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Cinema 月明かりの映画館

ドライ・マルティナ 〜失われた情熱を求めて〜

Dry Martina

2018映画チリ、アルゼンチン

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ストーリー

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落ちぶれたアルゼンチンの歌手が、自分を感じさせた唯一の男を追ってチリへ向かう。

マルティナ・アンドラーデは30代後半のアルゼンチンの歌手だ。十代でポップスのヒットを飛ばし、いまは亡き母のジャズのレパートリーを歌って再起を図っている。映画の冒頭、彼女は歌の途中で舞台を降り、そのままタクシーで去ってしまう。父は1年前から昏睡状態にあり、彼女はその命を手放せずにいる。マネージャーのフアンは恋人でもあるが、2年つきあった男が会社勤めの女性のもとへ去って以来、彼女は欲望というものをまったく感じられなくなっている。いつも発情している飼い猫は、家を逃げ出していく。

ある晩、チリから来た若いファンのフランシスカが、恋人のセサルを連れて部屋を訪ねてくる。セサルはサッカーの試合を見にブエノスアイレスへ来ていて、ふたりは逃げた猫を見つけてくれていた。フランシスカは、自分はマルティナの異母妹だと信じている。1980年代の終わりに撮られた、作家である父ナチョと幼いマルティナ、その母の写真を持っていて、DNA検査をしたいという。マルティナはふたりを追い返すが、セサルに心を揺さぶられ、欲望がよみがえる。試合のあとに彼を探し出し、ふたりは関係を持つ。セサルがサンティアゴへ帰ると、彼女は入院中の父を残して、飛行機であとを追う。

チリでセサルを追いかけるうちに、マルティナは思いがけずフランシスカの世界に引きこまれていく。フランシスカの新しい恋人サム、そして成功した作家で、妻を亡くし、かつては女好きだったナチョ。ある夜、マルティナとフランシスカとサムは、街を見下ろす丘で一緒に歌う。ベッドでマルティナが自分の性の遍歴を話すと、セサルはたじろぎ、彼女を拒む。恋人と寝たことをフランシスカに黙っていられないマルティナだが、フランシスカの怒りは長くは続かない。姉妹かどうかがわかる前から、ふたりは姉妹のようにふるまいはじめる。終盤、DNA検査の結果が届くころには、マルティナにとってフランシスカは、セサルよりも大切な存在になっている。

主な出演

  • アントネッラ・コスタマルティナ役

    盛りを過ぎたアルゼンチンのポップ歌手。30代後半で欲望を失い、それを追ってアンデスを越える。

  • ディンディ・ジェーンフランシスカ役

    マルティナを異母姉だと信じるチリの若いファン。それを確かめるためDNA検査を望む。

  • ペドロ・カンポスセサル役

    フランシスカの若い恋人。マルティナの欲望を呼び覚ますが、彼女を受けとめきれない。

  • パトリシオ・コントレアスナチョ役

    フランシスカの父。成功したチリの作家で、妻を亡くし、かつては女好きだった。マルティナの父かもしれない。

  • アルバロ・エスピノサフアン役

    ブエノスアイレスでのマルティナのマネージャーで、ときおりの恋人。彼女の欲望を呼び起こせない。

この作品が問いかけるもの

『ドライ・マルティナ ~失われた情熱を求めて~』は、女性の欲望の喪失という、映画がめったに女性に与えない主題を喜劇にしながら、彼女を笑いものにはしない。マルティナは盛りを過ぎ、亡き母の歌を歌い、手放せない父のそばにいて、体はただ求めることをやめてしまった。映画はアンデスを越えて彼女の欲望がよみがえるまでを追い、彼女に欠けていたのは性よりも家族だったのかもしれないと示す。主演のアントネッラ・コスタも、インタビューでその読みに同意している。チリとアルゼンチンの批評は割れた。複雑で奔放な主人公を歓迎する声がある一方、男性監督が性的に解放された女性を性的な偶像の型にはめたと見る声もあった。欲望は本当は何に結びついているのか。その下にある孤独は、どんな恋人にも癒やせるものなのか。映画はその問いを開いたままにする。