愛のむきだし
Love Exposure
ストーリー
結末まで書いています。
盗撮、カルト、初恋の4時間。園子温の代表作。
本田悠の母は、幼い彼に「いつかマリア様のような人を見つけなさい」と言い残して亡くなった。父のテツは妻の死後に神父となり、穏やかに息子を育てていたが、激しい気性の女カオリと関係を持ち、やがて彼女に去られる。それからテツは人が変わり、悠に毎日懺悔を強いるようになる。告白する罪のない悠は、父とのつながりを失わないために罪作りに励む。不良仲間に喧嘩を教わり、女性のスカートの中を撮る盗撮を覚え、「盗撮のプロ」と呼ばれるまでになるが、そこに欲情は一度もない。「変態」と罵られ殴られても、悠はそれを父の愛だと受けとめる。だがついに、テツは懺悔を聞くことさえ拒む。
罰ゲームで女装し「サソリ」と名乗って街に出た悠は、ひとりで不良の群れと渡り合う女子高生、尾沢洋子と出会う。並んで戦い、口づけして走り去る。生まれて初めての恋だった。洋子もサソリに恋をする。ところが戻ってきたカオリとテツが結婚することになり、カオリが連れてきた娘が洋子だった。父親の虐待を受けて育ち男を憎む洋子は、悠を毛嫌いする。
新興宗教「ゼロ教会」の若い幹部で、自らも父から虐待を受けてきたコイケが、悠の一家に狙いを定める。自分こそサソリだと洋子に信じ込ませ、悠の盗撮を暴き、テツとカオリと洋子を教団に引き入れる。悠は洋子をさらって海辺の廃バスに立てこもり、一瞬だけ心が通うが、洋子は教団に連れ戻される。悠は信者として潜り込み、ついにサソリの姿で日本刀と爆弾を手に教団のビルへ乗り込む。だが洗脳された洋子は彼の首を絞める。警察が駆けつけ、コイケは自ら命を絶ち、悠は正気を失う。
精神病院で自分をサソリだと思い込んでいる悠は、会いに来た洋子がわからない。洋子はパトカーで連れ去られる。そのとき悠はすべてを思い出す。走って車に追いつき、窓ガラスを叩き割って手を差し伸べる。洋子はその手を握る。
主な出演
西島隆弘本田悠役
神父の息子。父に向き合ってもらうために罪を作り続け、盗撮の達人になる。
本田悠の物語
悠は、母が遺したマリア像と、いつかマリア様のような人を見つけなさいという言葉を大切にしている。毎日懺悔を求める父に差し出す罪を作るために盗撮の達人になり、「変態」と殴られてもそれを愛と受けとめる。サソリに扮した日、洋子と並んで戦って生まれて初めて恋をするが、その洋子は義理の妹として家に来て、彼を毛嫌いする。コイケに盗撮を暴かれて退学になり、家を追われ、家族は教団に奪われる。洋子をさらって廃バスで説得し、信者として教団に潜り込み、サソリの姿で本部へ乗り込む。洋子に首を絞められ、コイケに母のマリア像を壊されて、彼は正気を失う。だが精神病院で洋子を思い出し、彼女を乗せたパトカーを追って窓を叩き割り、手を差し伸べる。
満島ひかり尾沢洋子役
ひとりで不良たちと渡り合う女子高生。父の虐待から男を憎み、サソリに恋をする。
尾沢洋子の物語
父親から虐待を受けて育った洋子は男を信じない。初恋の相手は、不良の群れを相手に並んで戦ってくれたサソリだった。カオリに引き取られてテツの家で暮らし始めるが、悠を受け入れられない。自分こそサソリだというコイケを信じきり、教団に入っていく。悠にさらわれて海辺の廃バスに閉じこめられると、聖書の愛の章を叫ぶように唱え、彼が自分で聖書を読み始めたとき、初めて心を開いたまなざしを向ける。だが教団に連れ戻され、本部に乗り込んできた彼の首を絞める。教団が崩れたあと、親戚の家で、いつも自分を救おうとしていたのが悠だったと気づく。精神病院を訪ね、自分を覚えていない彼の前から警官に連れ出されるが、追ってきた悠が割った窓ごしに、その手を握る。
安藤サクラコイケ役
新興宗教「ゼロ教会」の若い幹部。父から虐待を受けて育ち、悠の一家を教団へ引き込もうとする。
コイケの物語
コイケは悠たちと同じ年頃で、新興宗教ゼロ教会の若い幹部として、教会のために犯罪に手を染めている。盗撮中の悠を捕まえ、懺悔する罪を作るためだという彼に興味を抱いて、悠と一家を丸ごと教団に引き込もうと決める。彼をつけ回して撮影し、家を盗聴し、同じクラスに転入して、自分がサソリだと洋子に信じ込ませる。テツとカオリにも取り入り、悠の盗撮を学校にばらまいて彼を家から追い出させ、一家を教団へ連れていく。廃バスに隠れた悠と洋子も見つけ出す。本部で洋子が悠の首を絞めるなか、コイケは彼の母の形見のマリア像を叩き壊し、壊れていく悠を見て喜びながら、自ら命を絶つ。
渡部篤郎本田テツ役
悠の父。妻を亡くして神父となるが、カオリとの関係を境に、息子に冷たく当たるようになる。
渡辺真起子カオリ役
激しい気性の女。テツの恋人となって去り、洋子を連れて戻ってくる。
この作品が問いかけるもの
『愛のむきだし』は4時間にわたって、ドタバタ喜劇とカンフーとメロドラマと聖書の言葉を行き来する。だが主題ははっきりしている。愛されなかった子どもたちが、手の届くところで愛を探してしまうことだ。悠は父に向き合ってもらうために罪を作る。洋子とコイケは父親から虐待を受けて育ち、ひとりは男への憎しみで身を固め、もうひとりは家族ごと呑みこもうとする教団に身を捧げる。園子温は、20年ほど前に知り合った「盗撮のプロ」の実話をもとにこの物語を作った。盗撮は欲望抜きの「罪」として笑いに変えられるが、撮られた女性たちは誰も同意していない。映画ほどには笑えない観客もいるだろう。2009年のベルリン国際映画祭では、カリガリ賞と国際批評家連盟賞を受けた。