天国の口、終りの楽園。
Y tu mamá también
ストーリー
結末まで書いています。
十代の少年二人と年上の女が、存在しないかもしれない浜辺へ向かう。死をめぐる最も優しいロードムービー。
1999年のメキシコ。フリオとテノッチは高校を卒業したばかりの17歳で、親友同士だ。フリオは中流家庭の子、テノッチは有力政治家の息子。恋人たちが夏のあいだイタリアへ出かけてしまい、ふたりはパーティーとマリファナとプールで日々をやり過ごしている。テノッチの姉の豪華な結婚式で、ふたりはテノッチのいとこハノの妻で、スペインから来た二十代後半のルイサに出会う。気を引こうと、「天国の口」という秘密の美しい浜辺の話をでっちあげ、一緒に行こうと誘う。数日後、ルイサは病院で検査結果を聞き、酔ったハノから浮気を告白する電話を受ける。そして、ふたりの誘いに乗る。
三人はメキシコの田舎を南へ走る。ときおり語り手が割り込み、通り過ぎる人や土地の過去と未来を語る。ルイサはよく笑い、少年たちの性の武勇伝を聞き出し、バイク事故で死んだ初恋の人の話をし、ハノの留守電に、あなたとは別れると残す。ひとりで泣き崩れる彼女の姿を、少年たちはときおり目にする。
モーテルで、ルイサはテノッチと寝る。大人の女性と17歳の少年の関係だが、映画はそれを通過儀礼として描く。それを見て傷ついたフリオは、おまえの恋人と寝たとテノッチに打ち明ける。翌日、ルイサは釣り合いをとるようにフリオとも寝るが、テノッチもフリオの恋人と寝ていたと明かし、ふたりは殴り合い寸前になる。ルイサはふたりを容赦なくなじり、自分のルールを守るなら残ると言う。海にたどり着くと、漁師の一家が舟で小さな浜辺へ連れて行ってくれる。その浜の名は、本当に「天国の口」だった。村の電話で、ルイサはハノに優しく最後の別れを告げる。最後の夜、酔った三人は踊り、同じ部屋へ行く。少年たちは互いにキスをする。翌朝、並んで目を覚ましたふたりは、逃げるように帰路につく。ルイサはひとり浜に残る。やがてふたりは恋人たちにふられ、会うこともなくなる。
一年後、メキシコシティで偶然出会ったフリオとテノッチはコーヒーを飲む。ルイサは旅の一か月後に癌で死んだ、旅のあいだずっとそれを知っていたのだ、とテノッチが告げる。また会おうと言って別れるふたりについて、語り手は言う。ふたりが会うことは二度となかった。
主な出演
マリベル・ベルドゥルイサ・コルテス役
テノッチのいとこと結婚した二十代後半のスペイン人女性。少年たちの誘いに乗って海へ向かう。
ルイサ・コルテスの物語
ルイサは二十八歳で、ハノの妻だ。結婚式で、ハノのいとこテノッチとその親友フリオに、ありもしない浜辺へ誘われる。数日後、病院で検査結果を聞き、酔ったハノから浮気を告白されて、彼女は誘いに乗る。旅の車中ではよく笑い、バイク事故で死んだ初恋の人の話をし、ハノの留守電に別れを告げる。ひとりで泣く姿を、少年たちはときおり目にする。十七歳のテノッチと、次いで釣り合いをとるようにフリオと寝て、ふたりがいがみ合うと容赦なくなじり、自分のルールで旅を続ける。本当に「天国の口」という名の浜辺にたどり着き、ハノに優しく最後の別れを告げる。最後の夜が明けると、彼女はひとり海辺に残る。一か月後、癌で世を去る。旅のあいだ、ずっとそれを知っていた。
ガエル・ガルシア・ベルナルフリオ・サパタ役
高校を出たばかりの17歳。中流家庭に育ち、テノッチとは親友。
フリオ・サパタの物語
フリオは秘書の母と活動家の姉と暮らし、恋人たちがイタリアへ出かけた卒業後の夏を、テノッチとマリファナを吸って過ごす。結婚式で出会ったルイサをでっちあげの浜辺に誘うと、本当についてくる。旅の途中、ルイサがテノッチと寝たのを見て、仕返しに、おまえの恋人と寝たと打ち明ける。翌日ルイサは彼とも寝て、テノッチも自分の恋人と寝ていたと知ったふたりは、殴り合い寸前になる。最後の夜、酔った三人は踊って同じ部屋へ行き、フリオとテノッチはキスをする。翌朝、ふたりは逃げるように帰路につく。恋人にはふられ、友情も途切れる。一年後、メキシコシティでコーヒーを飲みながら、ルイサが癌で死んだと聞かされる。また会おうと言って別れるが、二度と会うことはない。
ディエゴ・ルナテノッチ・イトゥルビデ役
フリオの親友で17歳。有力政治家の息子で、金には困っていない。
テノッチ・イトゥルビデの物語
姉の結婚式で、テノッチはフリオとともに、いとこハノの妻ルイサに出会い、ありもしない浜辺へ誘う。旅の途中、ルイサはまず彼と寝る。それを見たフリオから、仕返しに自分の恋人と寝たと告げられ、彼は一晩じゅう責め立てて詳しく聞き出そうとする。ルイサがフリオとも寝ると、自分もフリオの恋人と寝ていたと明かし、ふたりは殴り合い寸前になる。最後の夜、三人は同じ部屋へ行き、彼はフリオとキスをする。翌朝は吐いて、ただ家に帰りたがる。一年後、メキシコシティでフリオと偶然会い、ルイサが旅の一か月後に癌で死んだこと、ずっとそれを知っていたことを伝えて、口実をつけて席を立つ。ふたりは二度と会わない。
ルイサの夫で、テノッチのいとこ。酔って浮気を告白し、彼女を旅へと向かわせる。
ダニエル・ヒメネス・カチョナレーション役
旅の途中で出会う人や土地の過去と未来を語る、姿を見せない語り手。
この作品が問いかけるもの
『天国の口、終りの楽園。』は十代の性のコメディに見えて、死と階級と、変わりゆく国についての映画になっていく。フリオとテノッチはこの旅をセックスの旅だと思っている。ただひとり自分の死が近いことを知るルイサは、残された時間の生き方を探している。語り手は、少年たちが気づきもしないメキシコへの窓を何度も開く。七十年続いた一党支配が終わろうとしている国だ。映画は、二十代後半の女性と17歳の少年たちの性を、登場人物が感じるとおりの通過儀礼として描き、年齢と力の不均衡の判断は観る者に委ねて、そのひと夏が友情に何を支払わせたかを見せる。ヴェネツィア国際映画祭で脚本賞を受けた。メキシコでは成人指定をめぐり、キュアロン兄弟が当局を訴えた。胸に残るのは、少年たちがどれほど何もわかっていなかったか、それを知るのがどれほど遅かったかだ。