さっちゃん、僕は。
Dear Sa-chan
ストーリー
結末まで書いています。
上京した大学生が遠距離の恋人と隣に住む人妻の間で揺れる。
18歳の片桐京介は、大学進学のために北海道から上京した。地元には付き合って4年になる彼女・小山内早智がいるが、ふたりに体の関係はなく、関係はどこか単調になり、京介は彼女の手紙にもろくに返事を書かない。拾った落とし物を届けに隣の部屋を訪ねた京介は、人妻の国木田紫乃と出会い、一夜をともにする。それからは、薄い壁越しのノックひとつで彼は隣へ向かうようになる。親の愛を十分に受けずに育った京介には、愛が何なのかわからない。ふたりの女性それぞれに、都合のいい顔を見せていく。
早智は内緒で上京し、京介の部屋の前で紫乃と鉢合わせる。大学の友人・美鈴は京介の首元のキスマークに気づき、彼女を傷つけるなと釘を刺す。階段から落ちて入院した京介は、目覚めた病室で付き添う早智に浮気を打ち明け、別れを告げる。地元に戻った早智は、大学の友人・伊勢埼真に胸の内を明かす。だが、忘れていったカーディガンを返しに来た京介に、早智はやり直したいとすがる。ほかの人と寝てもいい、最後に自分のところへ戻ってくれればいい、と。ふたりは初めて結ばれ、早智のかけがえのなさに気づいた京介は、紫乃に関係の終わりを告げる。
しかし紫乃の夫・要は、監視カメラですべてを見ていた。証拠の音声を聞かせて京介に土下座をさせ、200万円の慰謝料を請求し、紫乃には部屋を引き払わせる。京介と早智が喫茶店でデートをしていると、要と紫乃が同じ席に座ってくる。翌日、早智は隣室を訪ねて紫乃を責め、その夜、京介に別れを告げる。許してはいけなかった、と。京介は支払いのためにアルバイトに明け暮れる。示談書の存在を知った紫乃は自分が払うと申し出るが、京介は断る。夫に監視されていたことを知った紫乃は要を問い詰め、夫婦は初めて本音をぶつけ合う。
早智から届いた最後の手紙には、彩り豊かな毎日を送っていること、京介の幸せを祈っていることが綴られていた。京介は毎月2万円を4年かけて要に手渡しで払い続け、大学を卒業して出版社の営業職に就き、ついに払い終える。要は、夫婦で向き合うきっかけになったと礼を言う。それから8年。前に進めずにいる京介は、街で早智の姿を見かける。お腹は大きく、隣では伊勢埼が幸せそうに笑っていた。引っ越した先のマンションで、京介は「なっちゃん」と名乗る小学生の少女に懐かれる。彼女は紫乃と要の娘だった。最後の場面、壁の向こうから少女のノックが響き、京介はそれに応えようと手を上げる。
主な出演
木村慧人片桐京介役
北海道から上京した18歳の大学生。愛を知らずに育ち、隣の人妻と関係を持って恋人を裏切る。
片桐京介の物語
上京した京介には、地元に体の関係のないまま4年付き合う早智がいるが、届く手紙にもろくに返事をしない。隣室の紫乃と関係を持ち、壁越しのノックに応えて通うようになる。階段から落ちて入院すると、病室で早智に浮気を打ち明けて別れを告げ、正直は優しさではないと美鈴に責められる。ほかの人と寝てもいいから最後は戻ってきてという早智と初めて結ばれ、紫乃とは別れる。だが要に録音を聞かされて土下座し、200万円を請求され、早智からも別れを告げられる。月2万円を4年かけて手渡しで払い、出版社の営業職に就く。8年後、身ごもった早智と伊勢埼の姿を見かけ、引っ越した部屋で、紫乃の娘が叩く壁のノックに手を上げる。
中山ひなの小山内早智役
北海道で京介を待つ、交際4年の恋人。手紙を送り続け、一度は裏切りを許すが、やがて別れを選ぶ。
小山内早智の物語
早智は内緒で上京して紫乃と鉢合わせ、やがて入院した京介の病室で、浮気の告白と別れを聞かされる。地元では大学の友人・伊勢埼に胸の内を明かす。それでもカーディガンを返しに来た京介の袖をつかみ、ほかの人と寝てもいい、最後に戻ってくれればいい、愛する気持ちを教えてあげると言って、やり直しを願う。ふたりは初めて結ばれる。だが喫茶店で要と紫乃に相席されたあと、隣室の紫乃を訪ね、私には京くんしかいないと泣いて、最低だと言い放つ。その夜、許してはいけなかったと京介に別れを告げる。最後の手紙に、彩り豊かな毎日を送っていると書く。8年後、彼女のお腹は大きく、隣には伊勢埼がいる。
石川恋国木田紫乃役
隣の部屋の人妻。結婚生活に寂しさを抱え、壁越しのノックで京介を呼び、関係を始める。
国木田紫乃の物語
紫乃は夫・要と暮らす家とは別に部屋を借りていて、その隣に京介が住んでいる。落とし物を届けに来た京介と一夜をともにし、関係が続いていく。要に問われると、京介に恋愛感情はない、ただの暇つぶしで、誘ったのは自分だと答え、部屋を引き払うことを受け入れる。訪ねてきた早智に最低だと言われ、ただ謝る。示談書の存在を知ると自分が払うと京介に申し出て、断られる。夫に監視されていたと知って要を問い詰め、夫の過去を聞き、自分も抱えてきた不満と不安をぶつける。8年後、ふたりの間には娘がいる。何も償っていないと謝る紫乃を、要は昔のことだと笑い飛ばす。
桜田通国木田要役
紫乃の夫。カメラで妻を監視しており、京介に不倫の代償を払わせる。
樋口日奈須川美鈴役
京介の大学の友人。彼の嘘を見抜いて叱り、落ち込んだときには手を差し伸べる。
田中偉登伊勢埼真役
早智の大学の友人。彼女の異変に気づき、そばに寄り添い続ける。
この作品が問いかけるもの
『さっちゃん、僕は。』は、傷つける側の内側から不倫を描く。制作側自身が、主人公にはまったく共感できないと認めているほどだ。京介は誘惑者ではない。十分な愛を受けずに育ち、自分の気持ちがわからず、打ち明けることを誠実さと取り違える若者だ。作品は、その代償を周りの人々が払わされるさまを見逃さない。失うよりはと裏切りを受け入れ、やがて許してはいけなかったと気づく恋人。夫にカメラで見張られる結婚のなかで、寂しさを抱えた妻。代償は示談書と4年間の月々の支払いという形で目に見えるものになるが、払えばすべて済むという安易な教訓に作品は着地しない。早智は自分の人生を見つける。京介は新しい部屋にひとり残され、最後の壁越しのノックは、理解しないままのことを人は繰り返すのかと問いかける。