海を感じる時
Undulant Fever
ストーリー
結末まで書いています。
愛していないと言う男に身体を差し出す少女。中沢けいの78年の小説を映画化。
1970年代、海辺の町。高校生の恵美子は、新聞部の先輩の洋にずっと想いを寄せていた。ある日、部室で洋は、キスというものをしてみたいと言って唇を重ねる。気持ちを打ち明けた恵美子に、洋は、女の体に興味があっただけで相手は誰でもよかったと言い放つ。それでも恵美子はあきらめない。ふたりは体の関係を持つようになるが、洋の態度は冷たい。愛してもいないのに欲望を抑えられない自分を嫌い、大切にしてやりたくてもできないのだと何度も告げる。恵美子は、会えるなら体目当てでもかまわないと言う。やがて恵美子は身ごもる。産みたいと願う彼女を、洋は金なら出すと突き放し、子どもは生まれない。
洋は大学進学のために上京し、恵美子の手紙はまとめて送り返されてくる。夫を亡くし、裁縫の仕事で娘を育ててきた母はその手紙を読み、体だけでもいいから会ってほしいと娘が懇願していたことを知る。母は恵美子を売春婦呼ばわりして叩き、恵美子は、私も女なのよと言い返す。母は心の均衡を失っていく。大学受験に失敗した恵美子は家を出て洋を追って上京し、花屋で働きながらひとりで暮らす。洋は気の向いたときに部屋へやってくるが、以前より優しくなっている。母が訪ねてきた日に洋が現れると、母は彼がそこにいないかのようにふるまう。激しい喧嘩のあと、洋は恵美子を抱きしめ、一緒に暮らそうと言う。
だが洋の姉と会ったことで、洋がかつて恵美子を好きではないと話していた過去がよみがえり、恵美子は、愛のないまま抱かれていた日々を許すことができない。ある晩、酔った恵美子は見知らぬ男の部屋へついていく。数日後、手料理をうれしそうに食べる洋に、恵美子はそのことを打ち明ける。洋は激怒して出ていく。
恵美子は海辺の家へ帰る。母は会社の寮母となって家を出ており、家には誰もいない。ひとりで幼いころを思い出した恵美子は、翌朝、家の前の砂浜に出て、じっと海を見つめる。
主な出演
市川由衣恵美子役
海辺の町の女子高生。愛していないと言う先輩に、それでもすがりつく。
恵美子の物語
部室で洋にキスをされた恵美子は、ずっと好きだったと打ち明けるが、相手は誰でもよかったと言い放たれる。それでも、求められるならどんな形でもいいと、彼を追い続ける。身ごもって産みたいと願うが、洋は金しか出せないと突き放し、子どもは生まれない。上京した洋から手紙を送り返され、それを読んだ母に売春婦呼ばわりされて叩かれると、私も女なのよと言い返す。受験に失敗して洋を追って上京し、花屋で働く。洋は優しくなり、一緒に暮らそうと言うが、恵美子は、愛のないまま抱かれていた日々を許せない。見知らぬ男の部屋へついて行き、そのことを告げると、洋は激怒して出ていく。誰もいない海辺の家に帰った恵美子は、翌朝、砂浜に出て、じっと海を見つめる。
池松壮亮洋役
恵美子の新聞部の先輩。彼女を愛せないまま体を求め、そんな自分を嫌っている。
洋の物語
新聞部の先輩の洋は、キスというものをしてみたいと部室で恵美子に唇を重ね、気持ちを打ち明けられると、相手は誰でもよかったと言い放つ。愛してもいないのに彼女を求める自分を嫌いながら関係を続け、大切にしてやりたくてもできないと何度も告げる。恵美子が身ごもると、金なら出すとだけ言う。上京すると、彼女の手紙をまとめて送り返す。恵美子が追ってくると、気の向いたときに部屋を訪ねるが、以前より優しくなっている。恵美子の母に玄関で無視されたあと、激しい喧嘩の末に恵美子を抱きしめ、一緒に暮らそうと言う。数日後、手料理をうれしそうに食べる洋に、恵美子は見知らぬ男と寝たことを打ち明ける。はじめは信じなかった洋も、やがて激怒して部屋を出ていく。
中村久美恵美子の母役
夫を亡くし、裁縫の仕事で娘をひとりで育ててきた母。娘と洋の関係を知って取り乱す。
阪井まどかときちゃん役
恵美子が働く花屋のバイト仲間。恵美子を「お姉さん」と呼んで親しくし、親子ほど年の離れた男との恋に悩んでいる。
高尾祥子洋の姉役
洋の姉。恵美子のことは特に好きではないと弟から聞いていて、会ったときに不用意な言葉をかけてしまう。
三浦誠己サラリーマン風の男役
ある晩、酔ってひとりでいた恵美子に声をかけてくる会社員風の男。恵美子は彼の部屋へついていく。
この作品が問いかけるもの
原作は中沢けいのデビュー作で、明治大学1年生、18歳のときに書かれた。1978年に群像新人文学賞を受け、年上の男子生徒との性体験を描いた小説として当時大きな話題を呼んだ。映画はその居心地の悪い率直さを手放さない。恵美子は誘惑されるというより、自分で決めている。求められないくらいなら、最悪の条件でも求められるほうを選ぶのだ。愛していないと認める少年にも、恥しか見えない母にも、彼女の望むものを言い表す言葉はない。使われるか、汚されるか。その二つの言葉しか差し出されないとき、少女は欲望について何を学ぶのか。映画は和解では終わらない。海の前にひとり立つ若い女性が、ようやく自分のために何かを望み始めるのかもしれないところで終わる。