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Cinema 月明かりの映画館

ショートバス

Shortbus

2006映画アメリカ

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

オーガズムを知らないセックスセラピストがブルックリンのサロンを訪ねる。本番描写を“逸脱”ではなく“共同体”として。

2000年代初めのニューヨーク。セックス・セラピストのソフィアは、一度もオーガズムを感じたことがなく、そのことが夫ロブとの仲にも影を落とし始めている。新しい相談者は、自分についての映像を撮り続ける元セックスワーカーのジェイムズと、恋人で元子役のジェイミー。ジェイムズは関係をほかの相手にも開きたいと言う。最初のカウンセリングで、ソフィアは感情を抑えきれずに相手をぶってしまい、謝りながら、自分はまだオーガズムを知らないと打ち明ける。ふたりが勧めたのは、ブルックリンで毎週開かれるサロン「ショートバス」。ドラァグの歌い手が仕切り、人々が語らい、演じ、セックスする場所だ。

ソフィアはそこに通い始め、グラウンド・ゼロを見下ろす部屋で客をとる女王様セヴェリンと親しくなる。感覚遮断タンクのあるスパで毎日のように語り合ううち、芸術の道へ進みたいと願うセヴェリンはソフィアの体をほどき、ソフィアは彼女に、知らなかった人とのつながりを与える。思いがけず体を重ねた夜も、ソフィアはやはり達しない。ロブもショートバスに通い始める。ジェイムズとジェイミーは歌手志望の青年セスを迎えて三人の関係を始め、向かいの部屋からふたりを見つめ続けてきたカレブは心を乱す。

ジェイムズの映像は遺書だった。セスを迎え入れたのも、自分がいなくなったあとジェイミーをひとりにしないためだった。命を絶とうとした彼を救ったのはカレブだ。助けを呼んだものの、残る勇気はなく、気を失った彼の顔に連絡先を書いて立ち去る。目を覚ましたジェイムズは家に帰らずカレブを訪ね、ふたりは体を重ねる。ジェイムズは、誰にも許さなかった受け身の側に初めて身を置く。窓越しにその姿を見たジェイミーは、恋人の無事を知る。ロブは金を払ってセヴェリンに鞭打たれる。妻には頼めなかった望みだ。取り乱したセヴェリンを、最後はロブが慰める。夢うつつの中でまたも達せずにソフィアが叫んだとき、街じゅうの明かりが消える。停電の夜、皆がショートバスに集まる。歌声にブラスバンドが加わり、ジェイムズとジェイミーは寄り添い、セスとカレブも惹かれ合う。サロンで何度か見かけた若いカップルと体を重ね、ソフィアはついにオーガズムに達する。その瞬間、ニューヨークに明かりが戻る。

主な出演

  • スックイン・リーソフィア役

    オーガズムを知らないカップル・カウンセラー兼セックス・セラピスト。その理由を探してショートバスに通い始める。

    ソフィアの物語

    ソフィアは何年も、夫ロブとのセックスで達したふりを続けてきた。カウンセリング中に感情を爆発させ、オーガズムを知らないと打ち明けた彼女に、ジェイムズとジェイミーはショートバスを勧める。そこで出会った女王様セヴェリンがセラピーと引き換えに手助けを申し出て、ふたりは感覚遮断タンクのあるスパでほとんど毎日語り合う。悩みは夫婦の仲をきしませ、ロブもサロンに通い始める。セヴェリンと体を重ねた夜も、やはり達しない。白昼夢の中でまたも果たせずに叫ぶと、街じゅうの明かりが消える。停電のショートバスで、セヴェリンといるロブと目で挨拶を交わし、ひとり腰を下ろす。やがて、そこで何度か見かけたカップルと体を重ね、明かりが戻る瞬間、初めてのオーガズムに達する。

  • ポール・ドーソンジェイムズ役

    元セックスワーカーで、内にこもりがちな青年。ジェイミーとの関係を開こうと言い出し、自分の暮らしを撮り続けている。

    ジェイムズの物語

    ジェイムズはジェイミーを説き伏せて関係を開き、ふたりは歌手志望の青年セスを迎え入れる。その暮らしを、向かいの部屋のカレブが見つめ、撮り続けている。ジェイムズが撮りためてきた映像は遺書だった。セスを招いたのも、自分がいなくなったあとジェイミーをひとりにしないためだ。命を絶とうとした彼をカレブが救い、助けを呼ぶが、その場に残る勇気はなく、彼の顔に連絡先を書いて去る。病院で目を覚ましたジェイムズは家に戻らずカレブを訪ね、映像のことを打ち明け、ジェイミーがどれほど彼を愛しているかを聞かされる。ふたりは体を重ね、ジェイムズは初めて受け身の側に身を置く。停電の夜、ジェイミーは窓越しに彼の無事を知り、ふたりはショートバスでふたたび寄り添う。

  • リンゼイ・ビーミッシュセヴェリン役

    孤独を抱えた女王様。性の仕事をやめて芸術に向かいたいと願い、ソフィアの打ち明け相手になる。

    セヴェリンの物語

    セヴェリンは女王様として客をとりながら、無防備な瞬間の見知らぬ人々をポラロイドで撮りためている。誰かと深い関係を結んだことは一度もない。ショートバスでソフィアに出会うと、セラピーと引き換えにオーガズム探しを手伝うと申し出て、スパの感覚遮断タンクの暗がりのそばで、ふたりはほとんど毎日語り合う。ある夜、性の仕事をやめて芸術家になりたいと打ち明け、ふたりは思いがけず体を重ねるが、ソフィアはやはり達しない。金を払って鞭打ちを求めたロブを打つうち、彼女は自分を抑えきれずに崩れ、逆にロブに慰められる。停電の夜、彼女はショートバスでロブと一緒にいる。ブラスバンドが入ってくると、不安げだった顔が喜びに変わる。

  • PJ・デボーイジェイミー役

    ジェイムズの恋人で、元子役。関係を開くことに応じるが、姿を消したジェイムズの心がわからない。

  • ラファエル・バーカーロブ役

    ソフィアの夫で、無職。妻には頼めない欲望を胸の内に抱えている。

  • ピーター・スティクルスカレブ役

    向かいの部屋から、ジェイムズとジェイミーの暮らしを窓越しに見つめ、撮り続けている男。

この作品が問いかけるもの

『ショートバス』は本番のセックスを画面に映し、それを人間のありふれた営みとして扱う。滑稽で、ぎこちなく、ときに悲しく、何より誰かに届こうとする方法として。ジョン・キャメロン・ミッチェルは、セックスはポルノに任せておくには面白すぎる、映画の新しい表現に使いたかったと語り、作品は2006年のカンヌでスタンディング・オベーションに迎えられた。描かれるのは、多くの人がひとりで抱えている問題だ。性を仕事にしながらオーガズムを知らない女性。愛されることを自分に許せない男。関係を開こうとするカップル。見つめるだけで輪に入れない男。9・11の傷が残るニューヨークで、窓の外にはグラウンド・ゼロがある。快楽はひとりで達成するものなのか、それとも誰かと一緒に見つけられるものなのか。見終えて残るのは衝撃ではなく、優しさだ。