やがて君になる
Bloom Into You
ストーリー
結末まで書いています。
誰にも恋ができない少女と、その少女に恋をする少女。
遠見東高校1年の小糸侑は、誰かを特別に思う気持ちがわからない。中学の同級生からの告白にも心は動かない。生徒会の手伝いに行った侑は、次期会長と目される2年生の七海燈子が、告白してきた男子に誰とも付き合う気はないと断る場面に出くわす。自分と同じ人がいる、と侑は思う。ところがその燈子が、侑を好きになったと打ち明ける。
燈子の願いは、侑が自分を好きにならないまま、好きでいさせてほしいということだけだった。頼まれると断れない侑はそれを受け入れ、燈子の選挙を手伝い、当選した燈子の生徒会に入る。ふたりきりになると燈子は何度か侑に口づけし、名前のつけられない気持ちのまま、侑はそれを拒まない。他人の恋を眺めるのが好きな生徒会の槙はそれを目撃するが口を閉ざし、侑の気持ちは本人が思うより大きいのではないかとほのめかす。
燈子は、七年前に途絶えた生徒会劇を文化祭で復活させたいと言う。侑はその理由を知る。七年前の生徒会長は燈子の姉・澪で、劇の本番を前に交通事故で亡くなっていた。姉の後ろに隠れていた臆病な少女だった燈子は、それ以来、澪の写しとして生きてきたのだ。副会長の佐伯沙弥香は、入学以来ずっと燈子を想い続けている。中学時代に付き合った先輩からは一時の気の迷いだと切り捨てられた過去があり、教師の箱崎理子と暮らす喫茶店の店主・都に、思いがけない理解を得る。
脚本を書いたのは侑の友人のこよみだった。記憶を失った少女が、誰の目に映る自分が本当の自分かを選び、最後に恋人の見た自分を選ぶ物語。合宿で演技指導に来た澪の同級生から、姉は燈子がなぞってきた人とはまるで違ったと聞かされ、燈子は揺らぐ。自分の中にも何かが芽生えていると気づいた侑は、少女が自分自身であることを選ぶ結末へ書き換えてほしいと、こよみに頼む。アニメは劇の本番を迎える前に終わる。水族館で一日を過ごしたあと、侑は燈子と劇の場面を稽古しながら、誰かにならなくていいのだと台詞に託して伝える。2019年に完結した原作は、その先の本番と、ふたりが恋人になるまでを描いている。
主な出演
高田憂希小糸侑役
誰かを特別に思ったことのない1年生。自分を好きにならないでほしいという燈子の願いを受け入れる。
小糸侑の物語
中学の同級生の告白にも侑の心は動かない。自分と同じ人を燈子に見つけたと思った矢先、その燈子に好きだと告げられる。頼まれると断れない侑は、好きにならないという約束で想いを受け止め、選挙の責任者を務めて生徒会に入る。ふたりきりの口づけを拒まず、目撃した槙には何も感じないと言い張るが、槙はそうではないとほのめかす。燈子が亡き姉の写しとして生きていると知って劇をやめるよう説くが拒まれ、それでもそばにいると約束する。体育祭のころには自分の中の変化に気づくが、約束があるため口にはしない。燈子を変えたいと、こよみに劇の結末の書き換えを頼み、水族館で過ごした日のあと、稽古の場で、誰かにならなくていいと台詞に託して伝える。
寿美菜子七海燈子役
周囲の憧れを集める生徒会長。亡き姉の写しとして生きていることを隠し、侑に恋をする。
七海燈子の物語
燈子は、生徒会長だった姉・澪の後ろに隠れる臆病な少女だった。劇の本番を前に澪が交通事故で亡くなってから、姉の写しとして生き、その写しも素の自分も好きになれずにいる。誰も好きになれないという侑にだけ弱さを見せ、好きにならないでいてほしいと願いながら恋をする。生徒会長に当選し、ふたりきりになると侑に口づけし、澪が果たせなかった劇を復活させようとする。侑に止められても聞き入れず、侑が変わればまた独りになるとおそれている。合宿で澪の同級生から、姉は自分がなぞってきた人とはまるで違ったと聞かされて揺らぎ、侑に不安を打ち明ける。物語は、誰かにならなくていいと劇の台詞に託す侑の言葉を、燈子が聞くところで終わる。
茅野愛衣佐伯沙弥香役
副会長で燈子の親友。入学したころから、燈子への想いを胸の内に秘め続けている。
佐伯沙弥香の物語
沙弥香は中学時代、女子校の先輩と付き合い、相手が本気ではなかったと思い知らされた。自分の中の同性愛を封じるつもりで共学の遠見東に進んだが、新入生代表として話す燈子に一目惚れする。それ以来、誰も好きにならない燈子の親友として、副会長として、想いを胸にしまったまま隣にいる。侑が選挙の責任者に選ばれると心穏やかではないが、それでも手を貸し、七年前の生徒会長を調べるよう侑を導く。喫茶店の店主・都と教師の理子が恋人同士だと気づき、都に燈子への想いを打ち明ける。偶然再会した元恋人には、言うべきことを言う。アニメは、想いを口にしないまま燈子の隣にいて、澪について本当は何を知っていたのかと彼女に尋ねる沙弥香の姿で終わる。
市川太一槙聖司役
生徒会の1年生。自分は恋をせず、他人の恋を少し離れた場所から眺めていたいと思っている。
小原好美叶こよみ役
作家志望の侑の友人。生徒会劇の脚本を書き、侑の頼みで結末を書き換える。
森なな子児玉都役
生徒会の面々が通う喫茶店の店主。教師の理子と暮らし、沙弥香が胸の内を打ち明けられる相手となる。
この作品が問いかけるもの
『やがて君になる』は、周りの誰もが感じているらしいものを感じられない少女から始まり、全13話を通してそれを欠陥として扱わない。英語圏の批評家の多くは侑をアロマンティック、あるいはアセクシュアルとして読んだ。原作で侑がはっきり恋をする前にアニメが終わったことがその読みを広げ、物語のその後に失望した読者もいた。もうひとつの主題は燈子だ。亡き姉になりきり、その写しも、その下にいる自分も好きになれず、好きにならないでいてくれる相手にだけ心を預ける。燈子の強引な口づけについては、百合作品にありがちな有害な型だとする批評もあった。作品はその答えの一部を大人たちに託す。喫茶店の店主と教師が静かに暮らす姿は、沙弥香にとって、これが一時の気の迷いではないという証になる。