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Cinema 月明かりの映画館

生きちゃった

All the Things We Never Said

2020映画日本

465作品の星図のなかで見る

ストーリー

結末まで書いています。

妻が見知らぬ男と寝ているところに出くわしても、何ひとつ言えない夫。気持ちを言葉にできない沈黙という病。

山田厚久、奈津美、武田は高校時代からの幼なじみだ。厚久と武田は、かつて音楽で身を立てる夢を追っていた。本の配送会社で働く厚久は奈津美と結婚し、5歳の娘・鈴がいる。いつか武田と起業しようと、ふたりで英語と中国語を習っている。厚久は、自分の気持ちを言葉にすることがほとんどできない。兄の透が引きこもる実家を訪ねた日、奈津美は、あっちゃんの家族は壊れている、と言う。厚久は何も答えない。

ある日、体調を崩して早退した厚久は、自宅で奈津美が洋介という男と関係を持っている場に出くわす。厚久は何事もなかったかのように鈴を幼稚園へ迎えに行く。その夜、奈津美は、結婚して五年、一度も愛されていると感じたことがないと告げ、離婚を切り出す。厚久は「わかった」とだけ答えて家を出て、養育費を振り込むようになる。やがて明かされる。厚久は婚約を破棄して奈津美と結婚したこと。妊娠中の奈津美が帰宅すると、厚久が元婚約者の早智子と一緒にいたこと。そのとき厚久は、ごめんとしか言えなかった。奈津美は武田を訪ね、高校のころから好きだったと打ち明けるが、武田は彼女を突き放す。

奈津美は洋介と暮らし始めるが、洋介は働かず、デリヘルでもやって稼げと言う。奈津美は、あんたと娘のためなら何でもやると言い返す。大麻を常用し、情緒の不安定な透は、奈津美のアパートを訪ね、路上で洋介ともみ合った末に彼の命を奪い、刑務所に入る。洋介は400万円の借金を残していた。奈津美は鈴を実家の母に預け、歌舞伎町のデリヘルで働き始める。半年後、奈津美はデリヘル嬢を狙った男に殺される。

葬儀で奈津美の母は厚久を追い返し、鈴はこちらで育てる、鈴のことは忘れてほしいと告げる。半年後、厚久は武田とともに、奈津美が殺されたホテルを訪ねて手を合わせ、奈津美が生きていた実感がわかないとつぶやく。武田は、奈津美は生きていたと諭す。武田は厚久を車に乗せ、奈津美の実家の前を通る。庭で遊ぶ鈴を見て立ち去ろうとする厚久に、武田は涙を流しながら、いまの気持ちを鈴に伝えろと迫る。俺にはできないかもしれない、と泣きながら、厚久は車を降り、鈴のもとへ走っていく。

主な出演

  • 仲野太賀山田厚久役

    配送会社で働く夫であり父親。結婚が壊れていくときでさえ、自分の気持ちを口にできない。

    山田厚久の物語

    厚久はかつて武田と音楽の夢を追っていた。いまは本の配送をしながら、ふたりで起業するために英語と中国語を学び、家ではほとんど口をきかない。早退して帰宅すると、奈津美が洋介と関係を持つ場に出くわす。何事もなかったように鈴を幼稚園へ迎えに行き、離婚を切り出されると「わかった」とだけ答える。兄の透が洋介の命を奪い、半年後、奈津美が殺される。葬儀では追い返され、鈴のことは忘れてほしいと言われる。彼女が殺されたホテルで、生きていた実感がわかないとつぶやく彼に、武田は、奈津美は生きていたと諭す。庭で遊ぶ鈴の前を通りかかると、武田は涙を流しながら、いまの気持ちを伝えろと迫る。俺にはできないかもしれない、と泣きながら、厚久は娘のもとへ走っていく。

  • 大島優子山田奈津美役

    厚久の妻で幼なじみ。夫に愛されていると一度も感じられず、別の男のもとへ去る。

    山田奈津美の物語

    奈津美は高校時代から厚久と武田を知り、厚久と結婚して娘の鈴を育てている。言葉にするのは、いつも彼女のほうだ。あっちゃんの家族は壊れている。結婚して五年、一度も愛されていると感じたことがない。洋介といるところを見られて離婚を切り出すと、厚久はただ「わかった」と答える。妊娠中、厚久が元婚約者と家にいるのを見たことが明かされる。武田に高校のころから好きだったと打ち明けるが、突き放される。働かない洋介には、デリヘルでも何でもやる、あんたと別れる気はない、と言い返す。透が洋介の命を奪うと、洋介の借金の取り立てが押しかける。鈴を母に預けて歌舞伎町のデリヘルで働き始め、半年後、そうした女性を狙う男に殺される。

  • 若葉竜也武田役

    ふたりの高校時代からの友人。ふたりの問題に深入りしないようでいて、ずっと気にかけている。

  • パク・ジョンボム山田透役

    実家に引きこもる厚久の兄。突然の暴力が、まわりのすべての人生をひっくり返す。

  • 毎熊克哉洋介役

    奈津美の不倫相手。働こうとせず、生活のために彼女を性風俗の仕事へ追いやる。

この作品が問いかけるもの

『生きちゃった』は、気持ちを口にしないことの代償を描く。厚久は妻に愛していると言えず、友人に傷ついていると言えず、日本語より英語のほうが言いたいことを言えると気づく。映画は、ときに慎み深さとして褒められもするその沈黙が、いちばん近くにいる人をどれほど飢えさせるかを見せる。奈津美は去ったことで悪者にはされない。自分の望みを口にするのは彼女であり、その代償をもっとも重く払うのも彼女だ。死んだ男の借金に追われて性風俗の仕事に就き、そこで命を奪われる。石井裕也監督は、香港国際映画祭などが出資し、アジアの監督たちに同じ予算で映画製作の原点に立ち返るよう求めた企画のために本作をつくった。最後に映るのは、何を言えばいいのかもわからないまま、娘のもとへ走っていく男の姿だ。