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Cinema 月明かりの映画館

金魚妻

Fishbowl Wives

2022ドラマ・シリーズ日本

465作品の星図のなかで見る

Moonlightの読みもの

Cinema『金魚妻』が描く「満たされなさ」──結婚の中で、もう一度自分の感情に気づくということこの一篇を読む

Journalでの言及

Journalセックスレスは区分であって、判決ではない。

ストーリー

結末まで書いています。

高級タワーマンションに暮らす6人の妻たちの不倫。ガラス越しに飼われる美しさの比喩。

下町を見下ろすタワーマンションの最上階に暮らす平賀さくらは、夫の卓弥とともに美容サロンを経営している。ロビーから見れば、誰もがうらやむ暮らしだ。だが家の中では、卓弥の暴力と侮蔑、そして女性関係が続いている。美容師だったさくらは、ある出来事からハサミを握れなくなり、卓弥はそのことと子どもがいないことを責めて「不良品」と罵る。同じマンションの風水師に金魚を飼うよう勧められたさくらは、下町の金魚屋で若い店主・豊田春斗と出会う。任されるはずだった新店舗を夫の愛人に与えられ、頬を打たれた雨の夜、家を飛び出したさくらを、傘を持った春斗が見つける。彼女はそのまま彼の部屋に身を寄せ、ふたりは恋人になる。

物語は回ごとに、同じタワーの別の部屋を開いていく。子どもを望んでも夫に拒まれ続け、元恋人と関係を持つ妻。部下を家に招いて自分の嫉妬をあおる夫と、やがてその部下に惹かれていく妻。仕事もランニングもやめて夫の歩幅に合わせてきた新妻。夫の浮気のあと夫の記憶だけを失い、見知らぬ男だと思った相手と関係を結ぶが、その男こそ夫だった妻。化粧の下のあざを隠し、新居を直しに来た大工と関係を持つ妻。風水師は彼女たちに、運命の相手がいると説いてまわる。

卓弥は春斗の家族に不倫を告げ、群馬でひとり暮らしを始めたさくらの居場所まで突き止めて暴力をふるう。駆けつけた春斗に救われ、さくらは離婚を決意する。家庭裁判所で、店を次々に失った卓弥は、妻がハサミを握れなくなったとき安堵した、これで自分から離れられないと思った、と打ち明け、離婚に応じる。さくらは自分が築いてきた店を立て直すために春斗と別れ、そのあとで離婚して自分のサロンを開く。ほかの妻たちの物語も、始まりと同じようにばらばらに閉じる。どちらの子かわからない妊娠を笑って話す妻、夫と別れて部下と再婚する妻、ふたたび並んで走る夫婦、もう一度一緒に暮らし始めた家族、続いていく大工との関係。二年後の花火の夜、さくらは、いつか一緒に花火を見ようと春斗と約束した鎌倉の浜辺に立つ。春斗も車でそこへ向かっている。ふたりが会う場面は描かれないまま、物語は終わる。

主な出演

  • 篠原涼子平賀さくら役

    ハサミを握れなくなった元美容師。最上階の部屋から、夫の支配の下で夫婦のサロン経営を担っている。

    平賀さくらの物語

    さくらは、タワーマンションの最上階で誰もが羨む暮らしを送りながら、そこに安らぎはない。夫の卓弥は暴力と暴言で彼女を支配し、ある出来事でハサミを握れなくなり美容師の仕事を失った彼女を、欠陥品と呼ぶ。約束されていたサロンを夫が愛人に任せ、頬を打たれた夜、雨の中に飛び出した彼女は金魚屋の若い店主・春斗の部屋に行き、二人は恋人になる。群馬でひとり暮らしを始めた彼女を卓弥が見つけ出して襲ったとき、さくらは離婚を決める。自分が築いたサロンを立て直すために春斗と別れ、離婚して自分の店を開く。2年後の花火大会の夜、彼女はかつて春斗と花火を見ようと約束した鎌倉の海辺に立っている。

  • 岩田剛典豊田春斗役

    タワーの足もとの下町で金魚屋を営む青年。家業の会社から離れて暮らし、傷ついたさくらを受け入れる。

    豊田春斗の物語

    春斗は、タワーマンションのふもとの下町で小さな金魚屋を営む青年。風水師に勧められて金魚を買いに来たさくらと出会い、彼女が雨の中に飛び出した夜、傘を差し出して自分の部屋に連れて帰る。二人は恋人になり、彼は花火のよく見える鎌倉の海辺を彼女に教えて、夏になったら一緒に見ようと約束する。卓弥が不倫を彼の家族に告げたあと、群馬で卓弥がさくらを襲う場に駆けつける。やがてさくらは、店を立て直すために彼のもとを去る。2年後の花火大会の夜、今年も行くのかと妹に聞かれた彼は、鎌倉へ車を走らせる。二人が会う場面は描かれない。

  • 安藤政信平賀卓弥役

    さくらの夫で、美容サロンを率いる経営者。暴力と侮蔑で妻をつなぎとめ、ほかの女性とも関係を持つ。

    平賀卓弥の物語

    卓弥は美容サロンを経営する社長。タワーマンションの最上階で完璧な夫婦を演じながら、家では暴力と暴言で妻を支配し、ほかの女性たちとも関係を持っている。さくらに任せるはずだったサロンを愛人に与え、雨の夜に家を飛び出す妻の頬を打つ。妻の不倫を知ると春斗の家族に告げ、群馬まで彼女を追って襲いかかる。家庭裁判所で、経営の傾いたサロンを抱えた彼は、妻がハサミを握れなくなったとき、これで自分から離れられないと安堵したと打ち明け、離婚に応じる。

  • 長谷川京子箱崎ゆり葉役

    物語の冒頭で卓弥と関係を持つ華やかな住人。のちに、義母との同居と、化粧で隠したあざが明かされる。

  • 松本若菜田口慈子役

    夫の浮気をきっかけに夫の記憶を失った母親。惹かれた見知らぬ男は、その夫だった。

この作品が問いかけるもの

不倫ドラマの多くは、ふたりが見つかるかどうかを問う。『金魚妻』が問うのは、不倫が始まる前の結婚がどんなものだったか、だ。さくらの夫は殴り、見下し、仕事を支配する。作品はその支配を、彼女の不倫を言い訳するための設定ではなく、物語全体の土台として描いている。ほかの回は、妻が結婚の外へ踏み出す別の理由を並べていく。セックスレス、夫の空想の押しつけ、相手の歩幅に合わせきった暮らし、人の記憶まで消してしまうほどの喪失。官能的な場面の多い作品で、それだけを目当てに観ることもできる。けれど題名の比喩はもっと鋭い。金魚は鉢から出られないからこそ愛でられる。ロビーから見て完璧な結婚ほど、出ていくのは難しい。