1122 いいふうふ
1122: For a Happy Marriage
Journalでの言及
Journal書いた人が、望んでいる人とは限らない。ストーリー
結末まで書いています。
妻が公認した“月に一度の不倫”。欲望への正直さを設計に組み込んだ夫婦。
ウェブデザイナーの相原一子と夫の二也は、結婚7年目。何でも話せる仲のいい夫婦だが、セックスだけはもうない。一子が夫を拒んだことから始まったレスで、夫婦円満のためにふたりは「婚外恋愛許可制」というルールを決めた。不器用で優しい二也には、生け花教室で知り合った人妻で子を持つ柏木美月という公認の恋人がいる。結婚記念日の旅行の夜、一子は久しぶりに自分から夫を誘うが、「好きな人がいる」と断られてしまう。事情を知る友人の恵は、一子にも同じ権利があると背中を押す。
母と折り合いの悪い一子は、幼い頃の父の暴力を二也に打ち明ける。美月は、ふたりの秘密だと思っていた関係が妻公認だったと知って激怒し、息子と三人で暮らそうと二也に迫る。二也は、自分の気持ちがただの欲望だったのではと愕然とする。一子は女性用風俗を訪れ、若いセラピストの礼に心を奪われていく。美月の夫・志朗のシンガポール転勤が決まると、二也はルールを破って美月と最後の夜を過ごし、一子もまた礼を予約する。礼のきめ細やかな手に満たされ、一子は思わず涙を流す。友達に戻りたいと告げた二也に、美月は激高して襲いかかる。夫婦は婚外恋愛のルールを解消する。美月は、自分の不倫からも息子の療育からも目をそらしてきた志朗に、ともに変わるべきだと迫る。
夫婦に戻るのは、壊すより難しい。二也は美月の言葉に縛られ、一子は礼と比べてしまう。一子が礼といるところを見た二也は、妻の風俗通いを知って軽蔑の目を向け、家を出る。妊娠がわかった美月は志朗の子として産むと決め、初めてひとりで息子の世話をした志朗は育児の過酷さを知る。風邪で寝込んだ一子のもとには二也が駆けつけ、一子は礼からの真剣な交際の申し出を断る。
ふたりは子どもを持つと決め、不妊治療を始める。だが体外受精は実を結ばず、一子は余裕を失っていく。子どもがいなくてもふたりなら幸せだと寄り添う二也との未来を、一子はもう描けなかった。ふたりは離婚する。やがて実家で冷たくなった母を見つけた一子が、真っ先に知らせたのは二也だった。ふたりの部屋は売りに出される。三か月後、買い手が現れた日、一子は「ここは売れない」と泣き出し、二也と一緒にいたいと打ち明ける。二也も泣きじゃくる。ふたりは離婚したまま、また同じ家で暮らし始める。「ただいま」「おかえり」。二也は一子に、くちなしの花束を手渡す。
主な出演
高畑充希相原一子役
結婚7年目のウェブデザイナー。夫を拒んだことからレスになり、夫婦円満のために夫の恋愛を公認している。
相原一子の物語
一子が夫の恋愛に課したルールは、嘘はつかない、家に持ち込まない、デートは第三木曜日。結婚記念日の夜、自分から夫を求めて断られる。女性用風俗で出会った礼の手に満たされて涙を流し、恋人に傷を負わされて帰った夫には、あなたに恋人がいるのが嫌だったと泣いて謝る。ふたりはルールを解消するが、一子は礼と比べてしまい、礼のことを知った二也は家を出ていく。礼の告白には、一緒に生きていきたいのは夫だと答える。実らない不妊治療に疲れ、夫婦でいることがもうきついと打ち明けて、ふたりは離婚する。母が亡くなったとき、真っ先に知らせたのは二也だった。部屋を見に買い手が来た日、ここは売れないと泣き出し、ふたりは離婚したまま、また一緒に暮らし始める。
岡田将生相原二也役
文具メーカーに勤める、不器用で優しい一子の夫。妻公認の恋人がいる。
相原二也の物語
二也は一子に拒まれてひどく落ち込んだが、生花教室に通い始めて明るさを取り戻し、美月と恋に落ちた。結婚記念日の夜には、その恋を理由に妻を拒む。だが美月に息子と三人で暮らそうと迫られると、自分の気持ちはただの欲望だったのかと愕然とし、彼女の夫の転勤が決まると、ほっとしてしまう。誕生日に美月と会い、友達に戻りたいと告げて、激高した彼女に襲われる。一子にすべてを打ち明け、ふたりで泣く。その後は美月の言葉が消えずに妻と体を重ねられず、礼の存在を知ると、軽蔑の目を向けて家を出る。寝込んだ一子のもとに駆けつけ、不妊治療をともにするが、ふたりは離婚する。一子の母の葬儀を取り仕切り、部屋を売れないと泣く一子と一緒に泣き、くちなしの花束を手渡す。
西野七瀬柏木美月役
夫の無関心に悩む専業主婦。生け花教室で出会った二也に救いを求める。
柏木美月の物語
美月は、発達に遅れのある息子の育児をほとんどひとりで抱え、夫の志朗は育児を妻の務めと考えている。二也との関係が妻公認だったと知って激怒し、やがて息子と三人で暮らそうと迫る。不倫に気づいていた志朗はシンガポールへの転勤を決め、母親として胸を張れるようにと告げる。二也の誕生日、友達に戻りたいと言われた美月は、激高して彼に襲いかかる。志朗にはすべてを打ち明け、私を人間として見て、互いに変わらなければ一緒にはいられないと迫る。志朗の子を身ごもると産みたいと願い、初めてひとりで息子を世話した志朗は育児の過酷さを知る。美月も息子に八つ当たりしてきたことを打ち明け、夫婦はやり直す。
高良健吾柏木志朗役
美月の夫。不器用な仕事人間で、妻の不倫からも息子の療育からも目をそらしてきた。
吉野北人池端礼役
女性用風俗店の若いセラピスト。その優しさが、一子に失っていたものを取り戻させる。
この作品が問いかけるもの
『1122 いいふうふ』は、セックスレスを性の問題ではなく、言葉の問題として描く。原作者の渡辺ペコは、両性の平等と協力を婚姻の土台と定めた日本国憲法第24条を作品の冒頭に置き、問題はレスそのものより、それについて相手と話せないことだと語っている。作品は、現代の夫婦が手を伸ばしうる抜け道を順に試していく。公認の不倫、女性用風俗、不妊治療。どれにも代償があり、それを払うのは選んだ本人とは限らない。原作の連載時、読者は夫の公認不倫を非難し、妻の風俗通いには声援を送ったという。作品はその二重の基準をそっと照らし出す。最も大胆なのは結末だ。離婚したふたりが、それでも一緒に暮らすことを選ぶ。結婚は愛の証明ではなく、愛がとりうる形のひとつにすぎないとでもいうように。