異人たち
All of Us Strangers
Journalでの言及
Journal誰かに話したい夜に必要なのは、答えではなく、言葉だ。ストーリー
結末まで書いています。
脚本家が幼い頃の家で死んだはずの両親と再会する。山田太一の原作は1988年に大林宣彦が映画化。
中年の脚本家アダムは、ロンドンの新しい高層マンションにひとりで暮らしている。住人はほかにひとりしかいないようだ。ある夜、その隣人ハリーがウイスキーの瓶を手に酔って訪ねてきて、一緒に過ごしたいと言う。アダムは戸惑い、追い返す。執筆に取りかかった彼は、ふと思い立って郊外の生家を訪ねる。そこには、数十年前、彼が12歳になる直前に交通事故で死んだ両親が、当時のままの姿で暮らしていた。アダムは両親と夕食をとり、また来ると約束する。
マンションでハリーとふたたび出会ったアダムは、今度は彼を受け入れる。ふたりは恋人になる。自分の家族とも距離のあるハリーは、アダムがようやく心を開ける相手だった。アダムは生家に通い続ける。母には同性愛者であることを打ち明け、母は心配し、少し戸惑いながらも受け入れる。父には、子どものころのいじめについて何も言ってくれなかったことがどれほどつらかったかを話し、ふたりは和解する。ケタミンでハイになった夜、アダムはクリスマスの生家にいて、両親のベッドにもぐりこみ、事故のあと祖母に預けられたことを母に話す。ハリーには、祖母が隠していた事実を語る。父は即死だったが、母は病院で数日生きていて、自分は会わせてもらえなかった。
ハリーを生家に連れていくと、家には誰もいない。アダムを案じたハリーは帰ろうと言い、ふたりは窓の向こうに母の姿を見る。翌朝、両親はアダムに、自分たちを手放しなさいと告げる。子どものころ好きだったレストランで、両親は自分たちの死が一瞬だったかを尋ねる。アダムは、ふたりとも即死だったと答える。母への思いやりだった。両親は消える。アダムがハリーの部屋を訪ねると、そこには彼の遺体があった。ハリーは、アダムに追い返されたあの夜、薬物の過剰摂取で死んでいたのだ。台所では、誰にも見つけてもらえなかったことを恥じるハリーの霊が待っている。アダムは彼を自分の部屋に連れ帰り、ふたりで横たわって「パワー・オブ・ラヴ」を歌ってやる。やがてふたりは、星々の中の小さな光になる。
主な出演
アンドリュー・スコットアダム役
ロンドンで孤独に暮らす脚本家。とうに死んだ両親が、生家で暮らし続けているのを見つける。
アダムの物語
アダムはほとんど住人のいない高層マンションにひとりで暮らし、ある夜、酔って訪ねてきた隣人ハリーを追い返す。生家を訪ねると、12歳になる直前に事故で死んだ両親が当時の姿のまま暮らしていて、彼は通いはじめる。母には同性愛者であることを打ち明け、父には、いじめのことで何も言ってくれなかったつらさを伝えて、和解する。恋人になったハリーには、死にゆく母に祖母が会わせてくれなかったと話す。両親に手放しなさいと言われると、ふたりとも即死だったと答える。母への思いやりだった。両親は消える。やがて彼は、追い返したあの夜に死んでいたハリーの遺体を見つける。霊を連れ帰り、出会った夜にハリーが口ずさんだ歌を歌ってやると、ふたりは星々の中の小さな光になる。
ポール・メスカルハリー役
同じマンションに住む年下の隣人。自分の家族とも距離があり、アダムの恋人になる。
ハリーの物語
ハリーはアダムより若く、自分の家族とも距離があり、マンションのもうひとりの住人らしい。ある夜、ウイスキーの瓶を手に酔ってアダムの部屋を訪ね、追い返される。エレベーターの前で再会すると、今度は迎え入れられ、ふたりは恋人になる。彼は家族との隔たりを語り、アダムの喪失に耳を傾ける。クラブの夜には、ケタミンは慣れたものだとほのめかし、錯乱したアダムを連れ帰る。郊外の空き家では、アダムを案じて帰ろうと言う。そのあと、アダムは彼の部屋で遺体を見つける。ハリーは、追い返されたあの夜に死んでいたのだ。誰にも見つけてもらえなかったことを恥じる霊は、台所で待っていた。アダムは彼を連れ帰り、抱きしめる。
クレア・フォイアダムの母役
アダムが少年のころ交通事故で死んだ母。当時の姿のまま、大人になった息子と向き合う。
ジェイミー・ベルアダムの父役
同じ事故で死んだ父。息子が受けていたいじめについて、一度も話をしなかった。
この作品が問いかけるもの
『異人たち』は、時間を止めてしまった喪失の物語だ。中年になった男の中には、帰ってこなかった両親を待つ少年がまだいる。アンドリュー・ヘイは、1988年に大林宣彦が映画化した山田太一の1987年の小説を現代のロンドンに移し、主人公を同性愛者にした。そのことで、アダムが果たせなかった会話、母に自分が何者かを告げ、父にいじめられていたと打ち明けることが、映画の心臓になった。再映画化に協力した山田は、その脚本を気に入っていたという。英国インディペンデント映画賞では作品賞を含む7部門を受賞した。描かれる孤独は、愛する人たちに本当の自分を隠して育った男の固有のものだ。けれど問いは、誰かを失ったことのあるすべての人に届く。死者が扉を開けてくれたら、何を話すのか。そして、ようやく愛されることは、遅すぎることがあるのか。