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Cinema 月明かりの映画館

ギヴン

Given

2019–2024アニメ日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

バンドと、歌えない悲しみと、恋。

高校生の上ノ山立夏は、ギターを弾いても心が動かなくなっていた。無口な同級生の佐藤真冬が持ってきた弦の切れたギターを張り替えてやると、真冬は弾き方を教えてほしいと頼む。立夏は折れて、大学生のベーシスト中山春樹、ドラマー梶秋彦と組むバンドの練習に真冬を連れていく。真冬が自作のメロディーを口ずさむのを聴き、立夏はボーカルに誘う。

そのギターは、真冬の幼なじみで恋人だった吉田由紀のものだった。中学生のころ、仲違いのあとで由紀は自ら命を絶ち、真冬は自分の言葉のせいだと思い込んで、気持ちを言葉にできずにいる。バンドの曲を「好きだった人」のことにしたいと真冬が言うと、立夏は嫉妬し、自分が彼に恋していると気づく。由紀とバンドを組んでいた幼なじみの柊と玄純も、悲しみを抱えている。

初ライブの夜になっても、真冬の歌詞はできていない。本番の直前、彼は由紀を失った思いをそのまま歌い、ライブは成功する。そのあと、真冬と立夏は口づけを交わす。バンドは、由紀の母が真冬に託したギターにちなんで「ギヴン」と名づけられる。真冬は立夏に好きだと伝え、メンバーもふたりの関係を自然に受け入れる。最終話は、新しい曲を書きたいと言う真冬と、秋彦への想いを胸に秘めるだけではいられないと自覚する春樹の姿で終わる。

2020年の映画は、年上のふたりに焦点を移す。ギヴンは年末のフェスのアマチュアコンテストに挑む。ヴァイオリン専攻の秋彦は、元恋人の世界的ヴァイオリニスト村田雨月と、別れたあとも同居と体の関係を続けている。雨月と言い争った夜、秋彦は春樹の部屋を訪れ、彼に性的暴行を加える。春樹は長い髪を切り、秋彦は謝って、行き場のないまま春樹の部屋にとどまる。審査の日、雨月の打ち明け話から生まれた歌詞を真冬が歌い、音楽が好きだったことを思い出した秋彦は雨月と別れる。ギヴンはあと一歩で落選する。春、ヴァイオリンのコンクールを終えた秋彦は、お前に見合う男になりたかったと告白し、春樹は受け入れる。

2024年の二部作が物語を締めくくる。前編では、コンテストを勝ち抜いた柊と玄純のバンドがデビューを控え、立夏が臨時のギタリストとして加わる。ギヴンにもデビューの話が来るが、真冬は答えを出せない。由紀が遺した未完成の曲を立夏が仕上げたデモを聴き、柊は由紀が真冬を想ったように自分も玄純を想っていると気づいて、ふたりは恋人になる。一方、また独りになるのをおそれる真冬は、いつからか歌っていない自分に気づく。後編の『映画 ギヴン 海へ』で、雨月に背中を押された真冬は、立夏が奏でる由紀の曲を聴きに行き、そのなかに由紀を見つけて、立夏と音楽を続けることを選ぶ。映画の最後の演奏では、ギヴンの舞台でふたりが声を合わせて歌う。

主な出演

  • 矢野奨吾佐藤真冬役

    並外れた歌声を持つ無口な高校生。恋人だった由紀の自死を、今も胸に抱えている。

    佐藤真冬の物語

    真冬は幼いころ父から虐待を受け、幼なじみの由紀に支えられて育った。中学で恋人になった由紀は、言い争いのあと自ら命を絶つ。真冬は自分の言葉のせいだと信じ、弦の切れた由紀のギターを抱えたまま、気持ちを言葉にできずにいる。立夏に弦を張り替えてもらい、彼のバンドの歌い手になる。初ライブの夜、歌詞のないまま由紀を失った思いを歌い、そのあと立夏と恋人になる。映画では、雨月が打ち明けた苦しい恋に答えるような歌を歌う。メジャーデビューの誘いに答えを出せず、また独りになるのをおそれて歌わなくなる。雨月に背中を押されて、立夏が由紀の遺した曲を弾くライブへ向かい、その曲の中に由紀を見つけて、立夏と音楽を続けることを選ぶ。

  • 内田雄馬上ノ山立夏役

    腕は確かだが無愛想な高校生ギタリスト。失いかけていた音楽への情熱を真冬の声に呼び戻され、彼に恋をする。

    上ノ山立夏の物語

    立夏は、ギターを弾いても心が動かなくなっていた高校生だ。真冬のギターの弦を張り替え、その歌声を聴いて熱を取り戻し、彼をバンドに引き込む。真冬の亡くなった恋人に嫉妬して自分の恋心に気づき、初ライブのあとに口づけし、年上のふたりにも打ち明けるが、ふたりはあっさり受け入れる。ギヴンにメジャーデビューの話が来たころ、彼は柊のバンドで臨時のギタリストを務め、由紀が遺した未完成の曲を仕上げてほしいと託される。気の進まないまま、彼は曲を完成させる。音楽から遠ざかる真冬に言葉が届かず、ステージの上から音楽でぶつかると決める。真冬はライブにやって来て曲の中に由紀を見つけ、物語はふたりが声を合わせて歌うところで終わる。

  • 中澤まさとも中山春樹役

    バンドのベーシストで、面倒見のいいまとめ役の大学院生。何年も前から秋彦をひそかに想っている。

    中山春樹の物語

    春樹は大学院生で、バンドのベーシストでまとめ役。何年も秋彦をひそかに想っているが、秋彦は元恋人の雨月と同居し、体の関係も続けている。真冬の才能が開いていくのを見て、バンドで自分だけが平凡だと感じる。ある夜、雨月と言い争った秋彦が部屋に来て、彼に性的暴行を加える。春樹は泣き、長い髪を切り、それでも行き場がないと言う秋彦を部屋に置く。真冬には、もうそういう気持ちはないと言いながら、秋彦に求められていないことに苦しむ。春、秋彦のヴァイオリンのコンクールを見に行き、ひとりで先に会場を出た彼を、秋彦が川辺で見つけ、お前に見合う男になりたかったと告げる。春樹はその想いを受け入れる。

  • 江口拓也梶秋彦役

    ドラマーでヴァイオリン専攻の大学生。元恋人の雨月と同居を続け、自分の望みを決められずにいる。

    梶秋彦の物語

    秋彦はヴァイオリン専攻の大学生で、ギヴンのドラマー。高校時代からの恋人・雨月の家に、別れたあとも住み続け、体の関係もやめられずにいる。雨月の才能の前で、自分のヴァイオリンを信じられなくなっている。雨月と言い争った夜、何年も自分を想ってきた春樹の部屋を訪ね、彼に性的暴行を加える。謝ったあと、行き場のないまま居座り、春樹のために料理を作る。コンテストの審査で真冬の歌を聴いて音楽が好きだったことを思い出すと、雨月を追いかけ、傷つけたことを謝り、礼を言って別れる。春樹の部屋を出てヴァイオリンに打ち込み、春のコンクールのあと、お前に見合う男になりたかったと春樹に告げ、付き合ってほしいと申し込む。

  • 浅沼晋太郎村田雨月役

    世界的なヴァイオリニスト。秋彦の元恋人で同居人であり、終わらせられない関係にふたりで縛られている。

この作品が問いかけるもの

『ギヴン』は、まだ言葉にならない悲しみと、それを言葉にしようと支え合う若者たちの物語だ。中心にあるのはひとつの自死と、自分の言葉がその原因だと信じる少年である。作品はその罪悪感を急がずに扱う。真冬は新しい恋に救われるのではなく、古い恋を歌い抜けるための時間と舞台を与えられる。ここでの同性同士の恋は、暴かれるのを待つ秘密でも、見せ物でもない。バンドのふたりが恋に落ちても、ほかのメンバーはそのまま練習を続ける。2019年、フジテレビの深夜枠「ノイタミナ」で初めてのボーイズラブ作品として放送され、最初の映画はミニシアターの興行ランキングで5週連続1位となった。新しい誰かを愛することは死者への裏切りなのか、それとも死者に誠実であり続ける唯一の方法なのか。作品はその問いを開いたままにしている。