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Cinema 月明かりの映画館

The Married Woman

2021ドラマ・シリーズインド

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

1992年、宗教で引き裂かれていくデリー。結婚して十一年の大学講師が、夫を亡くした芸術家の女性に恋をする。マンジュ・カプールの小説が原作。

1992年のデリー。ヒンドゥー至上主義の群衆がアヨーディヤーのバーブリー・マスジドを打ち壊した年だ。大学講師のアースターは、実業家ヘーマントと結婚して十一年、夫と二人の子ども、夫の両親と一つ屋根の下で暮らしている。夫婦が夜をともにする日まで前もって決まっているほど、整いきった生活だ。彼女はその物語を、カメラに向かってじかに語る。

最初の変化をもたらすのは、彼女の大学で学生劇を演出するアイジャーズだ。宗教にとらわれず、ウルドゥー語の詩を口ずさむ自由な男に、アースターは恋をして想いを告げるが、彼が差し出すのは友情だけだった。やがてアイジャーズは殺され、アースターは残された妻ピープリカーと出会う。酒を手放さず、男女を問わず恋人を持ってきた芸術家で、性別ではなく魂に恋をするのだと言う女性だ。ふたりの周りで、街は宗教によって引き裂かれていく。アースターを慕う若い女性ティムシーはムスリムの青年ムダッサルと駆け落ちし、ピープリカーの助けで結婚にこぎつけ、両家もやがて受け入れる。

アースターとピープリカーは恋に落ちる。アースターは夫に嘘をついて彼女に会いに行き、外出禁止令のさなかにも、救援キャンプへ同行する。ヘーマントは妻の浮気を疑いはじめる。ふたりをじっと見ていた親族のバッボーは、アースターの結婚十一周年の祝いの席でふたりの姿を目撃し、ヘーマントに告げる。パリで仕事を得たピープリカーは、一緒に来てほしいとアースターを誘う。お前は俺がいなければ何者でもない、と言い放つ夫との口論の末、アースターは行くと決める。最終話、彼女は子どもたちに自分がいなくてもやっていけるよう教えはじめる。そこへピープリカーの母インディラが現れ、娘の過去を語る。アースターは知ったことをピープリカーに突きつけ、やがて疑いが勝る。ふたりは別れ、アースターは家族のもとにとどまる。その選択とともにシーズンは幕を閉じ、ふたりの物語は終わらないまま残される。

主な出演

  • リディ・ドグラアースター役

    1992年のデリーに暮らす大学講師で、模範的な妻。ひとりの女性を愛したことで、整った暮らしがほどけていく。

    アースターの物語

    アースターの結婚は、夫婦が夜をともにする日まで時間割どおりに進み、彼女はそれをカメラに向かって語る。最初にそれを揺さぶるのは大学の劇の演出家アイジャーズだが、想いを告げても返ってくるのは友情だけだ。彼が殺されたあと、その妻ピープリカーと親しくなる。やがて彼女を愛し、夫に嘘をついて外出禁止令のさなかにも会いに行き、救援キャンプにも同行する。結婚記念の祝いでふたりを見たバッボーが夫に告げ、ヘーマントは、お前は俺がいなければ何者でもないと言い放つ。アースターはパリ行きを決め、子どもたちに自分なしでやっていく術をひそかに教えはじめる。だがピープリカーの母から娘の過去を聞き、本人に突きつけるうちに疑いが勝って、家にとどまる。

  • モニカ・ドグラピープリカー・カーン役

    アイジャーズの妻だった奔放な芸術家。性別ではなく魂を愛すると語り、アースターをパリへ誘う。

    ピープリカー・カーンの物語

    ピープリカーは酒を手放さず、絵を描き、男女を問わず恋人を持ってきた。母親との仲はこじれている。アイジャーズが殺されたあと、彼を悼むうちにアースターと親しくなる。駆け落ちしたティムシーとムダッサルの結婚を取り持ち、両家の和解まで導く。先に気持ちを問いただすのは彼女で、アースターは否定する。やがてふたりは恋に落ちる。暴動のさなかの救援キャンプにアースターを連れていき、友人たちにも会わせたがり、その結婚に嫉妬を募らせる。結婚記念の祝いの席にも姿を見せる。パリで仕事を得ると一緒に来てと誘い、アースターはうなずく。だが荷造りを手伝いに来たアースターの前に母インディラが現れ、娘の過去を語る。それを突きつけられ、ふたりは別れる。

  • スハース・アフージャヘーマント役

    アースターの夫で実業家。妻をいて当然の存在とみなし、その気持ちを一時の気の迷いと片づける。

  • イマード・シャーアイジャーズ役

    アースターの大学で劇を演出する、世俗的で詩を愛する男。彼女の生活を最初に揺さぶり、その死が人生を変える。

  • アーイシャ・ラザバッボー役

    婚家の親族。アースターとピープリカーの仲を怪しみ、目にしたことをヘーマントに告げる。

この作品が問いかけるもの

本作は、ふたりの女性の恋を、世俗国家というインドの自己像が街頭で壊されていった数か月のなかに置く。そして、夫婦の夜の予定まで暦で決められた女性にとって、自由とは何なのかを問う。原作はマンジュ・カプールの小説。作者は、すべてを与えてくれるように見える枠組みのなかで心の充足を見つけることの難しさを描きたかったと語っている。ドラマはアースターの目覚めを、性別ではなく人を愛することとして描く。そして最後に、ふたりは別れ、アースターは子どもたちのもとにとどまる。評価は分かれた。主演のふたりを称える声がある一方で、暴動が単なる背景にとどまり、恋の燃え上がり方が性急だという批判もあった。残るのは、多くの既婚女性が口にせずにきた問いだ。不幸ではない人生なら、手放してはいけないのだろうか。