窮鼠はチーズの夢を見る
The Cornered Mouse Dreams of Cheese
ストーリー
結末まで書いています。
断れない既婚男性を執拗に愛する、大学時代の後輩。
既婚の会社員・大伴恭一は、好意を向けられると断れない。そうして浮気を重ねている。ある日、大学の後輩・今ヶ瀬渉が七年ぶりに現れ、浮気の証拠写真を差し出す。今ヶ瀬は興信所の調査員で、恭一の妻・知佳子から浮気調査を頼まれていた。そして学生の頃からずっと、恭一を想い続けていた。口止めの条件はキス、やがてそれ以上のものになる。ところが知佳子は、自分にも恋人がいて、慰謝料を取るための証拠が欲しかったのだと打ち明け、離婚を切り出す。恭一が家を出ると、今ヶ瀬は新しい部屋に転がり込み、暮らしの中に入り込んでくる。
付き合っているわけではないと言い張る恭一は、かつての浮気相手と過ごした夜を仕事だとごまかし、今ヶ瀬が出ていくと電話をかけて呼び戻す。大学時代の恋人・夏生と再会すると、今ヶ瀬は元恋人の男を連れて食事の席に割り込み、恭一は、お前はあいつとお似合いだと突き放す。夏生は今ヶ瀬の目の前で、どちらを選ぶのかと恭一に迫る。普通の男には無理だと今ヶ瀬に告げ、夏生とホテルへ向かった恭一は、しかし彼女を抱けない。部屋に帰った彼は、初めて自分から今ヶ瀬に口づける。
幸せは、ふたりを怯えさせもする。部下で、会社の上役の娘でもある岡村たまきが恭一に相談を持ちかけるようになると、今ヶ瀬の不安が噴き出す。あなたじゃだめだ、あなたも僕じゃだめだ。夜明けの海へ車を走らせ、ふたりは別れる。恭一はたまきと婚約するが、今ヶ瀬の残した灰皿は捨てられない。やがて、自分をつける見覚えのある車に気づく。月に一度でいいからそばに置いてほしいとすがる今ヶ瀬を恭一は抱き、一緒に暮らそうと言う。翌朝、今ヶ瀬の姿はなく、灰皿はごみ箱に捨てられていた。恭一はたまきに別れを告げる。恭一の心にいるのは煙草を吸う女だと思っているたまきは、「彼女」が戻るまででいいとすがる。今ヶ瀬はほかの男に抱かれながら泣いている。恭一は灰皿をごみ箱から拾い上げて洗い、元の場所に置くと、今ヶ瀬のお気に入りだった椅子に腰かけて微笑む。戻ってくるかどうかわからない相手を、待つと決めて。
主な出演
大倉忠義大伴恭一役
好意を向けられると拒めない既婚の会社員。自分でも思いもしなかったことに、男を愛するようになる。
大伴恭一の物語
恭一は、言い寄られると断れないまま浮気を重ねてきた。証拠写真を手に現れた今ヶ瀬に口止めのキスを求められ、一度は無理だと言いながら受け入れる。妻が去って今ヶ瀬が住みつくと、付き合っているわけではないと言い張りながら、出ていかれるとすぐに電話で呼び戻す。夏生に選べと迫られ、普通の男には無理だと今ヶ瀬に告げるが、夏生を抱けずに帰り、初めて自分から今ヶ瀬に口づける。たまきをめぐって今ヶ瀬が泣き崩れ、ふたりは夜明けの海で別れる。たまきと婚約しても、灰皿は捨てられない。一緒に暮らそうと告げた翌朝、今ヶ瀬は消えている。恭一は婚約を解き、灰皿を洗って元の場所に置くと、今ヶ瀬の椅子に座って微笑む。戻らないかもしれない相手を、待つと決めて。
成田凌今ヶ瀬渉役
恭一の大学の後輩で、興信所の調査員。長年の想いを、浮気調査を足がかりに恭一へぶつける。
今ヶ瀬渉の物語
今ヶ瀬は大学時代から恭一を想い続けてきた。七年ぶりに現れたとき、彼は恭一の浮気を調べる調査員だった。口止めの条件はキス、やがてそれ以上になる。離婚した恭一の部屋に住みつき、彼の服を着て掃除をし、お気に入りの椅子で帰りを待つ。嘘をつかれて出ていっても、電話ひとつで戻ってくる。夏生との食事に元恋人を連れて割り込み、普通の男には無理だと言われると、はいと答える。その夜、恭一は初めて自分から彼に口づける。たまきに嫉妬して泣き崩れ、ふたりは海で別れる。やがてまた恭一のあとを車でつけるようになり、月に一度でいいからそばに置いてほしいとすがる。一緒に暮らそうと言われた翌朝、彼は姿を消し、ほかの男に抱かれながら泣いている。
吉田志織岡村たまき役
恭一の部下で、会社の上役の娘。彼の心に別の誰かがいると感じながら、辛抱強く想い続ける。
さとうほなみ夏生役
恭一の大学時代の恋人。再会した彼に、今ヶ瀬の目の前で、どちらを選ぶのかを迫る。
咲妃みゆ大伴知佳子役
恭一の妻。嫉妬からではなく、離婚を有利に運ぶために夫の浮気調査を依頼する。
この作品が問いかけるもの
『窮鼠はチーズの夢を見る』は、脅しから始まる男同士の恋の物語で、その出発点を最後まで手放さない。描かれるのは、拒まないことで恋愛をやり過ごしてきた男が、初めて自分が何を欲しいのかを決めなければならなくなる姿だ。答えは男で、身についた習慣はすべて「普通の男」でいろと命じる。自分の欲望をどう名づけるかという問い、両性愛、弱みを握られたまま始まる関係、そして証しのように使われる女性たち。英字紙ジャパンタイムズは、日本ではまだ数少ない、男性同士の恋を描いた商業映画のひとつとして本作に注目し、お堅いことで知られる大手アイドル事務所の俳優が、男女双方との濡れ場を演じたことにも触れた。映画は空っぽの椅子で終わる。選ぶことが相手を連れ戻してくれる保証はないと知りながら、待つことを選ぶ男の姿で。