女囚701号/さそり
Female Prisoner #701: Scorpion
ストーリー
結末まで書いています。
刑事の恋人に裏切られた松が女囚の復讐者に。梶芽衣子のアイコン。
サイレンが鳴り響く。囚人番号701号の松島ナミが、仲間の由起子とともに女子刑務所を脱走したのだ。ふたりはすぐに連れ戻される。3年前、ナミはごく平凡な娘で、麻薬担当の刑事・杉見を愛していた。杉見は彼女をやくざの経営するクラブに潜り込ませ、正体を見破られたナミは組員たちに犯される。そうなることを見越していた杉見は、それを種に組の親分・海津と裏で手を結び、出世の足がかりにした。すべてを悟ったナミは警察署の前で包丁を手に杉見に襲いかかり、取り押さえられて投獄された。
刑務所でのナミは、ほとんど口をきかない。所内の騒ぎをすべて彼女の仕業と疑う所長の郷田は、彼女を屈服させようとする。独房で縛られ、看守に痛めつけられ、片桐の率いる班長グループの女囚たちに嫌がらせを受ける。同じ房に入ってきた新入りは、口を割らせるために送り込まれた婦警だった。塀の外では、杉見と海津がナミの復讐を恐れている。郷田が全女囚に穴を掘っては埋めさせる懲罰を命じたとき、杉見はひそかに現れ、ナミを殺せば釈放してやると片桐に耳打ちする。
疲労の限界を越えた女囚たちは暴動を起こし、看守の銃を奪う。片桐がナミに発砲し、口のきけない由起子が身を挺して彼女をかばう。息絶える前に由起子は、撃ったのは片桐だと血で書き残す。女囚たちは看守を人質に倉庫に立てこもる。ふたたびナミを殺そうとした片桐は、杉見の命令だったと白状する。看守たちがなだれ込み、火の手が上がる混乱の中で、ナミは脱走する。
黒ずくめの装いで3年前の街に戻ったナミは、自分を犯した男たちを、そして親分を、ひとりずつ殺していく。警察署の屋上で、ナミは杉見を何度も刺し、息の根を止める。最後の場面、ナミは刑務所に戻り、黙って廊下を歩いていく。
主な出演
梶芽衣子松島ナミ役
囚人番号701号。愛した刑事に裏切られて投獄され、ほとんど口をきかずに責め苦に耐え、復讐の時を待つ。
松島ナミの物語
ナミは麻薬担当の刑事・杉見を愛する平凡な娘だった。杉見は彼女をやくざのクラブに潜り込ませ、正体を見破られた彼女は組員たちに犯される。杉見はそれを種に親分と取引をした。すべてを悟ったナミは警察署の前で包丁を手に彼に襲いかかり、投獄される。刑務所では、ほとんど口をきかない。仲間の由起子と脱走して連れ戻され、縛られ、痛めつけられながら、口を割らせるために送り込まれた婦警をも自分の側に引き寄せる。暴動のさなか、由起子は彼女をかばって死に、片桐は杉見の命令だったと白状する。ナミは倉庫に火を放って脱走する。黒ずくめの姿で、自分を犯した男たちと親分を殺し、警察署の屋上で杉見を刺し殺す。最後、彼女は黙って刑務所の廊下を歩いていく。
夏八木勲杉見次雄役
麻薬担当の刑事でナミの恋人。彼女を囮にして組と取引し、いまは彼女の口を封じようとする。
杉見次雄の物語
杉見は麻薬担当の刑事で、ナミの初めての恋人だ。出世をもくろむ彼は、ナミをやくざのクラブに潜り込ませる。組員たちが彼女を犯すと、麻薬と強姦で挙げるぞと親分の海津を脅して金を受け取り、事件をもみ消す。警察署の前で包丁を手に襲いかかった彼女のほうが、刑務所に送られる。三年後、ナミの復讐を恐れた杉見は、女囚たちの強制労働の現場にひそかに現れ、ナミを殺せば釈放してやると片桐に耳打ちする。だが企みは失敗する。ナミが脱走すると、海津に電話で用心しろと告げる。警察署のエレベーターで、ナミは彼の背後にいた。銃を突きつけて唇を奪う杉見を振りほどき、ナミは屋上まで追いつめて刺し殺す。
渡辺文雄郷田毅役
刑務所長。所内の騒ぎをすべてナミの仕業と疑い、彼女を屈服させようとする。
横山リエ片桐役
班長グループを率いる女囚。かつて組の運び屋で、釈放と引き換えにナミの暗殺を引き受ける。
渡辺やよい木田由起子役
口のきけない、ナミのいちばんの味方。ともに脱走を図り、暴動のさなかに彼女をかばって撃たれる。
扇ひろ子進藤梨恵役
新入りの女囚で、壺振りの名手。班長たちに屈せず、片桐の手からナミを救う。
この作品が問いかけるもの
『女囚701号/さそり』は東映の娯楽作で、女囚ものが売りにした裸と残酷をたっぷりと見せる。評価はいまも割れており、英国の映画誌は、女性の苦痛をひたすら軽々しく見せる作りでは家父長制批判という読みは成り立ちにくいと書いた。それでもこの映画が画面に残したのは、ほとんど口をきかない梶芽衣子のナミだった。恋人の企みの果てに犯され、彼を罰しようとして投獄された女は、警察も刑務所も組も、自分を扱おうとするあらゆる仕組みを拒む。描かれるのは、男たちのあいだで通貨のように使われる女の体と、それを使った男を守る法の秩序だ。監督デビュー作だった伊藤俊也は組合活動で撮影を三か月も遅らせた闘士だったが、映画は思わぬ大ヒットとなった。残る問いは、声を聞こうとしない仕組みの前で、女に残された言葉は復讐だけなのか、ということだ。