実践 · 第六の棚
欲望を話す ― 空想、開かれた関係、そして嫉妬
長く続く関係でいちばん難しいのは、セックスそのものより、セックスについて話すことかもしれません。空想を打ち明けること。「ほかの人ともしたい」と言われること。開かれた関係を考えること。嫉妬を感じること。この手引きは、そうした会話を、壊さずに、正直に進めるための道具です。
要点
- 空想、願い、計画、すでに起きたこと。打ち明けるものの種類で、話し方は変わる。
- 開かれた関係には前提条件がある。急がず、日本の法律も含めて確かめる。
- 嫉妬は、きっかけ、感情、恐れ、頼みごとに分けると扱える。
この手引きは、公開されている研究や資料にもとづく一般的な情報であり、医療上の助言ではありません。医師による監修はまだ受けていません。ご自身のからだ、健康、薬、妊娠や避妊については、医師や薬剤師に相談してください。
話しはじめる
- 時と場所を選ぶ:ベッドの中や、けんかの最中は避けて。散歩中や車の中のように並んで座る場所は、向かい合うより話しやすいものです。
- 感謝から入る:「あなたとのセックスが好き。だから、もっと知りたい」。
- 質問で開く:「今までで一番よかった夜は?」「言ったことはないけれど、してみたいことは?」
- 空想は贈り物として:「これは頼みごとじゃなくて、私の頭の中の話」と前置きすると、相手は身構えずに聞けます。
- 相手の番も同じだけ大切に:笑わない、裁かない、すぐに結論を出さない。
「ほかの人ともしたい」と言われたら
聞いた瞬間に、答えを出す必要はありません。まず、打ち明けてくれたこと自体を受け止めてください。隠すほうが、ずっと簡単だったはずです。そして、それが何なのかを確かめます。
- 空想:頭の中の話で、実行は望んでいない。
- 願望:いつかしてみたいが、あなたの気持ちを大切にしたい。
- 計画:具体的な相手や時期がある。
- すでに起きたこと:その場合、これは開かれた関係の話ではなく、裏切りと信頼の修復の話です。
次に、その下にある必要を聞きます。新しさ、求められたい気持ち、失われた何か、あるいは自分の性のあり方への気づき。あなたの痛み、怒り、怖さは、どれも正当です。少なくとも一晩、できれば数日置いてから、話し合いを続けましょう。そして覚えておいてください。あなたの「いいえ」は、それだけで完結した答えです。
開かれた関係を話し合う前に
合意のうえで複数の関係を持つあり方(合意に基づく非一夫一妻)は、珍しいものではありません。アメリカの独身成人を対象にした全国調査では、約5人に1人が、人生のどこかで経験していました。そうした関係にある人の幸福感や関係への満足度は、一夫一妻の人と大きく変わらないという研究もあります。ただしそれは、条件がそろっているときの話です。確かめたいこと:
- 土台が安定している:開くことで壊れかけた関係が直ることは、まずありません。問題はむしろ大きくなります。
- ふたりとも自分の意思で望んでいる:どちらかが「失うよりはまし」と我慢しているなら、それは合意ではありません。
- これまでに、正直さの実績がある。
- 対立を話して乗り越えられる。
- 決まりごとを具体的に:避妊と性感染症の検査、どこまで話すか(すべて話すのか、聞かないのか)、誰となら、どこでなら、気持ちが動いたらどうするか。
- 定期的に見直す日を決める。
- 止める方法:どちらかが「いったん閉じたい」と言えば止まる、という約束。
- 日本の法律:婚姻中の不貞行為は、離婚や慰謝料請求の理由になりえます。口約束では守られないこともあるので、必要なら弁護士に相談を。子どもや家族への影響も、話し合いに含めてください。
開くことだけが、関係を救うのか
正直に言えば、「開くことだけが関係を救う」というサインは、ほとんどありません。あるのは、合うかもしれないサインと、傷を深めるサインです。
合うかもしれないとき:ふたりがそれぞれ、以前から興味を持っていた。関係は安定していて、差があるのは主に欲望だけ(たとえば一方が、体調や体質で性行為を望まず、それでもふたりとも一緒にいたい)。遠距離など、事情がはっきりしている。
傷を深めるとき:別れを避けるための最後の手段として。一方が押し切られて。裏切りの修復が終わらないまま。相手への仕返しとして。
嫉妬とつきあう
嫉妬は、大切な関係が脅かされていると感じたときに起こる感情です。愛の証明でも、未熟さの証拠でもありません。多くの場合、その下には、もっと具体的な恐れがあります。失うこと、比べられること、外されること、満たされていない何か。
- 名前をつける:「今、嫉妬している」と、まず自分に言う。
- 下にある恐れを探す:何を失うのが怖いのか。
- 具体的に頼む:「帰ってきたら、まず抱きしめて」のように。監視や詮索ではなく、安心をもらう方法を。
- 相手を縛る道具にしない:嫉妬を理由に相手を管理しはじめたら、それは愛ではなく支配です。
パートナーがほかの誰かと幸せそうにしているのを見て、喜びを感じる人もいます(コンパージョン)。それは嫉妬と同時に起こることもあります。
嫉妬のない愛は、ありうるのか。ほとんど感じない人はいます。けれど、より現実的な目標は、嫉妬のない愛ではなく、嫉妬を感じ、言葉にし、それで相手を縛らない愛です。
心配の少ない関係
まったくストレスのない関係は、たぶん存在しません。関係研究者のジョン・ゴットマンは、カップルの対立の多くが、性格や価値観の違いから来る「解決しない問題」だと述べています。大切なのは、なくすことではなく、扱い方です。
- 修復:言い過ぎたら、早く戻る。「さっきはごめん、もう一度話したい」。
- 小さな呼びかけに応える:相手の何気ない話しかけに、顔を向ける。
- 対立の最中も、否定より肯定を多く:安定したカップルでは、言い争いの最中でも、肯定的なやりとりが否定的なものの約5倍あると観察されています。
- それぞれの時間:ふたりの時間と同じくらい、ひとりの時間を守る。
- 安全基地:何があっても、まずここで話せると思えること。心配を減らすのは、完璧さではなく、この感覚です。
話し合いのきっかけ
- 私といて、いちばん安心できるのはどんなとき?
- まだ言っていない、してみたいことはある?
- 空想の中で、くり返し出てくるテーマは?
- 「一夫一妻」は、私たちにとって具体的にどういう意味?
- どんなときに嫉妬を感じる? そのとき、何をしてほしい?
- ほかの人に惹かれたら、話してほしい? 話したい?
- 私たちの性生活で、ひとつ変えるとしたら?
- 5年後、私たちの関係はどんな形だといいと思う?
- けんかのあと、どうされるといちばん仲直りしやすい?
- ここでは、何を言っても大丈夫だと思える?
出典と、この手引きの性格
- 研究 臨床や実験の研究に裏づけられ、出典を末尾に示しています。
- 体験 合う人と合わない人がいるもの。約束ではなく、試してみる提案として。
- Haupert, M. L., Gesselman, A. N., Moors, A. C., Fisher, H. E. & Garcia, J. R. (2017). Prevalence of experiences with consensual nonmonogamous relationships: findings from two national samples of single Americans. Journal of Sex & Marital Therapy, 43(5), 424–440.
- Rubel, A. N. & Bogaert, A. F. (2015). Consensual nonmonogamy: psychological well-being and relationship quality correlates. Journal of Sex Research, 52(9), 961–982.
- Gottman, J. M. (1994). What Predicts Divorce? The Relationship Between Marital Processes and Marital Outcomes. Lawrence Erlbaum.
- Gottman, J. M. & Silver, N. (1999). The Seven Principles for Making Marriage Work. Crown.
- 民法 第770条(裁判上の離婚)。
この手引きは、私たちが参照できた情報にもとづく一般的な内容です。医療上の助言ではなく、医師の監修を受けていません。ご自身のからだ、健康、薬については、医師に相談してください。
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