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Cinema 月明かりの映画館

愛がなんだ

Just Only Love

2019映画日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

選ばれないと知りながら尽くすテルコ。片思いの決定版。

二十八歳の山田テルコは、半年前に出会った田中マモルにひと目で恋をし、以来、暮らしのすべてを彼に合わせている。風邪をひいたから何か持ってきてほしいと電話が来れば、もう家にいたのにまだ外にいるふりをして、袋いっぱいに買い込んで駆けつける。深夜になると、マモルはそろそろ帰ってくれないかと言う。ふたりは身体の関係を持ち、テルコは恋人になれたと信じる。マモルのために仕事をおろそかにし、上司に注意され、ついに解雇されても、自由になったと思うだけだ。親友でライターの坂本葉子は、年下のナカハラを都合よく使いながら、テルコをたしなめる。テルコとナカハラは互いの中に自分を見る。振り向いてくれない相手のためなら、何でもしてしまう者同士だ。

やがて、テルちゃんではなく山田さんと呼ぶようになっていたマモルは急に冷たくなり、連絡を絶つ。数か月後、呼び出されて飛んでいったテルコを待っていたのは、マモルの隣に座る年上の塚越すみれだった。煙草を手放さない、飾らない女性で、マモルは明らかに彼女に恋をしており、彼女のほうはまったく相手にしていない。すみれはなぜかテルコを気に入る。テルコ、マモル、すみれ、ナカハラの奇妙な四人は、一緒に飲み、湖畔の別荘で週末を過ごす。テルコとマモルはまた身体を重ねる。先に降りたのはナカハラだった。葉子にはもう会わないと決めたと、彼はテルコに告げる。

ある日、マモルがテルコの部屋を訪ね、すみれが好きだから、この曖昧な関係をやめようと言う。気まずくさせたら二度と会えなくなると考えたテルコは、もうマモちゃんのことはどうでもいいと嘘をつき、会い続ける道を選ぶ。最後に、ナカハラは写真の個展を開く。それを知った葉子が訪ねてきて、自分を写した一枚の前で微笑み、彼のほうを振り返る。テルコは動物園の飼育員になっていて、映画は一頭の象の姿で終わる。

主な出演

  • 岸井ゆきの山田テルコ役

    二十八歳の会社員。マモルに呼ばれればいつでも駆けつけ、仕事も時間も誇りも差し出してしまう。

    山田テルコの物語

    テルコは出会った日から、すべてをマモルに合わせてきた。呼ばれれば仕事を放り出し、会社をクビになっても自由になったと思うだけだ。身体を重ねて恋人になれたと信じるが、やがて山田さんと呼ばれ、早朝に部屋を追い出され、連絡は途絶える。数か月後に呼び出されると、隣には彼が想いを寄せる年上のすみれがいた。テルコはすみれと親しくなり、マモルのそばにとどまる。葉子をあきらめるナカハラには、手に入らないからだと言えばいいと食ってかかる。すみれが好きだから関係をやめようと言われると、もうどうでもいいと嘘をつき、会い続ける道を選ぶ。マモちゃんになりたい、と彼女は言う。最後は動物園で象の飼育員をしている。私はいまだに田中マモルではない、とテルコは思う。

  • 成田凌田中マモル役

    出版社に勤める青年。テルコの世話を受け入れながら、自分を相手にしない年上の女性を追いかける。

    田中マモルの物語

    出版社で働くマモルは、テルコの世話を当然のように受け入れる。風邪をひけば電話で呼びつけ、深夜になるとそろそろ帰ってくれないかと言う。身体の関係を持ち、彼女が恋人のようにふるまい始めると急に冷たくなり、呼び方を山田さんに変えて連絡を絶つ。数か月後、テルコを呼び出して引き合わせたのは、自分が想いを寄せ、まるで相手にされていない年上のすみれだった。自分を貧相でかっこ悪いと言い、ふたたびテルコと身体を重ねた夜には、自分には好きになるところなんてないと言う。やがてテルコの部屋を訪ね、すみれが好きだから、この曖昧な関係はやめようと切り出す。もうどうでもいいというテルコの答えを受けて、ふたりはその後も会い続ける。

  • 深川麻衣坂本葉子役

    テルコの長年の親友でライター。マモルとの関係をたしなめながら、自分は尽くすナカハラを都合よく使う。

  • 若葉竜也ナカハラ役

    葉子を想い続けるカメラマン助手。テルコに自分と同じものを見て、先に身を引く。

    ナカハラの物語

    カメラマン助手のナカハラは葉子に想いを寄せ、深夜でも頼まれれば使い走りをする。葉子がふと寂しくなったとき、いつでも呼び出してもらえる場所にいたいと言う。テルコとは、互いの中に自分を見る。湖畔の別荘で、葉子との関係をすみれにけなされると、すみれさんにはわかりませんよと返す。やがて、自分が好きでいることが葉子をだめにしていると感じ、彼女に会うのをやめると決める。手に入らないからあきらめるだけだろうとテルコに責められ、本当に好きなんです、あきらめることぐらい自由に決めさせてください、と言う。幸せになりたいっすね、とも。葉子の前から姿を消した彼は、写真の個展を開く。訪ねてきた葉子は、自分を写した一枚の前で微笑み、彼のほうを振り返る。

  • 江口のりこ塚越すみれ役

    マモルが想いを寄せる年上の女性。煙草を手放さず、彼には見向きもせず、なぜかテルコを気に入る。

この作品が問いかけるもの

『愛がなんだ』が描くのは、報われもせず、拒まれもしない愛だ。いつでも駆けつける人と、それを受け入れ続ける人。仕事も友人も失うほどの献身は、愛なのか、依存なのか、それとも頑固な自分らしさなのか。映画は誰も裁かずに問い、ふたつの片思いを並べてみせる。ひとりは身を引き、ひとりは嘘をついてとどまる。悪人はひとりもいない。だからこそ、観ていて胸が痛む。2019年4月に公開されると、ゴールデンウィークのテアトル新宿は連日満席・立ち見となり、観客の大半は10代後半から30代の女性やカップルだった。同館では『この世界の片隅に』以来の高い稼働が続き、上映館は広がり、繰り返し観に来る人も現れた。残るのは題名そのものの問いだ。愛がなんだというのか。そして、それは誰にとってなのか。