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Cinema 月明かりの映画館

マスター・オブ・ゼロ

Master of None

2015–2021ドラマ・シリーズアメリカ

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

ニューヨークとモデナでの恋愛、そして最終シーズンはリナ・ウェイス演じる女性と妻の物語へ。製作者自身のミートゥー問題が影を落とす。

デフ・シャーは30歳の俳優で、インドから来た移民の息子。ニューヨークに住み、いちばん知られた仕事はヨーグルトのコマーシャルだ。おいしいものを食べ、子どもが欲しいのか考え、両親がアメリカへ渡るために何を手放したのかを知る。オーディションで回ってくるのは訛りのあるインド人の役ばかりで、プロデューサーのメールから、インド系はひとりしか起用しないという本音が漏れる。音楽業界で働くレイチェルとは気まずい夜に出会い、彼女が恋人と別れると付き合い始め、一緒に暮らし、恋に落ちる。友人の結婚式で、デフはふたりが落ち着こうとしているのは、ただそういう年齢だからではないかと迷い始める。出演場面をすべて削られた映画の試写会のあと、彼がその迷いを口にすると、レイチェルは東京へ旅立つ。デフはパスタ作りを学ぶためにイタリアへ渡る。

第2シーズン、モデナで修行するデフは、パスタ店で働くフランチェスカと親しくなる。彼女にはピーノという婚約者がいる。ニューヨークに戻ったデフは有名シェフのジェフのもとでカップケーキ対決番組の司会を務め、アプリで次々とデートを重ねる。ある回は、幼なじみのデニースが二十年の感謝祭を通して母にカミングアウトしていく姿を描く。一か月ニューヨークに滞在したフランチェスカに、デフは愛していると告げ、彼女も同じ気持ちだが時間が欲しいと答える。ジェフが女性スタッフにセクハラをしていたと知ったデフは、トーク番組でうまく立ち回れない。フランチェスカは答えを残さずに去る。最後の場面、ふたりはベッドに並んで横たわり、彼女の指にはもう婚約指輪がない。

2021年の第3シーズンの主人公はデニースだ。人気作家になった彼女は、ニューヨーク州北部の古い家で、骨董を扱う妻アリシアと暮らしている。俳優の仕事を失ったデフは恋人と食事に来て、喧嘩を始める。子どもを望むアリシアは人工授精で妊娠するが流産し、デニースが本心では乗り気でなかったことを知っている。アリシアの留守中、デニースは昔の恋人と一夜を過ごし、彼女を送る途中で事故を起こす。病院へ駆けつけたアリシアにも、別の女性と会っていたことが明るみに出る。ふたりは離婚し、家を手放す。三年後、ひとりで母になろうと決めたアリシアは体外受精に挑み、最初の失敗を越えて妊娠する。さらに年月が過ぎ、それぞれ別の女性と結婚して子を持ったふたりは、かつての家を一晩借りて、今も互いに合うことを知る。最後に映るのは、外から家を見つめるデニースの姿だ。

主な出演

  • アジズ・アンサリデフ・シャー役

    インド系移民の息子で、ニューヨークの俳優。恋愛と家族、コマーシャル頼みの仕事のあいだで揺れる。

    デフ・シャーの物語

    デフは30歳、ヨーグルトのコマーシャルでいちばん知られた俳優だ。インド系はひとりしか起用できないというプロデューサーのメールのあとで役を逃し、レイチェルと恋に落ちて暮らし始める。友人の結婚式で迷いが生まれ、出演場面を削られた試写会のあとにそれを打ち明けると、彼女は東京へ去る。モデナでパスタ作りを学び、戻ってシェフのジェフの番組で司会を務め、婚約者のいるフランチェスカに恋をする。愛していると告げると、彼女も同じ気持ちだと答えて時間を求める。ジェフのセクハラをめぐって、彼はトーク番組でうまく立ち回れない。最後、ふたりはベッドに並び、彼女の指から指輪は消えている。数年後、俳優の道を失った彼は、デニースの家の食卓で恋人と醜い喧嘩をする。

  • リナ・ウェイスデニース役

    デフの幼なじみのレズビアン。長い年月をかけて母にカミングアウトし、第3シーズンの主人公になる。

    デニースの物語

    女性に惹かれる自分に気づいたデニースは、まず幼なじみのデフに打ち明け、母が受け入れてくれるまでには長い年月がかかる。第3シーズン、人気作家になった彼女は、州北部の古い家で妻アリシアと暮らしている。子どもを望むアリシアに義務感で付き合っていたことは、流産のあと見抜かれる。留守中に昔の恋人と一夜を過ごし、送る途中で事故を起こし、病院で、アリシアもまた別の女性と会っていたことに気づく。ふたりは離婚して家を手放し、デニースはデフと仲直りする。数年後、それぞれ再婚して子を持ったふたりは、かつての家で一夜を過ごして今も互いに合うと知り、彼女は外からその家を見つめる。

  • ノエル・ウェルズレイチェル役

    音楽業界で働く女性。第1シーズンでデフの恋人になり、彼が踏み切れないと知って東京へ旅立つ。

  • アレッサンドラ・マストロナルディフランチェスカ役

    デフが修行するモデナのパスタ店で働く女性。ふたりが恋に落ちたとき、彼女には婚約者がいる。

  • ナオミ・アッキーアリシア役

    デニースの妻で、骨董を扱う女性。子どもを強く望み、結婚が終わったあとひとりでその道を選ぶ。

    アリシアの物語

    アリシアは骨董店で働き、築150年の州北部の家でデニースと暮らしている。子どもを望んでデニースのいとこダリウスの協力で妊娠するが、流産する。デニースが義務感で付き合っていただけだと、彼女にはわかっていた。ボルチモアの骨董市にいるはずの夜、事故にあったデニースの病院へ駆けつけて浮気を知るが、自分もまた別の女性と会っていたことを見抜かれる。遊びではなかった。やり直そうとするデニースに、抱えているものが多すぎると告げる。三年後、ひとりで母になろうと体外受精に挑み、最初は移植できる胚が育たず、母に励まされて再び挑んで妊娠する。数年後、それぞれ別の人と結婚して子を持った彼女は、かつての家でデニースと一夜を過ごし、今も互いに合うことを知る。

  • エリック・ウェアハイムアーノルド役

    食べることが大好きな長身の親友。デフと食事と助言を分け合い、自分自身の失恋も抱えている。

この作品が問いかけるもの

『マスター・オブ・ゼロ』は選択肢の多すぎる若い男のコメディとして始まったが、すぐれた回はその先へ進む。ハリウッドでのインド系俳優の配役、移民の親の犠牲、そして感謝祭の食卓を描いた回では、同性愛者の娘を少しずつ受け入れていく黒人家庭。自らの経験をもとにこの回を共同執筆したリナ・ウェイスは、アフリカ系アメリカ人女性として初めてエミー賞のコメディ脚本賞を受けた。第2シーズンは、女性スタッフにセクハラをする有名シェフの話を物語に組み込んだ。配信から八か月後の2018年1月、アンサリ自身がウェブ媒体の記事で性的な不品行を告発され、仕事は一年止まった。2021年に戻ってきたとき、デフは脇役になり、シーズンはデニースとアリシアのものだった。双方の不実を抱えた結婚と、ひとりで母になる女性の長い道のりを静かに見つめる物語だ。