昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜
Hirugao: Love Affairs in the Afternoon
Moonlightの読みもの
Cinema『昼顔』と、予定の入っていない唯一の時間この一篇を読むストーリー
結末まで書いています。
平日午後3時の恋人たち。“昼顔”を昼下がりの不倫を指す言葉として広めたドラマ。2017年に映画版。
31歳の笹本紗和は、横浜の小さなマンションで夫の俊介と暮らし、家を買うためにスーパーでパートをしている。夫婦仲は穏やかだが、セックスレスが続き、姑からは子どもができないことを責められている。ある午後、紗和は出来心で口紅を万引きしてしまい、それを近所に住む裕福で美しい滝川利佳子に見られる。平日の昼間に出会い系サイトで男と会っていた利佳子は、紗和をアリバイに使い、ふたりは奇妙な友人になる。高校生が起こした車上荒らしをきっかけに、紗和はその担任で生物教師の北野裕一郎と出会う。北野の妻・乃里子は研究者として名を上げつつあった。紗和は自分を戒めながらも、北野と関係を持つ。利佳子は売れない画家の加藤修に本気で恋をし、家を出てホステスとして彼を支える。
不倫に気づいた乃里子は、妊娠したと嘘をつく。紗和と北野は逃避行に出るが、家族に居場所を突き止められ、連れ戻される。弁護士を交えた話し合いの席で、北野は遊びだったと言い、紗和も暇つぶしだったと返し、ふたりは二度と会わないと誓約書に判を押す。それでも北野への思いを止められない紗和は、法の力で止めてもらおうと自宅に火をつける。俊介は警察に失火だったと証言し、そのうえで離婚を切り出す。加藤は、利佳子に執着する元の不倫相手との殴り合いで利き腕が使えなくなり、利佳子を娘たちのもとへ帰す。紗和がひとりで家を出た日、北野夫妻を乗せた引っ越しのトラックが彼女のそばを通り過ぎるが、紗和はそれに気づかない。
2017年の映画は、その3年後を描く。離婚した紗和は、誰も知る人のいない海辺の町のレストランで働いていて、ホタルについての講演会のチラシに北野の名前を見つける。ふたりは再会し、しばらくは誓約を守って会うだけの日々を続けるが、やがて一緒に暮らし始め、乃里子も離婚に応じる。離婚届を渡したその日、乃里子は北野を駅まで送る車の中で、先日のけがは自ら命を絶とうとした結果だったと打ち明け、車をガードレールに突っ込ませる。北野は死に、生き残った乃里子は紗和に、あなたを一生恨むと告げる。悲しみの中で紗和は自ら命を絶つ寸前まで追い詰められるが、思いとどまり、やがて北野の子を身ごもっていることを知る。何年ものち、森で遊ぶ子どもたちが、北野が紗和のために隠しておいた指輪を見つける。
主な出演
上戸彩笹本紗和役
セックスレスの結婚生活を送るスーパーのパート主婦。許されないと知りながら、恋に落ちていく。
笹本紗和の物語
紗和は出来心で口紅を万引きし、それを見ていた利佳子にアリバイに使われて、奇妙な友人になる。高校生の車上荒らしをきっかけにその担任の北野と出会い、自分を戒めながらも恋人になる。逃避行の末に連れ戻され、暇つぶしだったと言って、二度と会わないという誓約書に判を押す。それでも思いを止められず、法に止めてもらおうと自宅に火をつけ、夫の俊介に離婚を切り出される。映画では3年後、海辺の町で働く紗和が、ホタルの講演会で北野と再会する。しばらくは誓約を守り、やがて一緒に暮らし始め、乃里子も離婚に応じる。だが乃里子の運転する車がガードレールに突っ込み、北野は死ぬ。紗和は自ら命を絶つ寸前で思いとどまり、北野の子を身ごもっていることを知る。
斎藤工北野裕一郎役
朴訥な高校の生物教師。研究者として成功した妻を持ちながら、紗和と愛し合うようになる。
北野裕一郎の物語
北野は、研究者として名を上げていく妻・乃里子に引け目を感じている。教え子の車上荒らしをきっかけに紗和と出会い、再婚まで考えるようになる。乃里子は妊娠したと偽り、ふたりは逃避行の末に連れ戻され、弁護士の前で遊びだったと言って誓約書に判を押す。3年後、海辺の町でホタルの講演をした彼は、客席に紗和を見つける。誓約を守り、触れ合わずに森で会う日々を乃里子に見つかると、今度こそちゃんとすると紗和に誓い、一緒に暮らし始め、乃里子に離婚を承諾させる。ホタルを見に行く森に、紗和のための指輪を隠す。離婚届を受け取った日、駅まで送る車の中で乃里子は、あのけがは自ら命を絶とうとした結果だったと打ち明け、車をガードレールに突っ込ませる。北野は死ぬ。
吉瀬美智子滝川利佳子役
裕福で美しい妻であり母。平日の昼に恋人を持つことを繰り返すが、そのひとりに本気で恋をする。
滝川利佳子の物語
利佳子は新築の家と出版社の編集長の夫、名門私立に通うふたりの娘を持ち、出会い系サイトでは「昼顔」と名乗って男と会っている。不倫相手と乗っていた車が荒らされると、居合わせた紗和の腕をつかんでアリバイに仕立て、のちに、結婚は平穏と引き換えに情熱を失うものだと彼女に語る。その男とは縁を切るが、嘘のプロフィールでホテルの部屋に呼び出されて襲われかけ、加藤に助けられる。自宅のパーティーで自分の絵を描いた貧しい画家の加藤は、彼女にとって遊びでは済まない相手になり、利佳子は家を出てホステスとして彼を支える。だが元の不倫相手との殴り合いで加藤は利き腕が使えなくなり、彼女を娘たちのもとへ帰す。利佳子は家族のもとへ戻る。
北村一輝加藤修役
誇り高く貧しい画家。利佳子を描き、彼女が遊びにできなかった唯一の相手になる。
伊藤歩北野乃里子役
北野の妻で、優秀な分子生物学の研究者。家事は苦手で、夫をつなぎとめるためなら何でもする。
鈴木浩介笹本俊介役
紗和の夫で家具メーカーの会社員。妻を愛してはいるが、夫婦の営みはない。
この作品が問いかけるもの
『昼顔』は、ありふれた結婚の内側にある孤独を描く。優しいのに妻に触れない夫。子どもができないことを嫁のせいにする姑。誰もがうらやむのに、誰にも見られていない裕福な妻。題名は、同じ局の情報番組が社会現象として特集した「平日昼顔妻」という言葉から来ていて、その言葉は、昼の顔を持つ妻を描いた映画『昼顔』にさかのぼる。ドラマはこの言葉を広く知らしめ、「昼顔」は2014年の流行語大賞の候補にも入った。作品は欲望を本物として描きながら、それが代価なしで手に入るふりはしない。すべての不倫が断ち切られる最終回には、誠実な結末だという声と、腰が引けたという声が分かれた。映画はその答えを、ひとつの死で示した。残るのは紗和の最後の独白だ。神様ごめんなさい、私はまたいつか、あなたを怒らせるかもしれません。