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Cinema 月明かりの映画館

ブロークバック・マウンテン

Brokeback Mountain

2005映画アメリカ

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

ワイオミングの牧童二人の20年と、その中に隠された結婚生活。

1963年、ワイオミング。無口な牧場労働者イニス・デル・マーと、ロデオ乗りのジャック・ツイストは、牧場主ジョー・アギーレに雇われ、夏のあいだブロークバック・マウンテンで羊の番をする。山でのふたりきりの暮らしで友情が育ち、深酒をした夜、テントの中で体を重ねる。一度きりのことだと言い合うが、そうはならない。仕事が早めに打ち切られ、ふたりは殴り合って、再会の約束もせずに別れる。

イニスは婚約者のアルマと結婚し、ふたりの娘が生まれる。翌年の夏に戻ったジャックを、山でのふたりを見ていたアギーレは雇わない。テキサスへ流れたジャックはロデオ乗りのラリーンと結婚して息子をもうけるが、裕福な義父には見下され続ける。四年後、ジャックがイニスを訪ね、ふたりの口づけをアルマが目にしてしまう。ジャックは、牧場を持って一緒に暮らそうと持ちかける。イニスは拒む。家族を捨てるつもりはなく、少年の日に父に見せられた、同性愛を疑われて惨殺された男の遺体が頭から離れないのだ。

それから長い年月、ふたりは釣りを口実に山で会い、互いの結婚は少しずつすり減っていく。イニスの離婚を聞いてジャックは車を飛ばして来るが、イニスはまたも拒み、ジャックはメキシコで男を買う。再婚したアルマは感謝祭の日、ジャックとのことをイニスに問いただす。最後の逢瀬で、イニスは仕事で何か月も会えないと告げる。言い争いの末、自分の人生が狂ったのはおまえのせいだと泣き崩れるイニスを、ジャックが抱きとめる。

イニスが送った葉書が、受取人死亡の印を押されて戻ってくる。電話口のラリーンは、ジャックはタイヤの破裂事故で死んだと言う。聞きながらイニスの脳裏に浮かぶのは、男たちがタイヤレバーでジャックを殴り殺す光景だ。ジャックは遺灰を山に撒いてほしいと願っていたが、父親は家の墓に入れると言い張る。ジャックの子ども部屋で、イニスは山でなくしたと思っていた自分のシャツが、ジャックのシャツの内側に掛けられているのを見つける。母親はそれを持たせてくれる。何年かのち、トレーラーでひとり暮らすイニスは、娘アルマ・ジュニアの結婚式に出ると約束する。クローゼットには、いまはジャックのシャツを内側にした二枚のシャツと、山の絵葉書。イニスはつぶやく。ジャック、誓うよ。

主な出演

  • ヒース・レジャーイニス・デル・マー役

    ワイオミングの無口な牧場労働者。二十年ジャックを愛しながら、ともに生きることを自分に許せない。

    イニス・デル・マーの物語

    イニスは幼くして両親を亡くし、学校も途中でやめた。山での夏のあと、アルマと結婚してふたりの娘をもうける。四年後、訪ねてきたジャックと交わした口づけをアルマに見られる。家族を捨てられず、少年の日に父に見せられた男の遺体も忘れられない彼は、ともに暮らす誘いを拒む。ふたりが会えるのは釣り旅行だけになる。離婚しても同居は拒み、感謝祭の日にジャックのことを問いただしたアルマとは縁を切る。最後の旅では、人生が狂ったのはおまえのせいだと責め、ジャックの腕の中で泣き崩れる。ジャックの死後、その子ども部屋から二枚のシャツを持ち帰る。何年かのち、トレーラーでひとり暮らす彼は娘の結婚式に行くと約束し、シャツに向かって、ジャック、誓うよ、とつぶやく。

  • ジェイク・ジレンホールジャック・ツイスト役

    ロデオ乗り。テキサスの裕福な家の娘と結婚しながら、イニスとの暮らしを求め続ける。

    ジャック・ツイストの物語

    凍える夜、テントに入れとイニスを促し、先に手を伸ばしたのはジャックだった。それからも、戻ってくるのはいつも彼だ。翌年の夏、アギーレは彼を雇わない。テキサスでラリーンと結婚して息子をもうけ、見下してくる義父の会社で営業をする。四年後、イニスを訪ねて小さな牧場を一緒にやろうと持ちかけ、断られる。イニスの離婚を知って車を飛ばしてもまた拒まれ、メキシコで男を買う。最後の旅では、泣き崩れるイニスを抱きとめる。ラリーンはタイヤの破裂事故だったと告げるが、イニスは男たちに殴り殺される彼の姿を思い描く。遺灰を山に撒いてほしいという願いは父親に退けられ、家の墓に入る。父親は、ジャックがテキサスから別の男を連れてきて牧場を立て直すつもりだったと話す。

  • ミシェル・ウィリアムズアルマ・ビアーズ・デル・マー役

    イニスの妻。夫とジャックの口づけを目にし、その秘密を抱えたまま結婚の終わりを迎える。

    アルマ・ビアーズ・デル・マーの物語

    アルマは山での夏を終えたイニスと1963年の十一月に結婚し、アルマ・ジュニアとジェニー、ふたりの娘を育てながら食料品店で働く。四年後、夫がジャックと口づけを交わすのを目にするが、何も言わない。それから何年も、釣りに出かける夫を見送る。一度は釣り道具の糸の先に、魚を持って帰ってね、という手紙を結んでおき、帰ってきた夫の道具にそれがそのまま残っているのを見つける。1975年に離婚して娘たちを引き取り、勤め先の店長モンローと再婚する。新しい家での感謝祭の日、彼女はとうとう知っていることを夫に突きつけ、ジャックの名をもじってののしる。イニスは激しく怒り、それきり彼女に会わなくなる。映画に彼女が現れるのは、これが最後だ。

  • アン・ハサウェイラリーン・ニューサム・ツイスト役

    テキサスのロデオ乗りで、裕福な農機具業者の娘。ジャックと結婚し、やがて家業を切り盛りする。

  • ランディ・クエイドジョー・アギーレ役

    ふたりを夏の羊番に雇う牧場主。山でのふたりの姿を目にし、翌年ジャックを雇わない。

  • ケイト・マーラアルマ・ジュニア役

    イニスの娘。成長して父のトレーラーを訪ね、結婚することを告げる。

この作品が問いかけるもの

『ブロークバック・マウンテン』は公開当時、「ゲイ・カウボーイ映画」と呼ばれた。けれど描かれるのは、もっと狭く、もっと苦しいものだ。愛し合うふたりの男が、二十年のあいだ釣り旅行の名目でしか会えない。片方が少年の日に、自分たちのような男がどんな目に遭うかを見せられ、それを信じ続けてきたからだ。映画は、秘密の内側にいる全員が払う代償を数えていく。告げられる以上のことを見てしまう妻たちも含めて。作品はヴェネツィアで金獅子賞を、アカデミー賞ではアン・リーの監督賞など三部門を受けた。作品賞を『クラッシュ』に譲ったときには、アカデミーの同性愛嫌悪を指摘する批評家もいた。残るのは静かな問いだ。いちばん本当の部分を隠れてしか生きられない人生は、何になってしまうのか。イニスを守ってきた恐れが、彼からジャックを奪ったのではないか。