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Cinema 月明かりの映画館

寝ても覚めても

Asako I & II

2018映画日本

465作品の星図のなかで見る

Moonlightの読みもの

Cinema『寝ても覚めても』と、「似ている人」に惹かれる心の危うさこの一篇を読む

ストーリー

結末まで書いています。

消えた初恋の男と同じ顔の男に恋する。撮影後の現実の不倫報道が作品の影に。

大阪。爆竹の音に振り返った泉谷朝子は、歩道橋ですれ違った青年・鳥居麦と目が合い、口づけされる。親友の春代が危ぶむなか、ふたりは恋に落ちる。麦は気ままに出入りする男で、ある夜パンを買いに行くと言って出たまま昼まで戻らず、必ず朝子のところに帰ってくると約束する。そしてそのまま、本当に姿を消す。

二年後、朝子は東京の喫茶店で働いている。隣のビルの酒造会社で、彼女は麦と同じ顔をした会社員・丸子亮平に出会う。思わず「麦」と呼び、逃げ出す朝子。入館時間を過ぎて断られた写真展に、亮平は交渉して朝子と同居する俳優のマヤを入れてやり、同僚の串橋を交えて四人は親しくなる。朝子と亮平は付き合い始めるが、朝子は突然、電話で別れを告げる。マヤの舞台の日、東日本大震災が起きる。交通の止まった街を歩いて会社へ戻る途中、亮平は路上で朝子に出会い、ふたりは抱き合う。

五年後、ふたりは猫のジンタンと暮らし、東北の被災地へ車でボランティアに通っている。再会した春代は、麦が人気モデルになったと告げる。大阪への転勤が決まった亮平はプロポーズし、朝子は麦のことを打ち明けるが、亮平は知っていたと答える。ふたりは淀川のそばの一軒家に住むことに決める。

送別会の席に麦が現れ、手を差し出す。朝子は皆の前でその手を取り、店を出ていく。行き先は北海道。だが仙台の近く、巨大な防潮堤が海を隠す場所で、朝子は亮平のところへ帰らなければと麦に告げ、麦は彼女を残して去る。ボランティアで知り合った平川に金を借り、お前は許されないぞと言われて、朝子は大阪へ向かう。亮平は帰れと言い、猫は捨てたと告げる。朝子はそれでもジンタンを探し、病で寝たきりになった麦の旧友・岡崎を見舞う。どれだけ謝っても謝りきれないから謝らない、許されたいとも思わない、でも一緒にいたい。そう告げた朝子に、亮平は家の中から猫を差し出し、扉を閉める。鍵はかかっておらず、朝子は中に入る。お前のことはきっと一生信じないと亮平は言う。汚い川やなと言う亮平に、朝子は答える。「でも、きれい」。

主な出演

  • 東出昌大丸子亮平/鳥居麦役

    同じ顔のふたりの男。大阪から姿を消す気ままな初恋の人・麦と、朝子を愛する東京の誠実な会社員・亮平。

    丸子亮平/鳥居麦の物語

    亮平は東京の酒造会社で働く会社員で、麦と同じ顔をしている。自分を麦と呼んで逃げ出した朝子を、入館時間を過ぎた写真展に入れてやり、付き合うまで粘る。電話で別れを告げられたあと、震災の日、歩いて会社へ戻る途中で彼女と出会い、抱き合う。五年後、ふたりは猫と暮らし、東北へボランティアに通う。大阪への転勤が決まってプロポーズし、麦のことを打ち明けられると、知っていた、気にすることはないと答える。送別会の席では、麦の手を取って出ていく朝子を見送るしかない。戻ってきた彼女には帰れと言い、猫は捨てたと告げる。やがて家の中から猫を差し出して扉を閉めるが、鍵はかけていない。お前のことはきっと一生信じないと言い、川を眺めて、汚い川やなとつぶやく。

  • 唐田えりか泉谷朝子役

    姿を消した恋人を忘れられないまま、同じ顔をした男と恋に落ちる、大阪から来た物静かな女性。

    泉谷朝子の物語

    朝子は大阪の歩道橋で麦に口づけされ、恋に落ちる。必ず帰ってくると約束した麦は、やがて姿を消す。二年後の東京で麦と同じ顔の亮平に出会い、思わず麦と呼んで逃げ出す。付き合い始めても電話で別れを告げるが、震災の日、止まった街で亮平と出会い、抱き合う。五年後、亮平のプロポーズを受ける前に、麦のことを打ち明ける。送別会の席に現れた麦が手を差し出すと、皆の前でその手を取る。だが仙台の手前で、戻らなければと麦に告げる。大阪で亮平に帰れと言われても、捨てたと聞かされた猫を探し続け、謝らない、許されたいとも思わない、ただ一緒にいたいと告げる。鍵のかかっていない扉を開けて、彼女は家に入る。汚い川だと言う彼の隣で、朝子は、でもきれい、と答える。

  • 瀬戸康史串橋耕介役

    亮平の同僚で、かつて俳優を目指した男。マヤの演技へのやっかみが、やがて友情と恋に変わる。

  • 山下リオ鈴木マヤ役

    東京で朝子と暮らす舞台俳優。亮平を置いて去った朝子を許すことができない。

  • 伊藤沙莉島春代役

    大阪時代からの朝子の親友。最初から麦を信用せず、何年ものちに彼が有名になったことを伝える。

この作品が問いかけるもの

『寝ても覚めても』は、ひとりの俳優がふたりの男を演じるという仕掛けの上に立つ恋愛映画で、その仕掛けを使って、人は誰かを愛するとき何を愛しているのかを問う。顔か、記憶か、そばにとどまる人か。送別会での朝子の選択は弁護できないもので、映画も弁護しない。彼女のあとを追い、自分のしたことを引き受けさせ、赦しではなく、同じ川を並んで見るふたりの姿で終わる。恋の傍らには2011年の震災がある。地震の日にふたりは路上で抱き合い、その後も何年も東北へボランティアに通う。2018年のカンヌ国際映画祭ではコンペティション部門に出品された。