春画先生
Shunga Sensei
ストーリー
結末まで書いています。
春画研究家の弟子になった女性。鑑賞の教養が欲望の喜劇に変わる。
カフェで働く春野弓子は、自分の人生にこの先おもしろいことなど何ひとつ起こらないと思っている。常連客の芳賀一郎は、江戸の性愛を描いた浮世絵、春画の研究の第一人者で、近所では「春画先生」と呼ばれる変わり者だ。妻に先立たれ、世捨て人のように暮らす芳賀は、弓子に春画の見方を教える。性器ばかりに目を奪われず、そこに描かれたほかのすべてを見るように、と。弓子は芳賀の弟子となり、週に二度、家政婦として屋敷に通い始める。
芳賀は、亡き妻・伊都のドレスを弓子に着せて春画の鑑賞会へ連れ出す。弓子は芳賀に惹かれ、亡き妻に嫉妬するようになる。芳賀の担当編集者・辻村俊介は、酒の席で伝説を語る。芳賀はかつて、自分のもとを去った女性を諦めきれずに通いつめ、門前払いを続けたその妹・伊都と惹かれ合った。何年ものちに再会したふたりは、宿に七日間こもり、そして結ばれたのだと。昂った弓子は、その夜辻村と関係を持つ。翌朝、辻村が芳賀に頼まれ、そのときの声をひそかに電話で芳賀に中継していたと知り、弓子は芳賀のもとを去る。カフェに現れた芳賀に、君がいなければもう生きていけないとすがられ、弓子は戻る。
三人で春画の鑑定旅行に出た先で、伊都と同じ顔の女性が現れる。伊都の双子の姉で、かつて芳賀のもとを去った一葉だった。芳賀は一葉とともに姿を消す。数日後、芳賀から連絡が来る。貴重な春画を手に入れるため、弓子を指名した持ち主と一夜をともにしてほしい。弓子は引き受け、その代わりに、芳賀と伝説の七日間のお篭もりを再現したいと願い出る。待っていた持ち主は一葉だった。一葉は鞭で弓子を責め、ベッドの下では芳賀が聞いている。一葉に呼ばれて芳賀が姿を現すと、弓子は彼の求めるものを悟り、鞭と言葉で芳賀を責め、一葉の目の前で芳賀と結ばれる。辻村は、これで芳賀の『春画大全』の執筆が進むと喜ぶ。知らなかった自分に目覚めた弓子は、芳賀とともに春画研究の道を歩み、七日間を手に入れる。
主な出演
内野聖陽芳賀一郎役
妻に先立たれた春画研究者。近所で「春画先生」と呼ばれ、弓子を弟子兼家政婦として迎える。
芳賀一郎の物語
芳賀は教職を離れ、春画の大著を書きながら、世捨て人のように暮らしている。交わっている最中に論文の着想をメモして恋人に去られたこと、門前払いを続けたその妹の伊都と、宿に七日間こもったのちに結ばれたことは、伝説になっている。彼は弓子に伊都のドレスを着せ、辻村に頼んで、弓子と辻村の一夜の声を電話で中継させる。弓子が去ると、君がいなければ生きていけないとすがる。伊都の双子の姉で、かつて自分のもとを去った一葉が現れると、彼女とともに姿を消し、ある春画のために持ち主と一夜をともにしてほしいと弓子に頼む。ベッドの下から一葉に呼び出され、弓子に鞭で責められ、ふたりは結ばれる。大著の執筆は進みはじめ、弓子は彼のそばにとどまる。
北香那春野弓子役
退屈な日々を送るカフェの店員。春画の見方を教わるうちに、教えてくれる男に惹かれていく。
春野弓子の物語
弓子は、自分の人生にはもう何も起こらないと思っていた。芳賀に春画の見方を教わり、性器ばかりでなく描かれたほかのすべてを見るようになる。弟子兼家政婦として通ううちに、亡き妻の伊都に嫉妬する。芳賀と伊都の七日間の伝説に昂った夜、編集者の辻村と関係を持ち、その声を芳賀が電話で聞いていたと知って去るが、すがられて戻る。貴重な春画のために持ち主と一夜をともにしてほしいと頼まれると、自分にも七日間のお篭もりをという条件で引き受ける。待っていた一葉に鞭で責められ、ベッドの下では芳賀が聞いている。呼び出された芳賀の望みを悟った弓子は、鞭と言葉で彼を責め、ふたりは結ばれる。そのまま芳賀のそばにとどまり、七日間を手に入れる。
柄本佑辻村俊介役
芳賀の担当編集者で、いい加減な色男。弓子と関係を持ち、その声をひそかに芳賀へ中継する。
安達祐実藤村一葉・藤村伊都役
双子の姉妹。芳賀の亡き妻・伊都と、かつて彼のもとを去り、芳賀と弓子をさらなる深みへ誘う姉の一葉。
この作品が問いかけるもの
『春画先生』は、春画を真剣に、欲望を軽やかに扱う喜劇だ。全国公開の商業映画として、日本映画で初めて、年齢制限つきの指定のもとで春画を修正なしに映した作品でもある。笑いの奥にあるのは、見ることを教えられた女性が何を見いだすかという物語だ。絵を、まわりの男たちを、そして自分が本当に望むものを。映画は、その学びの醜い面も隠さない。弓子は男たちのあいだで受け渡され、知らないうちに声を聞かれる。その目覚めのどこまでが彼女自身のもので、どこからが年上の研究者の本のためなのか。映画は答えを出さない。たどり着くのは、支配と服従を大人が選びとれるものとして恥じずに描く光景であり、奇妙なかたちで、自分の意志で鞭を手にするヒロインの姿だ。