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Cinema 月明かりの映画館

愛のコリーダ

In the Realm of the Senses

1976映画日本、フランス

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

阿部定事件を本番描写で映画化。フランスで現像され、国内ではカットとぼかし入りで公開。脚本とスチールの書籍で大島らが猥褻罪に問われた。

昭和11年、東京・中野。かつて娼妓だった阿部定は、料亭「吉田屋」の住み込み女中になる。主人の吉蔵とは出会ってすぐに惹かれ合い、ふたりは女将トクの目を盗んで、家のあちこちで密会を重ねる。やがて関係が知れると、ふたりは吉田屋を出奔し、待合の一室にこもる。

芸者たちに囲まれて祝言のまねごとをあげると、あとは部屋からほとんど出ない。酒を運ばせ、芸者を呼び、食べることも忘れて、誰が見ていようとかまわず昼も夜も体を求め合う。金が尽きると、定はパトロンの校長、大宮先生のもとへ行き、抱かれて金を工面してくる。吉蔵を自分ひとりのものにしたい思いは募るばかりだ。妻のもとへ帰る吉蔵を、定は許せない。戻ってきた彼に、包丁を振りかざしもする。

ふたりは交わりながら互いの首を絞めて快感を高めるようになり、その遊びは次第に激しくなる。ある日、定が絞めすぎて吉蔵は窒息しかけ、しばらく吉田屋に帰って養生すると告げる。手放すくらいなら、と定は彼を殺して自分だけのものにすると決める。最後の夜、定は腰紐で吉蔵の首を絞め続け、息の根を止める。それから彼の性器を切り取り、なきがらの隣に身を横たえる。定は切り取ったものを抱いて四日間宿を転々とし、捕らえられたときには晴れやかな顔をしていた、と語りが告げる。

主な出演

  • 松田暎子阿部定役

    かつて娼妓だった女中。雇い主への恋が、彼を丸ごと自分のものにしたいという渇望に変わっていく。

    阿部定の物語

    吉田屋に来たばかりの定は、女中頭に昔の稼業をあざけられて包丁を手に暴れ、それを収めた主人の吉蔵とたちまち惹かれ合う。女将のトクに関係を知られると、ふたりで店を出て待合の一室にこもり、定は吉蔵をかたときも離そうとしない。金が尽きれば、パトロンの大宮先生に抱かれて工面してくる。吉田屋に戻ってもトクを抱くなと約束させ、戻ってきた吉蔵を包丁で迎える。交わりながら首を絞め合う遊びは激しくなり、ついに彼を窒息させかける。しばらく家で養生すると告げられた最後の夜、定は腰紐で吉蔵の首を絞めて殺し、その性器を切り取る。四日間それを抱いて宿を転々とし、捕らえられたとき、その顔は晴れやかだった。

  • 藤竜也吉蔵役

    料亭「吉田屋」の気ままな主人。妻を置いて定のもとへ走り、彼女の求めるままに身をゆだねていく。

    吉蔵の物語

    吉蔵は料亭「吉田屋」の主人で、女将のトクという妻がいる。包丁を手に暴れた新入りの女中・定をなだめたのをきっかけに、ふたりは家のあちこちで密会を重ねる。関係が知れると定と店を出て、芸者に囲まれて祝言のまねごとをあげ、待合の部屋からほとんど出なくなる。鋏を突きつけられ、女房を抱くなと迫られると、笑って約束しておきながら、家に戻ればトクを抱く。戻ってきたところを包丁で迎えられても、笑っていなす。交わりながら首を絞められることを喜んで受け入れ、遊びは回を追って激しくなる。窒息しかけたあと、しばらく吉田屋に帰って養生すると告げる。最後の夜、定は腰紐で彼の首を絞め、その息の根を止める。

  • 中島葵トク役

    吉蔵の妻で、吉田屋の女将。夫と新しい女中の関係に、すぐに気づく。

  • 九重京司大宮先生役

    定のパトロンの校長。ふたりの金が尽きると、定は彼のもとへ金を工面しに行く。

この作品が問いかけるもの

1936年、阿部定は愛人を絞め殺して性器を切り取り、事件は世間を騒がせた。大島渚はこれを、本番の性行為を撮った愛の物語として描き直した。日本の検閲のもとでは思いどおりに撮れないため、作品はフランスの製作とされ、撮影済みのフィルムは現像のためフランスへ送られた。国内ではカットとぼかしを施して公開され、脚本とスチールを収めた書籍をめぐって、大島と出版社の社長がわいせつの罪で起訴された。ふたりは1979年に無罪となり、1982年の控訴審でも無罪とされた。表現されたものに猥褻なものはない、猥褻なのは隠されたものだ、と大島は法廷で語っている。欲望はどこで所有に変わるのか。軍国主義へ傾く国で、つねに誰かに見られながら、ふたりきりの世界を作ることはできるのか。映画は定を中心に据え、彼女の愛が行き着く先から目をそらさない。