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Cinema 月明かりの映画館

ナミビアの砂漠

Desert of Namibia

2024映画日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

21歳のカナが二人の男と自分の落ち着かなさの間を漂う。説明されない女性の肖像。

21歳のカナは東京の脱毛サロンで働き、世の中のほとんどすべてを退屈だと感じている。一緒に暮らす恋人のホンダは不動産の仕事をしていて、家賃を払い、料理をつくり、文句ひとつ言わない優しい男だ。その部屋で暮らしながら、カナは実家暮らしの自信家のクリエイター、ハヤシとひそかに会っている。友人のイチカから同級生が自ら命を絶ったと聞かされても、カナはほとんど上の空だ。

ホンダが出張の支度をしている夜、カナは「イチカが泣いている」と嘘をついてハヤシに会いに行く。ホンダと別れてほしいと言われ、カナはうなずく。出張から戻ったホンダは、行かないと約束していた店に上司に連れて行かれたと打ち明ける。カナは部屋を出て、ハヤシと暮らし始める。

ハヤシの荷物からエコー写真を見つけたカナは、彼が過去に誰かを妊娠させ、中絶させたのではと疑うが、何も聞かない。彼の両親や友人たちとのキャンプでは居場所がない。家では衝突が絶えない。仕事を優先して夕食を後回しにするハヤシに物を投げつけ、飛び出した先で階段から転げ落ちて大けがを負う。ハヤシが世話をする。仕事に戻ったカナを待ち伏せたホンダが帰ってきてほしいと泣きつくと、カナは出張中に中絶したと嘘をつき、泣き崩れる彼を「変な人」と笑う。

カナは仕事を辞める。ハヤシが書いている脚本が、無職の男が赤ん坊を育てる話だと知ると、エコー写真を突きつけ、相手に電話して謝れと迫る。お前には関係ないと返され、口論は取っ組み合いになる。オンライン診療の医師は双極性障害か境界性パーソナリティ障害の可能性を口にし、安いクリニックを勧める。そこでカナはカウンセラーに、許せないことをたくさんした父親のこと、それでも許すべきだと思ってしまうことを話す。隣に住む女性ひかりと、夜の森で焚き火を囲んで酒を飲み、火を飛び越える時間だけが静かだ。

最後に、またひとしきり争ったあと、ふたりは食卓につく。中国の親戚からビデオ電話がかかり、中国語がほとんどわからないカナは「わからない」という意味の言葉を繰り返す。電話を切ると、ハヤシがその意味を尋ね、同じ言葉を口にして、ふたりは笑い出す。何ひとつ解決しないまま、映画は終わる。

主な出演

  • 河合優実カナ役

    脱毛サロンで働く21歳。何もかもが退屈で感情の起伏が激しく、優しい恋人から刺激的な恋人へ移るが、どちらとも落ち着けない。

    カナの物語

    カナは、友人の悲しみも、仕事も、身の回りの世話をしてくれるホンダの優しさも、上の空でやり過ごす。嘘をついてはハヤシと夜を過ごし、彼にホンダと別れてほしいと言われるとうなずいて、鼻にピアスを開けて新しい暮らしに移る。ハヤシの荷物からエコー写真を見つけても、何も聞かない。衝突が続き、喧嘩のあと階段から転げ落ちて大けがを負い、ハヤシの介助を受ける。帰ってきてほしいと泣きつくホンダには中絶したと嘘をつき、泣き崩れる彼を笑う。仕事がなくなると、エコー写真をハヤシに突きつけてつかみかかり、オンライン診療では、自分のことを分かりたいと病名を求める。最後は、また争ったあとの食卓で、「わからない」という意味の中国語をめぐって、ハヤシと笑い合う。

  • 金子大地ハヤシ役

    自信家の若いクリエイター。ホンダと別れてほしいとカナに求めて一緒に暮らし始めるが、激しい衝突を繰り返す。

    ハヤシの物語

    実家で暮らすハヤシは、恋人がいると知りながら、カナに別れてほしいと頼む。彼女がうなずくと、ふたりで店へ行き、カナは鼻にピアスを開け、ハヤシは彼女の描いたイルカを腕に彫る。一緒に暮らし始めると、家で仕事に没頭して食事を後回しにし、衝突が始まる。喧嘩のあとカナが階段から落ちると、焦りすぎていたと謝り、世話をする。無職の男が赤ん坊を育てる脚本を書いているところへエコー写真を突きつけられると、忘れていた、中絶は強いていない、お前には関係ない、と返し、取っ組み合いの末に部屋から逃げ出す。それでもふたりの暮らしは続く。最後の食卓で、彼はカナの口にした中国語の意味を尋ね、同じ言葉を繰り返して、ふたりで笑う。

  • 寛一郎ホンダ役

    不動産の仕事をするカナの恋人。家賃を払い、食事をつくり、献身的に尽くすが、彼女を手放せない。

  • 新谷ゆづみイチカ役

    カナの友人。同級生の死に動揺している。カナは彼女の名前を嘘の口実に使う。

  • 唐田えりか遠山ひかり役

    カナが気にかける謎めいた隣人。声に出して英語を学び、ある夜、カナと焚き火を囲む。

この作品が問いかけるもの

『ナミビアの砂漠』は、好かれるように描かれることを拒む若い女性の肖像だ。カナは嘘をつき、不機嫌をまき散らし、泣き崩れる男を笑い、一緒に暮らす男に手をあげる。映画は彼女を教訓にも症例にもしない。そこに並ぶのは、ふだんは別々に語られるものだ。優しい恋人の世話の内側にひそむ静かな支配。自分が関わった妊娠を忘れてしまえる男の気楽さ。画面越しに差し出される病名が、人をわかった気にさせる危うさ。誰もが望むはずの暮らしを望めない疲れ。2024年のカンヌ国際映画祭監督週間で国際映画批評家連盟賞を受け、当時27歳の山中瑶子は、この賞を受けた史上最年少の女性となった。自分を説明できない人のそばにとどまる忍耐を求め、それでも説明をつけたくなる衝動の強さを映し出す。