赤い玉、
Red Ball
ストーリー
結末まで書いています。
老いた映画監督と、大学事務員の恋人と、街で見かけてつけ回す女子高生。終わってしまうことを恐れる男の物語。
時田修次は60歳。もう何年も新作を撮れずにいる映画監督で、いまは京都の大学で映画づくりを教えている。東京から新幹線で通い、ホテルに泊まっていることになっているが、実際には大学事務員の35歳の女性、大場唯の部屋に入り浸り、毎晩ふたりで酒を飲んでいる。その日々を新作のシナリオに書き、唯がパソコンで清書する。寝床で時田は、古い言い伝えを話して聞かせる。男が打ち止めになるとき、その印に赤い玉が出るのだという。
大学では、学生の矢島健一が恋人の加藤愛子を主演に映画を撮っている。時田が熱心に口を出すのは濡れ場だけだ。ふたりは映画観の違いから別れ、愛子は時田に迫るが、時田は相手にしない。彼の頭にあるのは、街で見かけた女子高生のことだけだった。家までつけ、学校を突き止め、ダンスの練習をのぞき見て、時田は彼女をシナリオに書き込む。
少女の名は北小路律子。年上の男たちと金で会っている。現実とシナリオの境目をぼかした場面のなかで、時田は客のひとりとして律子のもとへ行く。老いた男が女子高生を買う、それは性的虐待にほかならない。時田はうまくいかず、その果てに言い伝えどおりの赤い玉が現れる。自分はもう終わりだ、と彼は思う。時田はシナリオに唯を触らせなくなり、ふたりは別れる。シナリオのなかの女子高生は、殺されることになる。別れて暮らす娘を訪ねると、元妻の百合子が駆け寄ってくる。
大学の入学式で、時田は新入生のなかに律子の姿を見つける。書き上げたシナリオに『赤い玉、』と題をつけ、若いプロデューサーの青山のもとへ持ち込む。誰に見せたいのかと問われ、自分にだ、これで最後にする、と答える。帰り道、青山からのメールを歩きながら開いた時田は、車にはねられて命を落とす。
主な出演
奥田瑛二時田修次役
何年も新作を撮れずにいる60歳の映画監督。京都の大学で教えながら、自分の暮らしをシナリオに書いている。
時田修次の物語
時田は唯との毎晩をシナリオに書き、唯に清書させている。寝床では、男が打ち止めになるとき赤い玉が出るという言い伝えを話す。街で見かけた女子高生の律子をつけ回し、彼女もシナリオに書き込む。現実か虚構か定かでない場面で、彼は年上の男たちと金で会う律子のもとへ客として行く。老いた男が女子高生を買う、それは性的虐待だ。言い伝えの赤い玉が出たと思い、自分はもう終わりだと悟る。唯とは別れ、シナリオのなかの女子高生は殺されることになる。入学式で新入生のなかに律子を見つけた彼は、シナリオを『赤い玉、』と名づけ、これで最後にすると若いプロデューサーに告げる。帰り道、そのプロデューサーからのメールを歩きながら開き、車にはねられて命を落とす。
不二子大場唯役
大学事務員の35歳。時田を部屋に住まわせ、彼のシナリオをパソコンで清書する。
大場唯の物語
東京から新幹線で通い、ホテルに泊まっていることになっている時田は、実際には唯の部屋で暮らしている。ふたりは毎晩酒を飲み、唯は、時田がふたりの日々を材料に書き進めるシナリオをパソコンで打ち込む。寝床で時田は、男が打ち止めになるとき赤い玉が出るという言い伝えを話して聞かせる。やがて彼の心が、街でつけ回す女子高生へ向かうと、パソコンを教えてくれたら自分で書くと言い出し、唯にシナリオを触らせなくなる。ふたりの仲はうまくいかなくなり、別れることになる。唯の手を離れて書き上げられたシナリオに、時田は『赤い玉、』と題をつける。
村上由規乃北小路律子役
時田が街で見かけてつけ回す女子高生。彼の最後のシナリオの、執着の的になる。
土居志央梨加藤愛子役
恋人の監督作で主演を務める映画学科の学生。恋人と別れたあと、時田に近づく。
柄本佑青山役
時田をもう終わった監督として扱う、若い映画会社のプロデューサー。
この作品が問いかけるもの
『赤い玉、』は、終わってしまうことへの恐れについての映画だ。男が打ち止めになるとき赤い玉が出るという言い伝えを、何年も映画を撮れていない60歳の時田は待ち受けている。ピンク映画から出発した高橋伴明監督は、66歳のとき、教える大学の学生およそ40人とこの作品を撮った。性の表現から逃げる若い世代に、年老いた男たちでもここまでやるのだと見せたかった、と語っている。映画は、老いていく男の欲望の滑稽さと見栄をあけすけに描く。だが欲望の向かう先については、はるかに曖昧だ。時田の最後の執着の対象は、彼がつけ回す女子高生である。暮らしとシナリオの境目をぼかすことで、映画は彼女を、大人に搾取される子どもではなく、創作をかき立てるミューズとして扱ってしまう。これは誰の最後の季節なのか。少女は何を払わされるのか。その問いが残る。