心に気づき、黙って距離を置く。

  • 西田尚美兒玉さくら役

    咲子の母。娘に圧をかけないよう心がけながら、理解しようともがく。

  • 菊池亜希子猪塚遥役

    農業会社の社長。かつて高橋と結婚話があり、自分の人生を歩めと彼に促す。

この作品が問いかけるもの

『恋せぬふたり』は、恋愛ドラマのいつもの仕掛けのまんなかにアロマンティック・アセクシュアルのふたりを置き、その仕掛けがうまく働かないさまを描く。咲子のまわりでは、誰もが恋愛を前提にしている。親切を好意と勘違いする後輩、同居人を恋人だと思い込む家族、何を見ても恋愛として解釈してしまう元恋人。制作にあたっては、当事者や当事者団体による考証と取材が重ねられた。脚本の吉田恵里香は、恋愛は幸せの選択肢のひとつにすぎず、誰かの生き方に他人がとやかく言うものではないという、恋愛至上主義の世界で忘れられがちなことに向き合ったと語り、この作品で向田邦子賞を受けた。心に残るのは、その辛抱強さだ。恋人同士でなければ、家族とは何なのか。多くのドラマが問わないその問いに、作品は「仮」のままの答えを差し出す。