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Cinema 月明かりの映画館

ロスト・イン・トランスレーション

Lost in Translation

2003映画アメリカ、日本

465作品の星図のなかで見る

Moonlightの読みもの

Cinema『ロスト・イン・トランスレーション』と、旅先でだけ言える孤独この一篇を読む

Journalでの言及

Journal余白は、はじめから構図の一部だった。

ストーリー

結末まで書いています。

パークハイアット東京の落ち目の俳優と放置された妻。広く愛される一方、日本人の描き方は日米双方で批判された。

盛りを過ぎたハリウッド俳優ボブ・ハリスは、サントリーのウイスキーの広告に200万ドルで出演するため東京へやって来る。パークハイアット東京に泊まっても眠れない。二十五年の結婚生活は倦み、中年の危機のただなかにいる。同じホテルには、イェール大学で哲学を学び終えたばかりのシャーロットが、セレブ写真家の夫ジョンに連れられて滞在している。結婚して二年。夫は仕事で彼女を放ったらかし、映画の宣伝で来日した女優ケリーとの再会にはしゃぐ。シャーロットは電車で街を歩き、神社を訪ね、生け花にも触れてみるが、心は動かない。時差ぼけで眠れないふたりは、ホテルのバーで何度も顔を合わせ、言葉を交わすようになる。

夫が仕事で留守にすると、シャーロットは日本人の友人チャーリーと会う夜にボブを誘う。ふたりは東京の夜を遊び回り、カラオケの個室で歌う。それからの数日、一緒に街を歩くうちに、ふたりのあいだに友情が育っていく。眠れない夜、テレビの前で酒を飲みながら、シャーロットはこれからの人生への迷いを、ふたりはそれぞれの結婚を語り合う。

シャーロットがひとりで京都を訪ねているあいだ、妻との冷えた電話のあとで、ボブはホテルのバーの歌手と一夜を過ごす。翌朝戻ったシャーロットは部屋から聞こえる女の声に気づき、しゃぶしゃぶの昼食は気まずいまま終わる。その夜、火災報知機が鳴って宿泊客が寝間着のまま外へ避難したとき、ボブはシャーロットを見つける。ふたりは仲直りしてバーで最後の一杯を飲み、エレベーターでボブは別れのキスをする。

翌朝のロビーでの別れは、礼儀正しく、どこかもの足りない。空港へ向かうタクシーの窓から、ボブは雑踏の中にシャーロットの姿を見つける。車を降りて追いかけ、彼女を抱きしめ、耳もとで何かをささやく。その言葉は聞こえない。シャーロットは泣きながらうなずく。ふたりはキスをし、ボブは去っていく。

主な出演

  • ビル・マーレイボブ・ハリス役

    盛りを過ぎたアメリカの映画スター。ウイスキーの広告撮影で来日し、二十五年の結婚生活に倦んでいる。

    ボブ・ハリスの物語

    時差ぼけで眠れないボブは、ホテルのバーでひとり酒を飲んでいる。ある夜、若いアメリカ人女性シャーロットの席から日本酒の杯が届き、やがてふたりは言葉を交わすようになる。彼女と友人たちと夜の東京を遊び回ってカラオケで歌い、数日を一緒に街を歩いて過ごす。眠れない夜には、彼女の迷いやそれぞれの結婚を語り合う。妻との冷えた電話のあと、バーの歌手と一夜を過ごし、その女の声をシャーロットに聞かれる。しゃぶしゃぶの昼食は気まずいまま終わる。帰国前夜、火災報知機で避難した外でふたりは仲直りし、エレベーターで彼は別れのキスをする。翌日、空港へ向かうタクシーから雑踏の中の彼女を見つけると、車を降りて抱きしめ、耳もとで何かをささやき、キスをして去っていく。

  • スカーレット・ヨハンソンシャーロット役

    大学で哲学を学び終えたばかりの若い妻。東京のホテルに放っておかれ、自分の生き方に迷っている。

    シャーロットの物語

    夫が仕事に出ているあいだ、シャーロットは電車で街を歩き、神社を訪ね、アメリカの友人に電話をかけても話を聞いてもらえない。ホテルのバーにいるボブに日本酒の杯を届けさせ、やがてふたりは言葉を交わすようになる。夫が留守にすると、友人チャーリーとの夜にボブを誘い、何日も一緒に東京を歩き回る。眠れない夜、これからどう生きればいいのかわからないと打ち明ける。ひとりで京都を訪ねて戻った朝、ボブの部屋から女の声を聞き、昼食は気まずいまま終わる。帰国前夜の火災報知機がふたりを引き合わせ、エレベーターで彼は別れのキスをする。翌日、雑踏の中で彼に抱きしめられ、耳もとで何かをささやかれると、彼女は泣きながらうなずく。ふたりはキスをし、彼は去っていく。

  • ジョバンニ・リビシジョン役

    シャーロットの夫。忙しいセレブ写真家で、仕事のあいだ妻をひとりにしておく。

  • アンナ・ファリスケリー役

    映画の宣伝で来日したハリウッド女優。ジョンとの再会にはしゃぎ、シャーロットをうんざりさせる。

  • 林文浩チャーリー役

    シャーロットの日本人の友人。彼女とボブを東京の夜へ連れ出す。

この作品が問いかけるもの

『ロスト・イン・トランスレーション』が描くのは、映画の主題になることの少ない種類の親密さだ。盛りを過ぎたスターと、大学を出たばかりの女性。孤独を抱えたふたりの既婚者が、眠れない夜をいくつか分け合い、恋人にはならない。ふたりのあいだに生まれるのは、透明になったように感じていたときに、誰かに見てもらえたという感覚だ。映画は、それだけで人は変われると信じている。ソフィア・コッポラはアカデミー脚本賞を受けた。一方、東京の描き方は別の問題を抱える。日本人を、とくにその発音を笑いの種にしているとして日米の批評家や研究者から批判され、2004年にはアジア系アメリカ人団体が反対運動を起こした。コッポラも2024年、一部の描写は古びたと認めた。孤独をめぐる繊細な映画であり、誰の孤独をカメラが真剣に扱うのかを問い返す作品でもある。