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Cinema 月明かりの映画館

スイートリトルライズ

Sweet Little Lies

2010映画日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

絵に描いたような夫婦が互いに恋人を持つ。優しい嘘と、優しくない孤独。

テディベア作家の瑠璃子と、情報技術の会社に勤める聡は、結婚して3年になる。子どもはなく、今も恋人同士のように穏やかだ。瑠璃子は毎朝、古い時計のねじを巻き、朝食を用意し、帰ってきた夫にその日の小さな出来事を話す。けれど、ふたりの体の関係はいつのまにか途絶えている。聡は夜ごと鍵をかけた自室でゲームに没頭し、同じ家のなかで用があるとき、瑠璃子は携帯電話で夫を呼び出す。聡の妹は変な夫婦だとあきれるが、瑠璃子は自分たちはつながっていると信じている。

非売品のベアを譲ってほしいと、瑠璃子のマネージャーに頼み込んでいた青年、春夫が個展にやってくる。その実直さに心を動かされた瑠璃子は、ベアを彼に譲る。ふたりはレンタルビデオ店で偶然再会し、恋に落ちる。同じころ聡は、大学のダイビングサークルの同窓会で、かつて自分に好意を寄せていた後輩のしほと再会する。若く快活なしほは、聡が既婚者だと知りながら積極的に近づき、ふたりは会うようになる。伊豆の海に潜りたいとしほに言われた聡は、瑠璃子を伊豆旅行に誘う。妻が海に入らないことを知っていたからだ。聡は瑠璃子を残して、しほと初めて関係を持つ。伊豆には春夫も来ていて、瑠璃子は彼と過ごす。帰ってからも、夫婦は何事もなかったかのように暮らしている。

やがて春夫は、恋人の美也子と別れると言い出し、瑠璃子はようやく重い口を開く。春夫と美也子は別れるが、瑠璃子も春夫のもとを去る。聡はしばらくしほとの関係を続けるが、水族館で会った日、組まれた腕をふりほどいて彼女のもとを去り、ふたりが会うのはそれが最後になる。近所の老女、君枝の飼い犬ビンゴが死ぬと、瑠璃子と聡はビンゴを庭に埋め、その夜、久しぶりに一緒に湯船につかる。最後の場面で、瑠璃子はマンションの外階段に座って聡の帰りを待っている。「ただいま」と瑠璃子。帰ってきたのは俺だよ、どこかへ行ってたの、と聡が聞く。行ってた、聡は? おれはもうすぐ帰るよ。

主な出演

  • 中谷美紀岩本瑠璃子役

    テディベア作家。結婚3年目の穏やかな暮らしを守りながら、その中心にある淋しさを感じている。

    岩本瑠璃子の物語

    瑠璃子は、帰ってきた夫にその日の小さな出来事を話し、鍵のかかった部屋にいる夫には携帯電話で呼びかける。あなたといると、とても寂しくなる、と彼女はつぶやく。非売品のベアを欲しがる青年、春夫にベアを譲り、偶然再会して恋に落ちる。聡に誘われた伊豆への旅にまで、春夫は追ってくる。恋人の美也子と別れると春夫が言い出すと、瑠璃子はようやく心を開くが、美也子にあのベアを返され、自分だけが寂しいと思わないでと言われて、春夫のもとも去る。近所の老女の犬ビンゴが死ぬと、聡とふたりで庭に埋める。最後の場面、瑠璃子はマンションの外階段で聡の帰りを待ち、ただいま、と言う。どこかへ行ってたのと聞かれて、行ってた、と答えると、聡は、おれはもうすぐ帰るよ、と言う。

  • 大森南朋岩本聡役

    瑠璃子の夫。情報技術の会社に勤め、夜ごと鍵をかけた部屋でゲームにこもる。

    岩本聡の物語

    聡は、大学のダイビングサークルの同窓会で、かつて自分に好意を寄せていた後輩のしほと再会する。しほは既婚者と知りながら、弁当を持って会社に訪ねてくる。伊豆の海に潜りたいと言われると、海に入らない妻を誘って伊豆へ出かけ、しほとの関係が始まる。家では何事もなかったように暮らしながら、初めて自分から腕の輪をつくって瑠璃子を迎え入れる。しほと来たレストランへ瑠璃子を連れていき、しほの受け売りの説明をしかけて黙り込む。水族館では組まれた腕をふりほどき、ごめんと言ってしほのもとを去る。瑠璃子とふたりでビンゴを庭に埋め、最後の場面、外階段で待っていた瑠璃子に、帰ってきたのは俺だよ、どこかへ行ってたの、と聞く。おれはもうすぐ帰るよ、と彼は言う。

  • 池脇千鶴三浦しほ役

    聡の大学時代のダイビングサークルの後輩。かつての想いのまま、積極的に彼に近づく。

  • 小林十市津川春夫役

    瑠璃子の非売品のベアを欲しがる青年。やがて彼女と恋に落ちる。

  • 安藤サクラ美也子役

    春夫の恋人。春夫は瑠璃子への想いから、彼女と別れる。

この作品が問いかけるもの

『スイートリトルライズ』は、外から見れば理想的でありながら、内側では静かに飢えている結婚を描き、そこから生まれる恋を罪としても救いとしても扱わない。江國香織の小説を映画にした矢崎仁司監督がすくい取るのは、見覚えはあっても名づけにくい状態だ。愛情はそこにあり、性だけが消え、同じ家のなかで別々の部屋に暮らし、壁を隔てて電話で呼び合うふたり。それぞれが別の相手を見つけ、家にあるものを守るために、それをそっと隠し続ける。「人は守りたいものに嘘をつくの。あるいは守ろうとするものに。」という宣伝文句が、映画の問いをそのまま言い表している。小さな死のあとにふたりで湯船につかり、階段で夫を待つ場面で終わる結末は、解決ではなくぬくもりを差し出す。嘘がこの結婚を救ったのか、それとも結婚の一部になっただけなのかは、開かれたままだ。