夫のちんぽが入らない
My Husband Won't Fit
Moonlightの読みもの
Books『夫のちんぽが入らない』が問い直す、「できる夫婦」が普通なのかということこの一篇を読むストーリー
結末まで書いています。
挿入ができない夫婦の物語。テレビでは口にしづらい題名の私小説を映像化。
両親のけんかが絶えず、ひと言多い母のいる家を離れて、久美子は大学進学を機にアパートでひとり暮らしを始める。引っ越しの夜、同じアパートに住む一つ上の先輩・研一がノックもせずに入ってきて、頼んでもいない手伝いを始める。その屈託のなさに、久美子は惹かれていく。けれど初めて体を重ねようとした夜、研一のものはどうしても入らない。無理をすれば出血するだけだった。ふたりは試し続け、雑誌やネットで同じ悩みを持つ人を探すが、誰も見つからない。それでも一緒にいたいという思いで、ふたりは結婚する。久美子は田舎の小学校で教師として働き始める。
しばらくは、それで満ち足りていた。やがて久美子は研一のポケットから風俗店のポイントカードを見つけ、我慢していたのは自分だけだったと知る。転任先の学校では学級崩壊が起き、家庭に問題を抱える児童もいる。当たり前のことができない自分は「不良品」なのだ、何もかもうまくいかないのは「入らない」せいなのだと思い詰めた久美子は、ネットの掲示板に悩みを書き込み、そこで知り合った男たちと会うようになる。親身に話を聞いてくれるミッキー、変わった性癖を持つが仕事の悩みを打ち明けられるアリハラ。久美子は彼らと関係を持つ。研一も風俗通いをやめられない。ふたりとも、何も言わない。久美子は心を病み、教師を辞めて閉じこもる。村の若者の筆下ろしをしていたという親戚が亡くなると、久美子はそのせいで入らないのではないかと考え、ふたりはもう一度試してみる。
ついにすべてが明るみに出る。研一が初めての男ではなかったこと、週末ごとに彼がどこへ行っているかを知っていることを、久美子はぶちまけ、研一は家を飛び出す。それでも、ようやく向き合って交わした話し合いは、結婚して初めての本当の会話だった。ふたりは子どもをつくらないと決める。そして、子どもができないのは娘の体のせいだと思い込んでいる久美子の母をはじめ、双方の親に本当の理由を打ち明ける。入らないまま、子どももいないまま、それでもふたりで生きていく。久美子と研一は、その道を選ぶ。
主な出演
石橋菜津美渡辺(山本)久美子役
愛する人と結婚しながら夫と体を重ねることができず、自分を「不良品」だと思い詰めていく女性。
渡辺(山本)久美子の物語
けんかの絶えない両親の家を離れた久美子は、屈託のない研一に惹かれていく。けれど彼のものは入らない。同じ悩みの人はどこにも見つからず、それでもふたりは結婚し、久美子は小学校の教師になる。やがて研一のポケットから風俗店のポイントカードが出てきて、我慢していたのは自分だけだったと知る。転任先では学級崩壊が起きる。何もかもうまくいかないのは入らないせいだと思い詰め、ネットの掲示板で知り合った男たちと会い、関係を持つ。教師を辞めて閉じこもったあと、聖母マリアのようだと言う研一に、処女だと思っていたのかと問い、互いの秘密が明るみに出る。初めて本音で話し合ったふたりは、子どもをつくらずにふたりで生きていくと決め、親たちにも本当の理由を伝える。
中村蒼渡辺研一役
大学の一つ上の先輩で、久美子の夫。屈託のない人柄だが、妻を幸せにできないことに苦しむ。
渡辺研一の物語
研一は、引っ越してきた久美子の部屋にノックもせずに入り込み、荷ほどきを手伝う。入らないとわかっても、それでもいいよと笑い、ふたりは結婚する。やがて週末ごとに、実家に帰ると言っては風俗に通うようになる。久美子の笑顔が作り笑いになったことに気づいても、何に悩んでいるのかは聞けない。親戚の死をきっかけにもう一度試みても、やはり入らない。久美子を聖母マリアのようだと言い、処女だと思っていたのかと問い返されて、ふたりは隠してきたことを打ち明け合い、研一は家を飛び出す。それでも結婚して初めての本当の話し合いの末、子どもをつくらないと決め、双方の親に本当の理由を伝えて、久美子とふたりで生きていくことを選ぶ。
尾野真千子寺田朋美役
久美子が受け持つ児童の母親。転任先の学校で、久美子が追い詰められていく時期に登場する。
筒井真理子山本冴子役
久美子の母。いつもひと言多く、娘が子どもを産めないのだと思い込む。
松尾諭ミッキー役
久美子がネットの掲示板で知り合う男性。親身に話を聞き、最初の浮気相手になる。
落合モトキアリハラ役
心を病んだ久美子がネットで知り合う、変わった性癖を持つ男性。仕事の悩みを打ち明けられる。
この作品が問いかけるもの
『夫のちんぽが入らない』は、ほとんど語られることのない問題を正面から扱う。挿入ができない夫婦と、そのまわりに育っていく沈黙だ。こだまの自伝的な作品は同人誌に寄せた短いエッセイから始まり、単行本が『朝日新聞』に広告を出したときには、「書名は書店でお確かめください」と記された。タナダユキが監督したドラマは、その沈黙がもたらすものを追っていく。恥、自分は不良品だという思い、隠れた浮気とお金で買う性、子どものいない娘を「欠けている」と思い込む母、そして心の病。作品はありがちな解決を選ばない。何も治らず、子どもも生まれず、結婚が続くのは、ふたりがようやく話し合ったからだ。残るのは、多くの夫婦が口にしない問いだ。誰もが必要だと思い込んでいるものがなくても、結婚は何でできているのか。