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Cinema 月明かりの映画館

82年生まれ、キム・ジヨン

Kim Ji-young, Born 1982

2019映画韓国

465作品の星図のなかで見る

Moonlightの読みもの

Cinema『82年生まれ、キム・ジヨン』と、借りるしかなかった声この一篇を読む

ストーリー

結末まで書いています。

若い母親が他の女性の声で話し始める。韓国を二分し、日本でも13万部を超えた原作。

キム・ジヨンは三十代。会社員の夫チョン・デヒョンと、幼い娘と暮らしている。出産のために、好きだった広告会社の仕事を辞めた。そこでは、社内でただひとりの女性チーム長キム・ウンシルに憧れていた。今の毎日は洗濯と食事の支度と公園で、誰に聞かれても大丈夫と答える。

大丈夫ではなかった。追い詰められると、彼女はほかの女性として話しだす。秋夕の連休に夫の実家で、家族がくつろぐあいだ料理と片づけを続けたあと、ジヨンは自分の母の口調で義母に言う。この子だって誰かの娘なのだから、家に帰してやってほしいと。本人はそのことを覚えていない。怯えたデヒョンは発作の様子をひそかに撮影し、精神科医に相談する。ジヨンは夫に渡された名刺を受け取るが、診療費の高さに足を運ばない。

もう一度働きたい。赤ん坊を連れて出かけた先で、夫の稼ぎで楽をしている母親をさげすむ「ママ虫」という言葉を、見知らぬ人たちが彼女に投げつける。自分の会社を立ち上げたキム・ウンシルが復帰の道を示し、デヒョンは一年の育児休業を取ると申し出る。義母は激怒し、息子の出世を邪魔するのかとジヨンに電話で詰め寄る。兄弟を進学させるために自分の学業をあきらめた母ミスクは、娘の発作を目の当たりにして泣き崩れる。ジヨンは仕事をあきらめる。

なぜそこまで医者に行かせたがるのか。ついにそう問いただしたジヨンに、デヒョンは撮りためた映像を見せる。ジヨンは精神科に通い始め、家でも職場でも自分をすり減らしてきたものについて語りだす。発作は少しずつ遠のく。ふたたび嘲られたとき、彼女は言い返す。やがて文章を書き始め、それが雑誌に載るようになる。映画は、机に向かい自分の本を書き始めるジヨンの姿で終わる。

主な出演

  • チョン・ユミキム・ジヨン役

    元広告会社の社員で、幼い娘を育てる専業主婦。追い詰められると、ほかの女性の声で話しだす。

    キム・ジヨンの物語

    ジヨンは娘を産むために好きだった広告の仕事を辞め、誰に聞かれても大丈夫だと答えている。大丈夫ではなかった。追い詰められると母や亡き祖母として話しだし、あとでそれを覚えていない。キム・ウンシルに誘われ、デヒョンも育児休業を取ると言ってくれるが、シッターは見つからず、義母は激怒し、復職をあきらめる。赤ん坊を連れて出かければ「ママ虫」とさげすまれる。なぜ医者に行かせたがるのかとついにデヒョンを問いただすと、撮りためた映像を見せられ、動揺しながらも、まず何をすればいいのかと尋ねて治療を始める。次にさげすまれたとき、彼女は言い返す。弟に名前を刻んだ万年筆を贈られて書き始め、文章が雑誌に載り、やがて自分の本に取りかかる。

  • コン・ユチョン・デヒョン役

    ジヨンの夫で会社員。妻の異変に気づき、ひそかに記録して助けを探す。

    チョン・デヒョンの物語

    デヒョンは会社員で、妻を愛し、本人より先に異変に気づく。追い詰められると妻はほかの女性として話しだし、あとで何も覚えていない。怯えた彼はひそかにその様子を撮りため、精神科医に相談し、打ち明ける代わりに医師の名刺をそっと渡す。元上司から妻に復帰の話が来ると、出世に響くと知りながら一年の育児休業を取ると申し出るが、それを知った母はジヨンに電話で怒鳴りつける。なぜ医者に行かせたがるのかと問われて撮りためた映像を見せ、自分が君をここまで追い詰めた気がすると泣き崩れる。ジヨンは治療を始める。終わり近く、信号待ちのあいだに春の新芽が見えるかと妻に言われて、彼はまた涙ぐむ。私は大丈夫よ、とジヨンは言う。

  • キム・ミギョンミスク役

    ジヨンの母。兄弟のために学業をあきらめ、娘たちにはもっと広い人生を望んでいる。

  • コン・ミンジョンキム・ウニョン役

    ジヨンの姉。歯に衣着せず、ひとりで生きると決めていて、甘やかされた弟にも家事をさせる。

  • パク・ソンヨンキム・ウンシル役

    ジヨンの元上司で、前の会社でただひとりの女性チーム長。のちに自分の会社を立ち上げる。

この作品が問いかけるもの

『82年生まれ、キム・ジヨン』は、統計をひとりの人間に変える。主人公の名は、その世代にもっともありふれた名前のひとつだ。映画は、彼女を取り巻く性差別がどれほど日常的かを見せる。息子を甘やかす家族、女性を昇進させない職場、よその家の親のために料理をする連休、母親を寄生虫呼ばわりする見知らぬ人。母や祖母の声で話すジヨンの病は、彼女より前の女たちが自分の言葉で語れなかったことを示すかのようだ。原作の小説は韓国で百万部を超え、社会を二分した。2019年10月に映画が公開されると、主演俳優には一日で何千もの憎悪のコメントが届き、公開を止めるよう大統領に求める請願が出され、上映前からネットで低評価がつけられた。映画の応答は、その騒ぎよりずっと静かだ。気づく夫、泣く母、書き始める女。