全裸監督
The Naked Director
Journalでの言及
Journal日本はなぜセックスレスを数えるのか。その数字が隠すもの。ストーリー
結末まで書いています。
1980年代、AV監督・村西とおるの成り上がり。女性の身体の上に築かれた産業の躍動と不穏。
アダルトビデオ監督・村西とおるの半生を、事実と虚構を交えて描くドラマ。1980年の札幌。英会話教材のセールスマンだった村西は成績が上がらずにいたが、先輩に同行したのをきっかけに営業の才能を開花させる。社内でトップになった矢先に会社は倒産し、帰宅すると妻がほかの男といた。夫婦生活への不満を告げた妻は、子どもを連れて去る。酒に溺れる村西は、ラブホテルの盗聴テープを売るチンピラ荒井トシを助けたことから、ポルノ雑誌の世界に入る。書店を北海道じゅうに広げ、出版プロダクションの川田研二と組んで無修正の雑誌を作り始める。地元の警察には賄賂を渡して見逃されていたが、やがて警視庁の刑事・武井に逮捕される。
出所するとビデオデッキが普及していた。村西はトシ、川田と新宿に「サファイア映像」を立ち上げる。業界最大手の社長・池沢は村西の作品を締め出し、自主規制の団体まで作る。そこへ、厳格な母に育てられた女子大生・佐原恵美が出演を望んで現れる。村西は自ら男優を務め、彼女を「黒木香」と名付けて撮る。母親は発売の差し止めに動き、ハワイでの撮影は村西の現地での収監に終わる。日本では黒木がテレビで性を率直に語り、作品は大ヒットする。一方、保釈金を集めようとしたトシは、デビュー作のマスターテープを無断でヤクザの古谷に渡してしまう。裏ビデオが出回り、出演した奈緒子は新しい職を失い、薬物に手を出したトシは村西と決裂する。昭和の終わりの一斉摘発で池沢とトシは逮捕され、池沢は拘置所で自ら命を絶つ。第1シーズンは、サファイア映像が業界の頂点に立つところで終わる。
第2シーズンは1990年から始まる。川田と決裂した村西は「ダイヤモンド映像」を設立し、衛星放送に巨額をつぎ込む。心は黒木から離れ、内気な新人・千葉ミユキを「乃木真梨子」と名付けて撮る。バブルが崩壊すると、村西は古谷から金を借りて裏ビデオを作り、女優やスタッフを「商品」と罵って全員に去られる。村西に届かない黒木は自ら命を絶とうとし、一命を取り留める。トシは古谷を殺し、その直後に古谷の手下に殺される。武井も収賄で逮捕される。数年後、黒木はイタリアで美術を学び、川田はかつての仲間と作品づくりを再開している。巨額の借金を抱えた村西は、乃木と子どもと細々と暮らしている。渋谷での無許可の撮影で警官に取り押さえられながら、村西はカメラに向かって叫ぶ。死にたくなったら下を見ろ、俺がいる。
主な出演
山田孝之村西とおる役
仕事も家庭も失ったセールスマン。アダルトビデオの時代の寵児となり、やがてすべてを失う。
村西とおるの物語
村西は札幌で成績の上がらない英会話教材のセールスマンだったが、売り方を覚えたとたんに会社は倒産し、妻にも去られる。その話術をポルノに向け、ビニ本と書店網、逮捕、そしてアダルトビデオへと進み、池沢の締め出しに逆らって、自ら男優となって黒木香を撮る。第1シーズンは頂点で終わる。第2シーズンでは衛星放送に巨額をつぎ込み、黒木から乃木へと心を移す。バブルが崩れると古谷から金を借り、ひそかに裏ビデオを作り、仲間を商品と罵って全員に去られ、川田とトシからも縁を切られる。数年後、借金を抱えて乃木と子どもと暮らす村西は、渋谷の無許可の撮影で警官に取り押さえられながら、死にたくなったら下を見ろ、俺がいる、とカメラに叫ぶ。
森田望智佐原恵美/黒木香役
厳格な母に育てられた女子大生。母に背いて村西の作品に出演し、テレビで性を率直に語るスターになる。
佐原恵美/黒木香の物語
恵美は厳格な母のもとで育ち、自分が母と妻子ある男との不倫から生まれたことを知る。出演を望んでサファイア映像を訪ねると、村西は自ら相手役を務め、彼女を黒木香と名付ける。母の訴えで作品が締め出されると、彼女は出演料を返してハワイでの撮影資金にし、村西が現地で収監されているあいだに、現役の女優としてテレビに出て母と決裂し、保釈金集めを支える。やがて村西が衛星放送の第1作に用意した台本を読み、彼の心が自分から離れたと感じて出演を断る。役は乃木に回る。仲間が去り、ひとり残された村西のもとを訪ねて再起を促すが、彼の心は動かず、黒木は自ら命を絶とうとする。一命を取り留めた彼女は母のもとへ戻り、数年後、イタリアで美術を学んでいる。
満島真之介荒井トシ役
村西をアダルトの世界に誘ったチンピラで相棒。ヤクザとの取引から深みにはまっていく。
荒井トシの物語
トシは札幌でラブホテルの盗聴テープを売っていたところを村西に助けられ、ビニ本からサファイア映像まで相棒であり続ける。村西がハワイで収監されると、デビュー作のマスターテープを無断でヤクザの古谷に渡し、その金を銀行の借金だと偽って保釈金にあてる。裏ビデオのせいで奈緒子が職を失うと、古谷に販売をやめるよう頼んで断られ、薬物に手を出して村西に絶縁される。昭和の終わりの摘発で逮捕され、出所すると古谷の組織に入る。やがて古谷の一派が襲われたとき、ホステスのサヤカだけを連れて逃げ、大金と引き換えに命を見逃される。再起の道を断たれて村西を呼び出し、復讐しようとするが、懇願されて思いとどまり、ひとりで古谷を殺す。直後に、古谷の手下に殺される。
玉山鉄二川田研二役
ビニ本時代に村西と組んだ元出版社社長。会社を支えるが、村西の拡大路線についていけなくなる。
恒松祐里千葉ミユキ/乃木真梨子役
第2シーズンで業界に飛び込む元美容部員。村西に芸名を与えられ、最後まで彼のそばにいる。
石橋凌池沢栄吾役
業界最大手の社長。警察と自主規制を使って、村西を市場から締め出そうとする。
この作品が問いかけるもの
『全裸監督』は、あらゆる規則を侮辱と受け取る男の、笑いと勢いに満ちた物語であり、その舞台は女性の身体の上に築かれた産業だ。作品が差し出す問いは、この緊張そのものにある。検閲の制度は偽善的に、警察は買収され、大手は談合する世界として描かれ、村西の反逆は解放のように見える。だが同時に作品は、彼の撮る映像の代価を、仕事や家族や、ほとんど命そのもので払う女性たちの姿も映す。日本では、村西を英雄に仕立てているという批判や、公の場を離れて久しい黒木香本人に連絡を取らないまま実名で登場させたことへの批判が出た。閉ざされた世界をこじ開ける男の熱量と、壊されたものを抱えて生きたのは誰だったのかという問い。この作品を観ることは、そのふたつを同時に抱えることだ。