ラストタンゴ・イン・パリ
Last Tango in Paris
ストーリー
結末まで書いています。
空き部屋での匿名の情事。バターを使うことをマリア・シュナイダーに知らせないまま撮られたレイプの場面が、今やこの映画の主文になった。
パリで古びたホテルを営むアメリカ人の中年男ポールは、自ら命を絶った妻ローザの死に打ちのめされている。映画監督のトムと婚約している若いパリジェンヌのジャンヌは、借りる部屋を探して訪ねた空きアパルトマンで、同じ部屋を見に来たポールと鉢合わせする。見知らぬ者同士のまま、ふたりはそこで体を重ね、ポールは部屋を借りる。ここでは互いに何も明かさない、名前さえも、と彼は決め、ジャンヌはそれに不満を抱く。ふたりはがらんとした部屋で会い続ける。あるとき、ポールはジャンヌを強姦する。それでも彼女は、別れようとしても別れられないと彼に言う。やがてある日、部屋に来たジャンヌは、ポールが何も告げずに荷物をまとめて消えたことを知る。
妻の通夜のあと、ポールは街でジャンヌに出くわし、もう一度始めたいと言う。自分で決めた決まりを破り、妻の死と自分の半生を語りはじめ、タンゴを踊る人々でにぎわう酒場に入っても話し続ける。素性を知ったことで、ジャンヌの心は冷める。もう会いたくないと告げる彼女を、ポールは放そうとしない。帰って、警察を呼ぶ、と叫ぶ彼女をパリの街じゅう追いかけ、母と暮らす彼女の部屋まで押し入る。逃げたことをあざけり、愛していると言い、名前を教えてくれと頼む。ジャンヌは名前を告げ、彼を殺す。バルコニーで息絶えていくポールの傍らで、彼女はつぶやく。知らない人、私を襲おうとした人、名前も知らない。警察に話す言葉を稽古するように。
主な出演
マーロン・ブランドポール役
パリでホテルを営むアメリカ人の中年男。妻の自殺に打ちのめされ、名前すら明かさない関係を求める。
ポールの物語
四十五歳のポールは、パリに流れ着いたアメリカ人で、妻ローザと安ホテルを営んでいたが、その妻が自ら命を絶ったばかりだ。空き部屋で見知らぬジャンヌと体を重ね、部屋を借りて、名前も過去も明かさないと決める。その合間に、娘を葬りに来たローザの母を迎え、ホテルの下宿人で妻の愛人だったマルセルと知り合う。マルセルは彼と同じガウンを持っている。部屋では、ジャンヌを強姦する。やがて何も告げずに部屋を引き払う。妻の通夜のあと、街でジャンヌを見つけると、それまで拒んでいた身の上を語り、タンゴの大会の酒場で、一緒に暮らそうと言う。もう終わりだと言う彼女を家まで追い、押し入って名前を尋ねる。彼女は名を告げ、彼を殺す。
マリア・シュナイダージャンヌ役
婚約中の若いパリジェンヌ。空き部屋のアパルトマンと、そこにいるポールのもとへ通い続ける。
ジャンヌの物語
二十歳のジャンヌは大佐の娘で、未亡人の母と暮らし、若いテレビ監督のトムとの結婚を控えている。トムは彼女を主人公に映画を撮っていて、それはふたりの結婚式で締めくくられるはずだ。新居にと訪ねた空き部屋でポールと出会い、体を重ねる。互いに何も明かさないという彼の決まりに不満を抱きながら、通い続ける。強姦されたあとも、別れようとしても別れられないと彼に言う。ある日、部屋はもぬけの殻になっている。再び現れたポールが身の上を語ると、彼女の心は冷め、タンゴの酒場で、もう終わりだと告げる。家まで追ってきた彼に名前を聞かれ、名を告げて、彼を殺す。そして、警察に話す言葉を稽古するようにつぶやく。知らない人、私を襲おうとした人、名前も知らない。
ジャン=ピエール・レオトム役
ジャンヌの婚約者で、若い映画監督。アパルトマンの外にある、彼女のもうひとつの暮らしの側にいる。
この作品が問いかけるもの
『ラストタンゴ・イン・パリ』は、名前も過去も優しさもない性だけを求めるほど深い喪失を描こうとした映画で、長く性の自由の記念碑として論じられてきた。ポーリン・ケイルは、史上最も強烈に官能的な映画と評した。イタリアでは公開後まもなく押収され、ベルトルッチはわいせつ罪で裁かれ、1976年には最高裁がフィルムの廃棄を命じた。いま最も記憶されているのは、脚本の外で起きたことだ。マリア・シュナイダーは、強姦場面のある細部を撮影の直前まで知らされなかった。彼女は2007年、屈辱を感じ、ブランドとベルトルッチに「少し犯された」ように感じたと語った。ベルトルッチは、よりリアルな反応を得るために伏せたと述べ、2013年には、罪悪感はあるが後悔はないと語っている。スクリーンの上の真実は、同意を求められなかった誰かに何を払わせるのか。