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Cinema 月明かりの映画館

問題のあるレストラン

A Restaurant with Many Problems

2015ドラマ・シリーズ日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

セクハラ企業を辞めた女性たちが、その旗艦店の真向かいの屋上でビストロを開く。集まったのは、職場からはじき出された人たちだった。

32歳の田中たま子は、大手飲食会社「ライクダイニングサービス」で、表参道の旗艦店の立ち上げに関わっていた。ある日、高校時代からの親友で同僚の藤村五月が、子会社の食中毒問題の責任をすべて押しつけられる。社長の雨木太郎は幹部社員の前で、五月に服を脱いで謝罪するよう命じ、五月はそれに従う。同僚たちの目の前で行われた性加害だった。五月は会社を辞めて福井の実家に帰り、ビストロのシェフだった亡き父のレシピをたま子に託す。たま子は加害に加わった男たちに氷水を浴びせ、警察沙汰になって会社を去る。

たま子は、旗艦店の真向かいにある裏原宿の古い雑居ビルの屋上を借り、五月のレシピでポトフを出すビストロ「ビストロ フー」を開く。集まったのは、働く世界からはじき出された人たちだ。原価計算なら誰より速いのに就職先が決まらない東大出の結実。人を怖がってスマホ越しにしか話せない天才的な料理人の千佳は、実は雨木社長の娘で、部屋に引きこもった母のために幼いころから料理を作ってきた。息子の親権をめぐって夫と争う、たま子の高校の同級生の鏡子。職を転々とするソムリエールで、元は弁護士だった奈々美。パリで修業を積みながら、女性的なしぐさのせいでどの職場にも居場所をなくしてきたパティシエのハイジ。やがて本社の藍里も加わる。上司のセクハラを愛想よく受け流してきた彼女は、同僚にストーカー行為をされ、交際を断ると暴力を振るわれ、会社はそれをもみ消した。向かいの旗艦店のシェフは、たま子の元恋人・門司誠人で、ふたつの厨房は競い合う。

ビストロには少しずつ客がつく。結婚を申し込んでくれた恋人を連れて東京に戻ってきた五月は、雨木を訴える決意をし、奈々美が弁護を引き受ける。雨木に屈辱を与えられてきた部長が訴えの内容を週刊誌に漏らし、事実と憶測の入りまじった記事が広まって、雨木は社長を辞任し、旗艦店は休業に追い込まれる。上辺だけの謝罪で自分を侮辱した雨木を、門司は殴って解雇される。一方、客が落としたスプーンが屋上から通りへ落ちて警察沙汰になり、店の営業そのものへの苦情が寄せられ、ビルのオーナーとの話し合いも決裂する。最後の営業日、ビストロ フーの売上は840円の黒字だった。300日後、たま子は仲間を海辺の廃屋に呼び集め、ここで店をやり直すと宣言する。近くのホテルで働く門司は、勝てる気しかしないと言い、たま子も同じ言葉を返す。

主な出演

  • 真木よう子田中たま子役

    直情型の飲食店の企画担当。親友が職場で受けた性加害をきっかけに会社を辞め、古巣の向かいの屋上にビストロを開く。

    田中たま子の物語

    会社の旗艦店の立ち上げに奔走していたたま子の親友・五月が、幹部社員の前で、社長から服を脱いで謝るよう命じられる。たま子は加担した男たちに氷水を浴びせ、会社を去る。五月の亡き父のレシピを手に、旗艦店の真向かいの屋上にビストロ フーを開き、働く場所からはじき出されてきた人たちを厨房に集める。向かいの店のシェフは元恋人の門司で、ある日現れ、こんな店は辞めて俺の嫁になれと言う。星野に置き去りにされた結実を店に連れ戻し、東京に戻った五月とともに社長を訴える。店には客がつくが、屋上から落ちたスプーンと一件の苦情から閉店に追い込まれ、最後の売上は840円の黒字だった。300日後、たま子は仲間を海辺の廃屋に集め、ここで店をやり直すと宣言する。

  • 二階堂ふみ新田結実役

    誇り高く頭の切れる東大出身の求職中の女性。店のゼネラルプロデューサーを名乗り、採算を見張る。

    新田結実の物語

    結実はいつも黒い服を着ていて、ハイジに「喪服ちゃん」とあだ名をつけられる。東大を出ながら就職先が決まらない。ビストロでは原価を即座に計算し、たま子の計画の甘さを次々に指摘する。起業を持ちかけてきた星野に恋をするが、融資の相談だと連れて行かれたタワーマンションの一室には、客をもてなすための格好をした女性たちがいて、星野は男から金を受け取り、結実を置いて去る。たま子に見つけられてビストロに連れ戻され、星野に謝られるころには、気持ちはもう冷めている。最後の営業日、売上を計算して840円の黒字だと告げたのは結実で、やっと軌道に乗ったのになぜ閉めなければならないのかと泣き出す。300日後、彼女も海辺の廃屋に集まっている。

  • 松岡茉優雨木千佳役

    人を極度に恐れ、パーカーに身を隠す天才的な料理人。雨木社長の娘で、引きこもった母のために料理を作って育った。

    雨木千佳の物語

    千佳は見知らぬ人とはスマホ越しにしか話せず、たま子に出会う前は、社長である父に殺意さえ抱いていた。両親の離婚後、母は7年間部屋に引きこもり、千佳は母が食べられるように料理を作り続けたが、やがて母は娘を置いて家を出た。店の厨房で、千佳はたま子が思い描く味を形にしてみせる。オンラインゲームで娘と再会した母は、手料理を持って店を訪れ、新しい恋人と暮らす北海道へ来ないかと誘うが、千佳は店に残る。憧れの門司がポトフを完食すると顔がほころぶ。最後の営業日、門司は休業中の自分の店に千佳を連れて行き、愛用のフライパンを譲る。そこでふたりは、再婚相手に去られ、幼い息子とふたりきりになった父の姿を見る。300日後、千佳も海辺の廃屋にいる。

  • 高畑充希川奈藍里役

    セクハラを笑顔で受け流してきた本社の社員。同僚のストーカー被害と暴力をきっかけに、ビストロに加わる。

  • 東出昌大門司誠人役

    向かいの旗艦店のシェフで、たま子の元恋人。料理のことしか頭になく、周りの苦しみに無関心だった。

  • 杉本哲太雨木太郎役

    ライクダイニングサービスのカリスマ社長。男性の部下にはパワハラを、女性にはセクハラを繰り返す。

この作品が問いかけるもの

『問題のあるレストラン』は、職場のセクハラと性加害、そしてそれを笑って流すよう求められてきた人たちを描く。坂元裕二の脚本は、五月の身に起きたことをはっきりと映し、その長い余波を追う。黙って見ていた同僚たち。どんな訴えも大げさだと冷笑する部長。世間には週刊誌のゴシップとしてしか届かない裁判。より静かな傷にも正確だ。笑顔で生き延びてきた女性。母の台所で自分を育てた少女。しぐさのせいで職場を失い続けてきたパティシエ。ビストロは彼らの答えだが、作品はそれが安泰だというふりをしない。店は、落としたスプーンひとつで、840円の黒字を残して閉じる。かわりに差し出されるのは、会社が一度も与えなかったもの、ひとりひとりがまともに扱われる食卓だ。女性たちが事を荒立てないことで回っている職場がどれほどあるのか。その問いが残る。