ドクター・クライマックス
Doctor Climax
ストーリー
結末まで書いています。
1970年代のバンコク。皮膚科医が匿名で新聞の性相談に答えはじめ、道徳家の議員と警察の大尉がその正体を暴こうとする。
1970年代のバンコク。性病も診る皮膚科医のナットは、本当は冒険小説を書きたいと思っている。旧家の屋敷で妻のトゥクタ、母と暮らしているが、夫婦の仲は礼儀正しいだけで、寝室には喜びがない。部数の落ちた新聞「バンコク・エクスプレス」は、読者の性の悩みに答える欄を始めることにし、編集長のチューと記者のトンティアンがナットを回答者に誘う。美術部長のリンダに出会って、ナットは引き受ける。「ドクター・クライマックス」の名で匿名連載されたコラムは、自慰や早漏、フェティシズムに、医師らしい率直さと優しさで答える。部数は伸び、手紙が山と届く。反発も募る。道徳家の議員と警察の大尉が筆者の正体を暴こうと動き、トンティアンに狙いを定める。
ナットとリンダは職場で関係を持つ。自分を責めるトゥクタは、夫が読むとは知らずにドクター・クライマックスへ相談の手紙を書く。一方のナットは、妻にひそかに避妊薬を飲ませていた。診療所でふたりの女が顔を合わせ、どちらもすべてを悟る。妻のいる男に母が性的暴行を受け、しかもその妻に責められた過去を持つリンダは、愛人になることを拒んで故郷へ帰る。トゥクタはバーで出会った男と初めての喜びを知り、関係を続けるようになる。同性愛を打ち明けて家を出た夫をもつナットの母は探偵を雇い、息子はトンティアンと関係していると思い込む。
ドクター・クライマックスは、若いゲイの青年に、ありのままに生きなさいと答える。人前で恋人に口づけした青年は父に殴られて家を追われ、恋人にも裏切られる。彼は自ら命を絶つつもりで新聞社へ現れる。もみ合いのなかで若い社員がけがを負い、リンダが彼を説き伏せるが、群衆は彼を殴りつけ、彼は投獄される。打ちのめされたナットは、何年も会っていなかった父を訪ね、獄中の青年に謝る。
最終話、警察は性のクラブの女を使ってトンティアンを罠にかけ、彼は逮捕されて新聞社を解雇される。ナットとチューがおとり捜査を暴き、議員と大尉は逮捕される。トゥクタの妊娠がわかる。リンダもナットの子を身ごもり、中絶するつもりだと彼に告げる。若い読者に中絶を思いとどまるよう説いたばかりのナットは、記者たちの前に出て、自分がドクター・クライマックスだと明かす。シーズンはそこで終わる。
主な出演
チャンタウィット・タナセーウィーナット役
冷えた結婚生活を送る、作家志望の皮膚科医。匿名の性相談コラムの筆者になる。
ナットの物語
診療にも冷えた結婚生活にも倦んだナットは、リンダに出会ってコラムを引き受け、職場で彼女と関係を持つ。一方で妻トゥクタとの子を望まず、ひそかに避妊薬を飲ませている。診療所でふたりの女が顔を合わせると、リンダは故郷へ帰り、追ってきた彼を拒む。ありのままに生きなさいという彼の答えは、ゲイの青年を勘当と暴行と投獄へ追いやる。打ちのめされた彼は、長年会っていなかった父を訪ね、獄中の青年に謝る。最終話、トゥクタの妊娠がわかるが、彼にはわけがわからない。リンダは、彼の子を身ごもった、中絶すると告げる。中絶を思いとどまるよう読者に説いたばかりの彼は、記者たちの前で、自分がドクター・クライマックスだと明かす。
アラチャポーン・ポーキンパコーンリンダ役
新聞社の自由奔放な美術部長。コラムの名付け親で、既婚者と知らずにナットと関係を持つ。
リンダの物語
リンダとナットの関係は、職場でのからかい合いから始まる。やがて診療所に、彼の妻トゥクタが現れる。リンダの母は妻のいる男に性的暴行を受け、しかもその妻に責められた。彼女は愛人にはならない。ナットの頬を打って故郷へ帰り、追ってきた彼を拒んで、奥さんに辛抱強く向き合うよう諭す。新聞社に戻ると、自ら命を絶とうとするゲイの青年を説き伏せる。やがて妊娠がわかる。ナットを避け、扉越しに愛の告白を聞き、電話口で母に泣き崩れる。最終話、彼女はナットに、あなたの子を身ごもった、中絶するつもりだと告げる。シーズンはその前に終わる。
シャーマーウィー・スワンパーヌショークトゥクタ役
ナットの貞淑な妻。夫婦の冷たさを自分のせいだと思っていたが、やがて自らの欲望に目覚める。
トゥクタの物語
トゥクタは子どもを望みながら、夫がひそかに避妊薬を飲ませていることを知らない。夫のために新しい下着を買い、それでもだめだとドクター・クライマックスに手紙を書く。夫が読むとは知らずに。診療所でリンダと顔を合わせてすべてを悟った彼女は、同窓会の帰りに入ったバーで見知らぬ男と出会い、初めての喜びを知る。関係は続き、男は結婚指輪の代わりに蝶の指輪を贈るが、やがて何も告げずに国を出る。トゥクタはリンダに、夫に愛されていないことも、自分が夫を愛していないこともわかっている、それでも私は彼の妻だと言う。家で倒れた彼女は妊娠四週だとわかり、夫に、うれしいかと問う。
チャイワット・トンセーントンティアン役
ナットを新聞社に誘った記者。勃起不全に悩み、コラムの筆者と疑われて追われる。
ソムレック・サックディクンチュー役
苦境の新聞社の編集長。性相談の欄を立ち上げ、攻撃から守り抜こうとする。
この作品が問いかけるもの
『ドクター・クライマックス』が描くのは、人々が性について知りたかったことと、口に出すのを許されていたことの隔たりだ。ナットに届く手紙には、自慰への恥、勃たないことへの恐れ、夫の退屈は自分のせいだと思い込む妻の不安が詰まっていて、作品はそのひとつひとつを、まっとうな答えに値する問いとして扱う。より鋭いのは、率直さは理解と同じではないという指摘だ。見知らぬ人々を解き放つ医師は、妻に嘘をつき、ひそかに避妊薬を飲ませ、ゲイの青年に真実を生きろと説きながら代償を量らない。中絶の問いにも、わが身に降りかかって初めて向き合う。共同監督のひとりは、当時実際に掲載された性の相談の手紙を読んで物語を組み立てたと語っている。助言する本人が正直でないとき、助言は正直でいられるのか。