First Love 初恋
First Love
Moonlightの読みもの
Cinema『First Love 初恋』と、人生の途中で戻ってくる感情この一篇を読むストーリー
結末まで書いています。
事故で断ち切られた初恋から20年。北海道で再びすれ違う二人。
2018年の札幌。野口也英は、会社でただひとりの女性タクシー運転手として働いている。離婚していて、十代の息子・綴は脳外科医の父親と暮らしている。並木晴道は警備員として働き、カウンセラーの有川恒美との結婚を控えている。けれど携帯電話の暗証番号は、いまも也英の誕生日のままだ。街で也英のタクシーを見かけた晴道は、無線を傍受して彼女の会社を突き止める。ようやく顔を合わせた也英は、「はじめまして」と礼儀正しく挨拶する。
物語は三つの時代を行き来する。1990年代後半、北海道の小さな町。客室乗務員を夢見る人気者の也英と、列車で見かけた日から彼女に恋をしている晴道は、雪の夜に思いを伝え合う。2001年、也英は東京の大学に進み、晴道は航空自衛隊でパイロットを目指す。東京での口論のあと、謝ろうと晴道が電話をかけたそのとき、也英は車にはねられ、ふたりで過ごした日々の記憶を失う。母は晴道からの手紙を娘に渡さない。会いに来た晴道が知らされたのは、也英が担当医と婚約し、子どもを身ごもっているという事実だった。晴道は手紙を燃やす。
夫の浮気と義母の仕打ちが也英をすり減らし、女手ひとつで育ててくれた母を悪く言われて、也英は家を出る。機内食の工場で働き、空港の清掃もするが、工場を解雇され、息子を元夫に託すしかなくなる。晴道はイラクへ物資輸送に赴き、帰国後のカウンセリングで恒美と出会って恋人になる。のちに腰を痛め、空を飛ぶ仕事を離れる。
現在。理由もわからないまま、也英は再び晴道に惹かれ、ふたりは口づけを交わす。恒美は晴道を送り出す。海外の航空会社に挑戦するため日本を離れると告げる晴道に、也英は好きだと打ち明け、そのあと、彼の好物だったナポリタンをひとり泣きながら食べる。晴道が綴に譲ったポータブルプレーヤーで宇多田ヒカルのデビューアルバムの表題曲を聴いたとき、也英の記憶はすべて戻る。十代のふたりが埋めたタイムカプセルを掘り出すが、新型コロナの流行で晴道を追うことはかなわない。三年後、一枚の写真にアイスランドの晴道が写り込んでいた。也英はタイムカプセルの手紙を携えて彼の地へ飛び、客を乗せて飛ぶ晴道を飛行場で見つける。数か月後、操縦席で笑う晴道と、客室乗務員として働く也英の姿がある。
主な出演
満島ひかり野口也英役
札幌でタクシーを運転する女性。事故で記憶の一部を失い、初恋の記憶もそこに消えている。
野口也英の物語
1990年代後半、北海道の小さな町の人気者だった也英は、客室乗務員になる夢を抱き、雪の夜に晴道と思いを伝え合う。東京の大学に進んだあと、彼との口論の直後に車にはねられ、ふたりの年月の記憶を失う。担当医と結婚して息子の綴を産むが、夫の浮気と、母を見下す義母に耐えかねて家を出る。工場を解雇され、息子を元夫に託す。札幌でタクシーを運転する彼女は、晴道に「はじめまして」と挨拶しながら、理由もわからず惹かれていく。日本を離れると告げられて、好きだと打ち明ける。古いプレーヤーで聴いた一曲が、すべての記憶を連れ戻す。コロナ禍で彼を追えないまま三年が過ぎ、一枚の写真を頼りにアイスランドへ飛んで彼を見つける。そして客室乗務員として働き始める。
佐藤健並木晴道役
航空自衛隊の元パイロットで、いまは警備員。也英への思いを抱き続けている。
並木晴道の物語
晴道は列車で見かけた也英にひと目で恋をし、同じ高校に進む。雪の夜、ふたりは思いを伝え合う。ジェット機がかっこいいと言う彼女のために、航空自衛隊で空を目指す。也英が事故で記憶を失うと、彼女の母は手紙を渡さず、婚約と妊娠を告げる。晴道は手紙を燃やす。輸送機でイラクへ赴き、帰国後のカウンセリングで恒美と出会って恋人になる。腰を痛めて空を離れ、札幌で警備員として働くいまも、暗証番号は也英の誕生日のままだ。タクシー無線で彼女を見つけても、ふたりの過去は明かさない。やがてふたりは口づけを交わす。恒美に送り出され、海外で飛ぶために日本を離れる。三年後、アイスランドで也英と再会し、のちにふたりは操縦士と客室乗務員として一緒に働いている。
八木莉可子野口也英(少女期)役
1990年代後半の也英。客室乗務員になる夢を抱く、北海道の高校生。
木戸大聖並木晴道(少年期)役
少年期の晴道。列車で見かけた也英にひと目で恋をし、同じ高校に進む。
夏帆有川恒美役
イラクから戻った晴道を担当したカウンセラー。いまは彼の婚約者。
荒木飛羽向坂綴役
也英の息子。父と暮らしながら音楽を作り、ダンサーの詩に恋をする。
この作品が問いかけるもの
このドラマは、一曲の流行歌を小説のように真剣に受け止めた。宇多田ヒカルが1999年に出したデビューアルバムの表題曲と、2018年の「初恋」。この二曲が、題名と物語の時間の幅を与えた。宇多田と同学年の寒竹ゆり監督は、二つの歌のあいだに流れた二十年を、也英と晴道の二十年として描いたと語っている。けれど恋物語の下にあるものは、恋そのものより重い。一瞬で失われる記憶。娘が何を知ってよいかを決めてしまう母。仕事を失い、息子を手放すしかなかった女性。海外の批評には、理想化されすぎているという指摘もあった。それでも、最終話のあとに問いは残る。愛したことを覚えていないとき、その愛はまだ自分のものなのか。