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Cinema 月明かりの映画館

溺れるナイフ

Drowning Love

2016映画日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

海辺の町の少女モデルと神社の跡取り。熱に浮かされた思春期の欲望。

東京で人気のティーンモデルだった15歳の望月夏芽は、祖父の旅館を継ぐことになった家族とともに、父の故郷である海辺の浮雲町へ越してくる。着いたその夜、鳥居の向こうの立ち入り禁止の浜で、神さまの海を泳ぐ金髪の少年に出会う。代々この土地を守ってきた神主一族、長谷川家の跡取りの航一朗、通称コウ。町も山も海も全部自分のものだと言い放つ彼に、夏芽は反発しながら、どうしようもなく惹かれていく。写真家の広能晶吾が町で撮った写真集をコウに見せた日、ふたりは唇を重ね、付き合い始める。一緒にいれば無敵だと、ふたりは信じていた。

火祭りの夜、旅館の客の蓮目匠が、祖父が倒れたと偽って夏芽を車に乗せる。以前から彼女につきまとっていた男だった。山奥に連れ込まれた夏芽は、強姦されかける。追ってきたコウは殴り倒され、町の男たちが駆けつけて暴行は止められる。事件はネットでも学校でも噂になり、夏芽は心を閉ざす。彼女を救えなかったコウは荒れていき、俺を巻き込むなと夏芽を突き放す。

高校に進んだ夏芽のそばには、コウの幼なじみで心やさしい大友勝利がいて、ふたりは付き合い始める。かつてふたりを神聖視していた地味な同級生の松永カナは、見違えるほど垢抜けて、夏芽と張り合うようになる。夏芽は、レイプの場面がある映画の話を断る。やがて山の神社のそばでコウと再会し、互いの想いがあふれ出す。だがコウは、自分はこの土地を離れられない、お前に何もしてやれないと泣く。夏芽は彼のナイフを手に走り去り、泣きながら背中を押してくれた大友と別れて、映画への出演を決める。

次の火祭りの夜、山の小屋にひとりでいた夏芽の前に、あの男がふたたび現れ、夏芽は気を失う。切れ切れに見えるのは、祭りで舞うコウと、男と争うコウの姿だ。夜更け、カナが告げる。男は自ら命を絶った。すべて海に沈めて、なかったことにする。だからもうコウには近づかないで、と。東京に戻った夏芽は、その映画で賞を受ける。最後に映るのは、コウのバイクの後ろに乗る夏芽と、ずっと見ていてと彼に告げる姿だ。

主な出演

  • 小松菜奈望月夏芽役

    東京から海辺の町へ越してきた15歳の人気モデル。コウに強く惹かれ、彼を自分の神さまだと信じる。

    望月夏芽の物語

    浮雲町でコウに出会った夏芽は、彼の気を引きたくて写真集の撮影を引き受け、唇を重ねてからは、ふたりなら無敵だと信じる。だが火祭りの夜、つきまとっていた男に山へ連れ去られ、強姦されかける。噂は町に広がり、コウには突き放され、夏芽は心を閉ざす。大友と付き合い始め、レイプの場面がある映画の話も断る。けれど、この土地を離れられないとコウが泣いたとき、彼女は彼のナイフを手に走り去り、大友と別れて映画に出ると決める。次の火祭りの夜、男がふたたび現れたあと、カナから、男は自ら命を絶った、もうコウに近づくなと告げられる。東京に戻った夏芽は、その映画で賞を受ける。最後に映るのは、コウのバイクの後ろで、ずっと見ていてと彼に告げる姿だ。

  • 菅田将暉長谷川航一朗役

    代々土地を守る神主一族の跡取りで、通称コウ。禁じられた海を泳ぎ、町を自分のもののようにふるまう。

    長谷川航一朗の物語

    コウは、東京から来た夏芽を道連れに神さまの海へ飛び込み、彼女に惹かれて、跡取りの証である数珠を渡す。火祭りの夜、夏芽にもらった数珠が切れ、胸騒ぎに駆け出した彼は、男に連れ去られた彼女を見つけるが、背後から殴り倒される。暴行を止めたのは町の男たちだった。彼女を救えなかったコウは、荒れた仲間とつるむようになり、俺をお前の人生に巻き込むなと夏芽を突き放す。山の神社のそばで再会すると、芸能の仕事に戻れと勧め、自分はこの土地を離れられない、お前に何もしてやれないと泣く。次の火祭りでは舞を舞い、ふたたび夏芽の前に現れた男と争う。コウは離れられない町に残り、最後の場面では、夏芽を後ろに乗せてバイクを走らせている。

  • 重岡大毅大友勝利役

    コウの幼なじみで、明るく心やさしい同級生。事件のあと夏芽に寄り添い、恋人になる。

    大友勝利の物語

    大友はコウの幼なじみで、おおらかで明るい少年だ。高校に進み、事件の噂のなかでひとり昼食をとる夏芽に、声をかけたのが彼だった。コウに突き放されてずぶ濡れで帰ってきた夏芽を励まし、バッティングセンターで将来の夢を語り合い、熱を出して寝込んだ彼女のもとへ、元気の出る音楽を持って見舞いに行く。コウとの仲を知っているから、友達でいいと言いながら、夏芽のためなら何でもしたい、笑わせたいと告げ、ふたりは付き合い始める。カラオケで、映画に出るために東京へ行くと別れを告げられた大友は、泣きながら歌い、がんばれと彼女の背中を押す。

  • 上白石萌音松永カナ役

    モデル時代の夏芽に憧れ、幼いころからコウを想ってきた同級生。高校で見違えるほど垢抜ける。

  • 志磨遼平広能晶吾役

    夏芽の写真集を撮った一流の写真家。のちに映画の話を持って、ふたたび彼女の前に現れる。

この作品が問いかけるもの

『溺れるナイフ』は初恋の物語のかたちをとりながら、その中心に犯罪を置いている。15歳の夏芽にとって、美しさは仕事であり、力であり、見知らぬ男につきまとわれ襲われる理由でもあった。事件のあと、ネットと学校は彼女の身に起きたことを噂話に変え、身を縮めて生きることになるのは彼女のほうだ。ジョージ朝倉の漫画を映画にした山戸結希監督は、思春期の恋を信仰に近い畏れとして撮る。夏芽が自分の神さまだと信じた少年は、彼女を救えなかったただの少年でもあった。十代の恋愛映画がこれほど性暴力に物語を預けることに、異を唱えた批評もある。それでも残るのは、結末の取り引きの重さだ。ひとつの死が海に沈められてなかったことにされ、少女の成功は、秘密と、町に残された少年の上に成り立っている。