スーパーセックス
Supersex
ストーリー
結末まで書いています。
ロッコ・シフレディの半生をイタリア男性性の神話として、女性脚本家が描く。
2004年、パリ。世界一有名なポルノ俳優ロッコ・シフレディが、記者会見で引退を口にする。物語は、彼がそこに至るまでをさかのぼっていく。
アブルッツォの海辺の町オルトーナで貧しく育つ少年ロッコ・ターノは、異父兄のトマソに憧れている。美男で自信にあふれた兄の恋人は、町いちばんの美人ルシアだ。兄弟のひとりクラウディオが死んだあと、ロッコは「スーパーセックス」というポルノの写真漫画を拾う。主人公は、ガブリエル・ポンテッロが演じる、抗いがたい性の力を持つ異星人だ。セックスを制する者がすべてを制する、とトマソは弟に教える。ルシアの浮気を目撃したロッコが兄に告げると、トマソは家族の同意も得ずに彼女と結婚し、町を出ていく。
19歳のロッコは兄を追ってパリへ渡り、兄のつてでレストランで働くうちに、自分が女性たちに求められることを知る。いかがわしいクラブでポンテッロ本人と出会い、業界に誘われるが、初めての撮影は失敗に終わる。ルシアを狙っていると疑ったトマソに殴られ、ロッコは兄が妻に売春をさせていたことを知る。1987年のローマで、ポンテッロは彼を監督リッカルド・スキッキとスター女優モアナ・ポッツィに引き合わせ、ロッコ・ターノはロッコ・シフレディになる。
成功はすぐに訪れ、その代償も大きい。故郷は彼を恥じ、彼はエイズを恐れ、撮影の外でもセックスをやめられず、死んだ兄の名をとってクラウディオと名づけた息子を持つトマソとも衝突する。恋人ティナは妊娠するが流産し、ふたりは別れる。ロッコは死の床にある母カルメラのもとへ帰り、母はクラウディオの名を口にして息を引き取る。借金を抱えたトマソは母の名を冠した店を開くが、弟をあざける地元の男たちに立ち向かったために殴られ、店を焼かれる。カンヌでロッコは若いハンガリー人女優ロージャ・タッシと出会う。仕事のために彼女を遠ざけようとするが、彼女は嫉妬もせずにそばにとどまり、子どもが欲しいと言う。
再び2004年。記者会見のあと、ロッコはトマソと再会する。十年前にパリで自ら命を絶とうとして、死んだと誰もが思っていた兄だった。ルシアはフランス人のギャング、ジャン=クロードと結婚しようとしていた。トマソは復讐するつもりで式の場の外で待つが、息子の姿を見て果たせない。ロッコが兄を送り届けたみすぼらしい部屋の壁は、ロッコの出演作のポスターで埋めつくされていた。ロッコが兄を寝かしつけて部屋を出たあと、ひとり残ったトマソは自ら命を絶つ。ブダペストでロッコは、いとこでマネージャーのガブリエーレに仕事に戻ると告げ、ロージャに愛していると伝え、鏡の中の自分を見て微笑む。
主な出演
アレッサンドロ・ボルギロッコ・シフレディ役
オルトーナの貧しい家に育ち、世界一有名なポルノスターになる男。自分の人生と仕事を切り離せない。
ロッコ・シフレディの物語
ロッコはオルトーナの貧しい家で、異父兄トマソに憧れて育つ。セックスを制する者がすべてを制する、と兄は教える。19歳で兄を追ってパリに渡り、少年時代に拾ったポルノ漫画で主人公を演じていたガブリエル・ポンテッロに、業界へ導かれる。1987年のローマで、彼はロッコ・シフレディになる。成功とともに、故郷の恥、エイズへの恐れ、恋人の流産、兄との衝突がついてくる。母は死んだ兄弟の名を呼んで息を引き取る。遠ざけようとしたロージャは離れず、子どもが欲しいと言う。2004年、生きていた兄を部屋まで送り届けて出た直後に、トマソは自ら命を絶つ。ブダペストで彼は仕事に戻ると告げ、ロージャに愛していると伝え、鏡の中の自分に微笑む。
アドリアーノ・ジャンニーニトマソ役
ロッコの異父兄で、最初の憧れの人。セックスは力だと弟に教え、自分はほとんどすべてを失っていく。
トマソの物語
トマソは美男で、オルトーナいちばんの美人ルシアと付き合っている。弟ロッコに彼女の浮気を告げられても、家族抜きで結婚してパリへ出ていく。パリではルシアに売春をさせ、妻を狙っていると疑って弟を殴る。死の床の母は見舞わず、葬儀は遠くから見届ける。故郷に母の名を冠した店を開くが、弟をかばったために地元の男たちに殴られ、店を焼かれる。パリで自ら命を絶とうとしたあと、十年のあいだ死んだと思われていた。2004年に姿を現し、ルシアの結婚式の外で武器を手に待つが、息子の姿を見て果たせない。ロッコに送られた部屋の壁は、弟のポスターで埋まっている。弟が去ったあと、ひとり残った彼は自ら命を絶つ。
ジャスミン・トリンカルシア役
家族の反対を押し切ってトマソと結婚した女性。パリで夫に売春を強いられる。
ルシアの物語
ルシアはオルトーナいちばんの美人で、トマソの恋人。ほかの男といるところを少年ロッコに見られて告げ口されるが、トマソはそれでも彼女と結婚してパリへ連れていき、客をとらせる。妊娠した彼女は、ロッコを家から出してほしいと頼み、息子クラウディオの誕生祝いの席で兄弟がまたぶつかると、ロッコを追い返す。年月がたち、ロサンゼルスへ発つ前のロッコとパリで昼食をともにし、彼の母の葬儀にも姿を見せる。やがて息子を連れてトマソのもとを去り、彼が敵と見なすジャン=クロードのもとへ行く。2004年、その男との結婚式の日、武器を手にしたトマソが外で待っている。彼女は歩み寄り、死んでいないとわかっていたと告げる。トマソは去り、二度と彼女の前に現れない。
サウル・ナンニ青年時代のロッコ役
パリに出てきたばかりの19歳のロッコ。自分の体が何をもたらすのかを知っていく。
エンリコ・ボレッロガブリエーレ役
ロッコのいとこでマネージャー。最後に、ロッコから仕事に戻りたいと告げられる。
この作品が問いかけるもの
『スーパーセックス』は、ヨーロッパのポルノで最も有名な肉体を取り上げ、その中にいた男が何を支払ったのかを問う。主題は受け継がれていく男らしさだ。貧しく暴力の絶えない家に育った少年は、憧れの兄からセックスは力だと教わり、その教えの上に人生を築く。教えた兄のほうは、妻に売春をさせながら沈んでいく。性の場面は途切れず、ロッコを演じたアレッサンドロ・ボルギは95日間で50のセックスシーンを撮ったと語っている。全話の脚本は女性脚本家フランチェスカ・マニエーリが書いた。シフレディ本人は、この物語は自分の人生に着想を得ているが自分の人生そのものではなく、脚本家が自分自身を多く注ぎ込んだと語った。2024年のベルリン国際映画祭で初上映された。最後の場面が残すのは、人は自分をつくったものであることをやめられるのか、という問いだ。