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Cinema 月明かりの映画館

本気のしるし

The Real Thing

2020映画日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

優柔不断な男が、関わる人を壊す女を救い続ける。4時間の漂流。

辻一路は人当たりがよく、どこか空っぽな会社員で、職場の先輩・細川尚子と後輩の藤谷美奈子、通称みっちゃんの両方とひそかに関係を持っている。ある夜、彼は踏切で立ち往生したレンタカーから、見知らぬ女・葉山浮世の命を救う。浮世は借りた金を返さず、でたらめな住所を名乗り、説明するかわりに「すみません」とだけ言う。ヤクザの脇田が百二十万円の借金のかたに彼女を店に売ると言い出すと、辻はその金を肩代わりする。

浮世には夫と子どもがいた。自動車の営業マンだった夫の正は、払えない高価な車を彼女に買わせ、関係を強要して妊娠させ、結婚したのだった。浮世には、不倫相手と心中を図った過去もある。みっちゃんが辻と細川の抱き合う写真を会社に送りつけ、細川は異動になる。辻は細川との結婚を受け入れるが、浮世を助けるために撤回する。家族の病と借金に追いつめられた細川は、絶望のあまり辻に襲いかかる。辻は正の家に乗り込んで浮世を解放させ、姿を消した彼女を港で見つけ出して、一緒に暮らそうと告げる。

穏やかな日々は長く続かない。父に会社の顔として担ぎ出された若い社長・峰内大介が辻に転職を持ちかけ、かつて浮世と心中を図ったのは自分だと明かして、彼女を返してほしいと言う。辻は誘いを断り、会社も辞める。不祥事で記者会見から逃げ出した峰内のもとへ浮世が向かうと、辻は彼女を行かせる。辻が職を失ったのは自分のせいだと知った浮世は、自分が彼を愛していたと気づくが、辻はすでに部屋を引き払い、姿を消していた。

四年後。浮世はひとりで暮らし、健康食品を売り歩き、娘とときどき会いながら、辻を探し続けている。脇田に二百万円を払って聞き出した住所は、火事で焼け落ちていた。その夜、彼女は公園のベンチで眠る、すべてを失った辻を見つける。部屋に連れ帰り、あなたは運命の人だと言う浮世に、辻は運命なんてないと答えて出ていく。追いかけた浮世は、自ら命を絶とうとする。辻は初めて会ったときのように、彼女を救い出す。愛している、もう一度やり直せないかと浮世は言い、ふたりは抱き合う。

主な出演

  • 森崎ウィン辻一路役

    同僚ふたりと同時に関係を持つ、人当たりのよい空っぽの会社員。すべてを失いながら、浮世を助けずにいられない。

    辻一路の物語

    辻は人当たりはいいが何にも本気になれない会社員で、職場の先輩と後輩の両方とひそかに関係を持っている。踏切で浮世を救ってから、彼女を助けることをやめられなくなる。返ってこない金を貸し、ヤクザの脇田に百二十万円を肩代わりし、ホテルに誘われても断る。細川との結婚をいったん受け入れながら、頭の中で警報が鳴っていると言って撤回し、包丁を持ち出した彼女に傷を負わされる。浮世を夫の家から解き放って一緒に暮らそうと告げ、峰内の誘いを断って会社も辞める。だが浮世が峰内のもとへ行くと、引き止めずに姿を消す。四年後、公園のベンチで眠る彼を浮世が見つける。運命なんてないと言って去ろうとするが、自ら命を絶とうとした彼女をもう一度救い、ふたりは抱き合う。

  • 土村芳葉山浮世役

    説明するかわりに謝る女性。借金と強いられた結婚に縛られ、行く先々に騒ぎを残していく。

    葉山浮世の物語

    浮世は、説明するかわりに謝る。夫の正には、払えない車の代金につけ込まれて関係を強要され、妊娠して結婚した。不倫相手と心中を図った過去もある。踏切で辻に救われると、借りた金を返さずに姿を消し、ヤクザへの借金まで彼に肩代わりさせ、土下座する夫のもとへ戻っていく。やがて辻と暮らし始めるが、記者会見から逃げた峰内を放っておけず、彼のもとへ行く。辻が自分のせいで職を失ったと知って戻ると、部屋はもう空だった。彼を愛していたと気づき、峰内に別れを告げる。四年後、健康食品を売り歩きながら、辻を探し続けている。公園のベンチで彼を見つけ、去っていく彼を追い、自ら命を絶とうとして、また救われる。愛している、もう一度やり直せないかと告げ、ふたりは抱き合う。

  • 石橋けい細川尚子役

    辻の会社の先輩で、ひそかな恋人。家族の病と借金を背負いながら、辻との結婚を望む。

  • 宇野祥平葉山正役

    浮世の夫で、自動車の営業マン。借金につけ込んで彼女を結婚に追い込み、辻を逆恨みする。

  • 忍成修吾峰内大介役

    父に会社の顔として担ぎ出された若い社長。かつて浮世と心中を図った相手で、彼女を取り戻そうとする。

  • 北村有起哉脇田真一役

    浮世の借金を取り立てるヤクザ。ふたりの前にたびたび現れ、その成り行きを面白がる。

この作品が問いかけるもの

『本気のしるし』は、男性向けの漫画でおなじみの人物像、はかなげで流されやすく、男から男へと渡り歩いては相手を破滅させる女を取り上げ、それを男の空想のままにしておかない。浮世は説明するかわりに謝り、周りの人々は彼女を嘘つき、同情を買う女、疫病神と呼ぶ。映画はそこに、別の女性の言葉を置く。押し切られて負けるのは、自分を守るのが下手なだけ。それはそんなに悪いことなのか。問われるのは、性的な強要と借金、男が女にしたことの責任を女に負わせる視線、そして優しさに見える男の退屈だ。名古屋テレビの深夜ドラマ全10話として作られ、4時間近い映画に再編集されて、カンヌ国際映画祭の「オフィシャル・セレクション2020」に選ばれた。最後にふたりが見つけたのは愛なのか、それとも死の淵だけなのか。居心地の悪い問いが残る。