あなたのことはそれほど
Anata no Koto wa Sorehodo
ストーリー
結末まで書いています。
“二番目に好きな人”と結婚した妻が、初恋の相手と再会し、不倫に踏み出す。相手にも妻子がいた。
眼科クリニックで受付をしている美都は、患者として来ていた渡辺涼太に交際を申し込まれる。穏やかで誠実で、何より美都をいちばんに考えてくれる人だ。けれど美都が小学生のころからずっと好きなのは、別れも告げずに転校していった同級生の有島光軌だった。中学生のとき占い師に、二番目に好きな人と結婚するのがいいと言われたことも心に残っていて、美都は涼太と結婚する。30歳を目前にして、美都は有島と再会する。有島も結婚していて、妻の麗華は娘を産んだばかりだった。有島がそれを打ち明けると、美都も夫がいることを明かし、無茶なことは言わないからと関係を続ける。
涼太はすでに知っていた。美都の携帯を盗み見ていた彼は、問い詰めることなく、笑顔と手料理で妻をつなぎとめようとし、その穏やかさが美都を怯えさせる。美都は有島の家を訪ねて麗華と顔を合わせ、涼太もまた有島夫妻に近づく。勘のいい麗華は夫への疑いを深めていく。有島は別れを切り出し、美都は家を出て離婚を求めるが、涼太は離婚届をまともに書こうとしない。有島は麗華に不倫を打ち明ける。美都は妊娠したかもしれないと思い悩む。涼太と暮らしていたマンションには、美都を中傷するビラがまかれる。のちに、それは有島家の近所に住む孤独な主婦・皆美のしわざだったとわかる。
最終回、美都は妊娠しておらず、涼太は離婚に応じる。娘を連れて実家に帰った麗華のもとへ、有島は毎朝毎晩通い続け、やがて許される。有島は美都に、もう会わない、連絡もしないと告げる。ところが美都は、離婚届が出されていないこと、涼太が会社を休んで姿を消したことを知る。涼太が自ら命を絶つつもりではないかと恐れた美都は、彼を追い、もう一度やり直してもいいと言う。涼太は、それは好きとは違う、罪悪感だと言い、今の僕はみっちゃんのことはそれほど、みっちゃんは本当は誰も好きになったことがないんじゃないかと告げる。そうかも、と美都は答える。涼太は笑い、正直でひどい人だ、僕でもいちばん好きな人と結婚できたのに、と言う。美都は、あなたの愛は優しい暴力だったと告げ、傷つけたことを謝る。ふたりは握手をして別れ、涼太は結婚指輪を投げ捨てる。1年後、有島と麗華は夫婦としてやり直していて、ひとりになった美都は結婚式場で涼太を見かける。放っておいていいのかと友人に聞かれた涼太は、それほど、と答える。
主な出演
波瑠渡辺美都役
眼科の受付として働く女性。二番目に好きな人と結婚し、初恋の人と再会して、罪悪感なく心のままに動く。
渡辺美都の物語
30歳を目前にした美都は、小学生のころから想い続けた有島と再会する。自分にも夫がいると明かし、無茶なことは言わないからと関係を続ける。すべて知っていたと涼太に明かされると、有島の家を訪ね、妻の麗華と顔を合わせる。有島に別れを告げられ、家を出て離婚を求め、妊娠したかもしれないと怯える。妊娠はしておらず、涼太も離婚に応じるが、届を出さないまま姿を消す。自ら命を絶つつもりではと恐れて追いかけ、やり直してもいいと言う美都に、涼太は、それは罪悪感だ、君は誰も好きになったことがないのではと言い、美都は、そうかもと答える。あなたの愛は優しい暴力だったと告げて謝り、ふたりは握手して別れる。1年後、ひとりになった彼女は、まだ人の幸せを喜べずにいる。
東出昌大渡辺涼太役
美都の優しく献身的な夫。妻の不倫を知りながら、笑顔と穏やかさで妻を離さず、その執着で美都を怯えさせる。
渡辺涼太の物語
料理好きの涼太は、何より美都を大切にする。だが寝言で彼女が有島くんとつぶやくのを聞いてから、美都の携帯を盗み見るようになった。有島夫妻にも近づき、離婚届にはまともに記入しない。妊娠していないとわかると、記入して郵送してくれれば出しておくと答え、証人の署名を頼んだ香子の前で、これは彼女から僕への誕生日の贈り物だと泣く。美都とやり直してほしいと頼む有島には、悪い人だと言い放つ。そして届を出さないまま会社を休み、姿を消す。追ってきた美都に、今の僕はみっちゃんのことはそれほど、と告げ、正直でひどい人だと笑い、僕でもいちばん好きな人と結婚できたと言って、結婚指輪を投げ捨てる。1年後、放っておいていいのかと同僚に聞かれ、それほど、と答える。
鈴木伸之有島光軌役
美都の小中学校時代の初恋の人。娘が生まれたばかりの既婚者で、不倫に流され、やがて家族を守ろうと必死になる。
有島光軌の物語
有島は学生時代の人気者で、高校の同級生だった麗華と結婚し、生まれたばかりの娘・亜胡を溺愛している。麗華の里帰り出産のさなかに美都と再会して関係を持つが、日に日に冷たくなる麗華を恐れて別れを切り出す。やがて麗華に浮気を打ち明けると、麗華は娘を連れて実家へ帰る。美都とやり直してほしいと涼太に頼んで、悪い人だと言い放たれる。遠い麗華の実家に毎朝毎晩通い、娘に行ってきますとただいまを言う。愛してると告げると、麗華に何度も平手打ちされる。離婚したという美都の連絡には、もう会わない、連絡もしない、うちは絶対に別れないと返す。ある朝、不意に麗華にキスをすると、彼女は彼を抱きしめる。1年後、ふたりは円満な夫婦に戻っている。
仲里依紗有島麗華役
有島の妻で、出産したばかりの母親。夫の浮気に勘づき、感情ではなく正論で夫を追い詰める。
有島麗華の物語
麗華は高校で学級委員長を務めた地味な優等生で、先に有島にキスをしたのは彼女のほうだった。いまは生まれたばかりの亜胡を育てている。父は離婚を望み、母はそれを拒んで、両親は長く別居している。美都の突然の訪問と涼太の接近で、夫への疑いを深める。有島が浮気を認めると、娘を連れて実家に帰り、勢いだけで迎えに来られても帰れないと告げる。母には、お母さんみたいになりたくないと言う。毎朝毎晩娘に会いに来る夫には、努力を見せつけてプロポーズを受けさせようとするのと同じだと言い、愛してると言われると何度も平手打ちする。ある朝、不意にキスをされ、昔自分がいきなりキスをしたことを思い出して、彼を抱きしめる。1年後、ふたりは円満に暮らしている。
大政絢飯田香子役
中学時代からの美都の親友。不倫をいさめ、美都が聞きたくない本当のことを言う。
中川翔子横山皆美役
有島夫妻のマンションに越してきた主婦。自分の結婚生活に満たされず、麗華にまとわりつく。
この作品が問いかけるもの
『あなたのことはそれほど』は、不倫ドラマにつきものの道徳の湿り気を拒む。美都はほとんど罪悪感を抱かず、ある作家は本作を、暗さも湿度もない「透明な不倫ドラマ」と呼んだ。彼女を動かしているのは、恋をしている気持ちだけなのだ。より不穏な問題は、結婚のもう一方の側にある。妻の携帯を盗み見て、すべてを知りながら、笑顔と手料理と、決して手放さない執着で応える夫。東出昌大の演技は、1992年のドラマの有名なマザコン夫を思わせると言われた。最終回で美都は、自分が受けてきたものに名前を与える。あなたの愛は優しい暴力だった、と。作品は、彼女が夫を裏切ったことと、夫の献身が檻だったことの両方を真実として置き、誰にも判決の安心を与えない。題名の「それほど」は、最後に彼の言葉になる。